232.責任
道路の真ん中に、変な物体を見付けてしまった。
トラックの後方に回って、2人は確信した。
違和感の正体は、四輪あるタイヤの1つが、車椅子の人間だった。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午後5時。神奈川県。関内。伊勢佐木町。
いかにも場末の、と言うべき映画館に開光蘭子が入って行く。
自動券機で入場券を買おうとしたら、清掃をしていた女の子が、スマホを弄りながら、「料金、もう貰ってるから。」と言った。
入って行くと、誰もいない。
妙に思いながら着席すると、5分後に背後の席に座った男がいる。
「お困りのようだね。」
「人助けじゃないんだろ?ドジな、自殺幇助専門の殺し屋さん。『名も無き殺し屋』って、何ネームだ?」
「殺し屋ネームだ。お察しの通り、またドジ踏んで、『偽装自殺』で依頼人は亡くなった。」
「情報を聞こうか。」
「四課の、いや、三課か。新垣課長のお仲間の『ヤクザネットワーク』は、全ての反社じゃない。どこかの政党みたいに、くっついてまた離れた反社が、隣国マフィアと取引を始めた、という噂がある。今回の案件に絡んでいなきゃいいがな。」
「それは、詰まり、絡んでいる、って言う意味か、情報屋?」
返事がないので、辺りを見回すと、スピーカーがあった。
「ふざけやがって。」
扉を開け、ロビーを見渡したが、女の子はいない。
クルマの周囲や中を確認してから、蘭子は、ポルシェ 718を飛ばした。
10時間前。詰まり、午前10時。ある都道府県道。
夏休み以来の日曜日。即ち、休日に、市民プールに自転車で急ぐ小学生、井出篤志と香山康。
道路の真ん中に、変な物体を見付けてしまった。
トラックの後方に回って、2人は確信した。
違和感の正体は、四輪あるタイヤの1つが、車椅子の人間だった。
詰まり、タイヤを1つ外して、車椅子の人間をはめ込んでいるのだ。
血だまりが出来ている。
井出は、深呼吸して、110番通報をした。
30分ほどして、機捜と鑑識が到着した。
「通報してくれたのは、井出くん、と香山くんだね?いつも、ここ通るの?」
「いつもじゃないけど、たまに使います。バイパス出来て、明日からここ舗装し直す区間なんです。それで、今日は空いているかな?と思って・・・。」
「今日は・・・あ、日曜日か。明日の月曜から通行止めになるんだね。」
「はい。」
「赤井さん、ジャッキアップした跡があります。」と、秋野が言いに来た。
「だろうな。」
「赤井。また面倒な事件になりそうだ。この間、『不適切発言』と言われた、元自衛官だ。膝が骨折している。軋轢死だ。」
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『軋轢死体遺棄事件』本部。
管理官が説明した。
「ガイシャは、元空自の古谷巳之吉二佐だ。先日、ゲストで呼ばれたワイドショーで、うっかり『片〇』と言ってしまい、放送禁止用語なので、アナウンサーが謝罪し、本人も謝罪したのだが、自衛隊を『口撃』したい連中の『エサ』になってしまい、SNSで炎上した。直後に、東北で大きな地震があった為、有耶無耶になってしまったが、この案件で『蒸し返す』ことになりそうだ。幸か不幸か、関連する『ホシからメッセージ』は無い。」
「形から言えば、『お前も身体障害者の気持ちを味わえ。復讐してやる』になるけど、確か二佐は、病気で車椅子生活だったと思いますが。」と、珍しく蒔さんが解説した。
「じゃ、あの車椅子は?」
「多分、本人のものだよ。酷いことしやがって。車椅子の人間を軋轢死させるなんて。」と、井関さんが言った。
「古谷氏の自宅は、大曲・眩目・村松。辻さん。放送局には皇係長のチームと餅屋係長のチームを応援に出します。他のスタジオの出演者やスタッフにも、あの番組のことを聞き出してください。みな、週刊誌記者に気をつけて。」
「「「了解。」」」
午後2時半。クルマの中。
「村松。今日は付近の聞き込みはいいから、古谷家に近づく人物や車両を記録しろ。」
「了解。」
午後3時。
俺達がクルマから降りようとしたとき、先輩のスマホが鳴動した。
「自首してきた?」
俺と村松は、顔を見合わせた。
蘭子の指示で、俺達は、取り敢えず、いつも通りの捜査に、入った。
出迎えてくれたのは、自衛官の服装の娘古谷睦美一尉だった。
「申し訳ありません。」
三つ指突いて謝られると、先輩は恐縮して言った。
「頭をお上げ下さい。我々はお父様の亡くなられた原因を捜査する手掛かりを探しに来た訳ではありません。マスコミや、一部の左翼思想家のように故人を諌めに来た訳ではありません。」
「ありがとうございます。上司に申告して休暇を頂きました。到着したばかりなので・・・。」
「では、早速ですが、お父様のPCを拝見して、アルバムや葉書ホルダーをお借りしたいのですが。」
「畏まりました。」
「こちらが父の書斎です。書類ケースや書棚は、ここにあります。」
チラッと見たが、隅にパイプ椅子で無い折り畳み椅子があるだけで、ライティングデスクと並んでテーブルがあった。睦美さんは、アルバムと葉書ホルダーを素早く出して、俺に手渡してくれた。
「今、着替えて参ります。」
そう言って、睦見さんは二階に上がった。
俺は、先輩が起動したPCの確認作業を横目に、ライティングデスクの前に折り畳み椅子を置き、アルバムを確認した。学校の集合写真と、自衛隊に入ってからの集合写真がコンパクトに纏められていた。
和服に着替えた睦美さんは、もう一脚折り畳み椅子を持ってきた。
「この方が、親友、いや、戦友と言っていた御手洗さんです。元二佐です。イラン・イラク戦争の時、父と一緒に行ったそうです。父は、糖尿病が悪化して退役しましたが、御手洗さんも一緒に退役なさいました。父が公の場に出る時は、御手洗さんがマネージャー代わりに付き添い、件の放送時にもスタジオの隅で見守っていました。」
「他に、お付き合いの深い方は・・・。」
「3人おられましたが、残念ながら皆、他界されました。」
「眩目。睦美さん。犯人が分かりました。自首してきた、御手洗さんじゃありません。」と、大曲先輩は毅然として言った。
午後6時。捜査一課横の大会議室。『軋轢死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、溝内課長、倉田課長、神道課長、新垣課長、皇係長、餅屋係長、関口係長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
内課長、倉田課長、神道課長、新垣課長、皇係長、餅屋係長、関口係長は、すぐに出て行った。
管理官が説明した。
「ホシは、自衛隊は軍隊なんだから無くなればいい、と言っている南風杏子、杏子と関係のある、星見KKの那賀義弘、荻野颯太。南風は、違憲飲酒党の議員だが、防衛に関する激しい口調は有名だ。件の番組にも、他のワイドショーにも出ていた。局側は、対極にある2人の対決を演出したがっていた。犯行に及ぶ数時間前、親友の御手洗さんに『自殺』を仄めかすことを言っていたらしい。御手洗さんは自首してきたが、アリバイはすぐに成立し、関口係長は放免した。南風は、番組で潔く謝罪した古谷さんに激高、星見KKに殺害を依頼した。最も残酷な処刑を。遺族である古谷睦美さんは、出来れば葬儀に参列して欲しい、と言って来ている。可能な者は、参加して欲しい。では、記者会見に行ってくる。」
午後7時。眩目家。
ベランダから蘭子は出て行き、数分で戻ってきた。
「洗濯物、干してないよ。」
「ああ。ただの『換気』さ。さあ、栄養つけて、子作りだ。」
そんな、ストレートに言わなくても。
今夜は、デリバリーのサイコロステーキだ。
頬張る蘭子は・・・。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。
溝内健児・・・生活安全課課長。
皇信也・・・捜査一課第二係係長。警部。
餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。
関口寛也・・・捜査一課第三係係長。警部補。
名も無き殺し屋・・・???
※改めて表明する必要はないのですが、現実の事件とは、全く無関係のフィクションです。
クライングフリーマン




