230.段ボール箱
人形のような形になった段ボールを発見したからだ。
ここには、以前、狭いながらも公園らしく、という考えでジャングルジムがあった。事故があって撤去され、今は芝生マットが敷かれているだけだ。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前10時。ある小さな公園。
始業式を終えた山岡久と端田清男は、公園の前で戸惑った。
人形のような形になった段ボールを発見したからだ。
ここには、以前、狭いながらも公園らしく、という考えでジャングルジムがあった。事故があって撤去され、今は芝生マットが敷かれているだけだ。
前の状態なら、見過ごしたかも知れない。
2人は近寄り、確認した。
段ボールの周りに、血だまりが出来ている。
「よし。」深呼吸して、山岡は110番通報をした。
30分後。機捜と鑑識が到着した。
「通報した山岡くんと端田くんだね。昨日までは、どうだった?」
「ただ、人工芝マットがあるだけでした。前は、小さめのジャングルジムと、滑り台があったけど、大怪我した子がいて、無くなっちゃったんです。」
「らしいね。」
「らしいね?おじ・・・刑事さんは知ってるんですか?」
「ああ。親戚が、この近くに住んでいてね。その話は聞いたよ。公園の安全管理は、親の責任だけどねえ。」
その時、赤井の部下と鑑識が段ボールを剥がした。
死体が出て来た。
「「あっ!!」」
「知ってるの、この人。」
「はい。校長先生の知り合いらしくて、毎年、募金運動を手伝う生徒を募集しに来るんです。」と、山岡が言った。
「でも、インチキだったのがバレて、来なくなったけど。SNSでばらされたんです。」と、今度は端田が言った。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『募金推進員死体遺棄事件』本部。
管理官が説明した。
「ガイシャは、募金推進員波田洋吉。ボランティアと名乗っているが、どうやら、巨額党の党員らしい。先日、この募金部が集めた金を海外の災害援助団体では無く、党で好き勝手に使っている副収入だということが、告発によって明らかになった。幹部は詐欺罪で告訴するつもりだが、党は『除名した幹部』が勝手にやっていた。実態は把握出来ていなかった、と説明している。この『推進員』とやらが、学校の生徒を毎年駆り出して募金に協力させているらしい。発見者の2人によると、スーパー等に並んで立ち、募金活動していた、という。夜遅くなることもあるので、PTAに突っ込まれて、日祝日にして、時間制限をしているらしい。持ち回りではあるが、2人は仮病を使って逃げるそうだ。」
「生徒を使って『献金』の手伝い。問題ありすぎ。」と、言いながら神道課長が入って来た。
「件の木縄県転覆事故も似たようなものだ。性善説で『いいこと』した、と思わせて、実際は『いいことして貰った』のは、政党や活動家だ。子供を利用して『お恵み』頂いて、自分達は好きなように金を使う。立派な特殊詐欺だ。」
「辻さん達は、党に、大曲達は、波田家だ。」
「〇〇〇と政治家は3日やったら止められない、ということか。」と、井関さんは、呆れた。
午後2時半。クルマの中。
「鳥の羽募金はな。俺がオヤジから聞いた話だと、隣国が『発展途上』だから、国民が可哀想だから、って始めた募金だそうだ。日本が高度経済成長した後、自分達も経済成長したのに『発展途上だから』って、日本政府から支援金を貰い、民間から集めた『献金』も好き放題使っている。国連も『発展途上国』扱いさせて、金握らせて乗っ取った。これは、俺の私見だ。とにかく、テレビ局の募金も公的街頭募金も、ドブに金を捨てるようなもんだ。」
「先輩、荒れてますね。」
「俺が暴れたら、止めてくれよ。」
「了解です。」
午後3時。波田家。
「遅い!」
満子夫人は、言った。
これで、方針は決まりだ。大曲先輩は平身低頭、『冤罪』説で誘導し、波田氏のPCのある部屋に夫人に案内された。
そして、俺はアルバムと葉書ホルダーを見せて貰い、党の同期の人を示して貰った。
「この人がね。高校のバスケの先輩で、谷川さん。谷川さんの誘いで入ったらしいの。お見合いの時、嫌だったんだけどね。タイプじゃないし。ウチ、借金あったから。あんた、独身?」
「いえ、一応新婚です。恋愛・・・結婚です。」
「そう。」
「谷川さんの住所は・・・これですね。あ、達筆だなあ。羨ましい。」
俺は、葉書ホルダーから、谷川さんの葉書を見付けた。
「書道の段、持ちらしいわ。私も羨ましい。」
波田氏の部屋に戻ると、先輩は満子夫人に尋ねた。
「奥さんは、谷川さんって人、ご存じですか?」
「ええ。高校のバスケの先輩で・・・。」
「殺されている可能性があります。」
先輩は、夫人と俺にメールの画面を見せた。
メールには、こう書いてあった。
『谷川先輩の次は俺かも知れない』
「これって・・・。」
「ああ。谷川さんも殺されたか危ない目に遭ってるな。」
「電話してみます。」
「え?ご存じなんですか、電話番号。」
「嫌だわ、刑事さん。ここに。」
示されたのは、年賀状。
引っ越した、と書いてある。電話番号も書いてある。
「もしもし・・・。」
暫く電話して、スマホの通話を切った満子夫人は言った。
「失踪届を出したのが一昨日、ですって。」
午後4時。捜査一課。第二応接室。
「組織ぐるみの横領、使い込みがバレたのが5日前。寄付した誰かが凶行に走った、という筋書きで『トカゲの尻尾切り』ですか。」溝内課長にしては激しく憤慨した。
「問い合わせ、多いんですか?」と、蘭子は尋ねた。
「一般市民みたいに言っているけど、週刊誌記者ですね。『担当ではないので。お身内の方で行方が分からない人がおられるのですか?』って尋ねたら、ガチャン。」
蘭子は苦笑して、「詰まり、谷川さんが失踪したことは知っているんですね。・・・トラップしかけてみるか。」と言った。
「深山さん、それと、辻さん、お願いします。」
午後6時。ニュースで、巨額党の推進部の谷川氏失踪に続いて、近江氏も失踪しているころが判明し、失踪届を出した、と党幹部が発表した。
午後9時半。近江家近く。
様子を見に来た男達は、四課の刑事に取り押さえられた。
翌日。午前9時。黄金会。
別件で、捜査四課の『捜索』が入り、PC等が押収された。
午前10時半。捜査一課。蘭子のデスク。
酒井優香がやってきた。
「波田氏のPCから発見されたハッキングのURLと、黄金会とやり取りしていた相手のURLが一致しました。問題は、巨額党の、隣国への『献金リスト』のデータですね。まだ、波田家にある筈です。」
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午前11時半。波田家。
鑑識によって、納屋にある扇風機に貼り付けてあるSDが見つかった。
扇風機には、扇風機カバーが被されていた。
夫人の証言によると、扇風機を持ち出してまた収納しているのを見て尋ねると、『エアコンが壊れた時に使えるか試してみたんだ』と言っていた、と夫人は話した。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『募金推進員死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、神道課長、新垣課長、倉田課長、深山課長、溝内課長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
神道課長、新垣課長、倉田課長、深山課長、溝内課長は、すぐに出て行った。
管理官が説明した。
「ホシは、谷川信介、黄金会組員の駒井宗吉、江田俊基。谷川は、データ管理を波田に任せていた。学校回りを波田に任せていたのだから当然だろう。告発で慌てた谷川は、波田を始末する事を計画。自身も狙われている、とメールを送っていた。『献金データ』の7割は、隣国に送金されていた。後が、巨額党の持ち分だ。巨額党は、デマ情報を渋ったが、谷川を救出する為だと説諭したら、渋々協力した。国税庁は、追徴課税を発表した。段ボールの着ぐるみは、特撮番組からヒントを得たそうだ。」
午後7時。眩目家。
2人で、すき焼きつつくのはいいが、やたら卵につけて食べる蘭子。
「卵、特売でもあったの?村松が沢山持って来たけど。」
「精力つける為に決まってるだろ、奴隷のくせに文句言うな。」
神様・・・。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。
酒井優香・・・サイバー犯罪対策課課員。
溝内健児・・・生活安全課課長。
深山俊哉・・・警視庁広報課課長。警部補。
当家の近くの、小さな公園から遊具が消えたのは事実です。それを題材にしました。
クライングフリーマン




