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228.オタクのお宅は

ふと、気が付いて、宮前は自分のスマホで110番通報した。

「隣家の水田さんが・・・殺されています。」

玄関に出た、宮前の妻、数子は言葉を失った。


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 ===========================

 午後8時。ある建売住宅。宮前家。

 宮前は、出勤するため、家から駐車場に向かおうとして、隣家の水田家の異様な風景にフリーズした。

「おい、数子。大変だ。110番、110番。」

「どうしたの、貴方、会社は?」

 ふと、気が付いて、宮前は自分のスマホで110番通報した。

「隣家の水田さんが・・・殺されています。」

 玄関に出た、宮前の妻、数子は言葉を失った。

 水田大作は、両手両脚を玄関引き戸に固定されて、目にはVRゴーグルが嵌められて、立たされていた。

 足元には、血だまりが出来ていた。


 通報を受けた機捜と鑑識が到着した。

「赤井、手を貸してくれ。ご遺体は玄関引き戸にガムテープで固定されている。」

 6人がかりで遺体を玄関引き戸から引き剥がし、取り敢えず門扉と玄関の間の通路に寝かし、秋野が玄関をそっと開けると、施錠はされていなかった。

 赤井は、会社に欠勤届を連絡し、待機していた宮前に尋ねた。

「不審車両を見かけませんでしたか?」

「どれが、不審車両なのか・・・水田さんは、補欠選挙で当選した、移民党の都議会議員さんです。先日から、引っ越しの準備をされていて・・・。」

「通報、ありがとうございました。」


 =================

 ====================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『都議会議員死体遺棄事件』本部。

 管理官が説明した。

「ガイシャは、水田大作氏。春、老衰で亡くなった議員の補欠選挙で当選した。発見者である隣家の宮前敏夫氏によれば、何かと不便だから、と都内マンションに引っ越す準備をしていたそうだ。ホシは、引っ越しを知らなかったのだろう。井関さん、家捜しの跡があるんですよね。」

「ガイシャはホシに恫喝され、目当てのモノがないから、凶行に走ったのだろう。で、『オタクのお宅は』というメモを残して行った。凶器は血を拭ってあった裁ちばさみ。水田氏は、DIYも趣味で、玄関に固定した道具は皆、放置されていた。」と、井関は応えた。

「今、移民党都議の先輩小向乙矢氏が溝内課長と話している。宮前氏と別居中の妻昭子氏も、栃木県から、こちらに向かっている。引っ越し先のマンションには、皇係長達と鑑識が向かった。」

 それで、秋野達がいないのか。

「辻さん達は、奥さんと小向さんに話を聞いてください。大曲達は、現場を確認の上、マンションに向かって、皇係長達と合流してくれ。」と、蘭子が指示した。

「「「了解。」」」


 午後2時。宮前家。

 流石に、宮前氏は、仲の良い隣家だけあって、詳しかった。

「殺人の道具に、趣味の道具を使われるなんて・・・趣味と言えばね、刑事さん。水田さんは、特撮オタクなんですよ。」

「特撮オタク?」

「特撮変身ヒーローものの番組のファンです。ファンクラブも入っていて、SNSでも話を公開しているらしいんです。で、よく分からないけど、そのお仲間と喧嘩して、『訴えてやるぞ』って脅かされているらしいんです。」


 午後2時半。水田家。

 俺は、隠し場所でよく使われるバスルームや、クローゼットを調べたが、何もなかった。

 大曲先輩のところに戻ると、先輩は仁王立ちしていた。

「ここにもう1台、冷蔵庫があったはずだ。」

 俺達は、張り番の警察官に後を任せ、宮前家に戻った。


 午後3時半。宮前家。

「料理の趣味があるんですか?」とお尋ねしたら、亡くなったご両親の家から運んだって言ってました。町内ですけどね。冷蔵庫としてでなく、『冷暗庫』に使っているとか言ってました。ゴキブリ駆除剤とか、頭痛の時頭に貼る、何とかって・・・。」

「あ。分かります。」

 そこに、村松が入って来た。

「先輩。違う引っ越し屋さんが日を置いて来たそうです。普通、足りなければ、同じ会社から2台来ますよね。」

「詰まり、偽物と本物だ。」

「「「「ええっ!!」」」」


 午後4時半。賃貸マンションクロカワ。

「皇さん、冷蔵庫は?」

「あそこ。」

 冷蔵庫を開けて、締め、「もう1台は?」と大曲先輩は言った。

「冷蔵庫、そこだけですよ。缶詰くらいしか入ってないけど。」と、秋野が言った。

 先輩が事情を話した。

「じゃ、ホシは殺害する前、その『冷暗庫』を運ぶことにしたのか。何故だろう?」

 皇係長に、「施錠してあったんでしょうね。ガイシャはカギも渡さず開け方も教えなかった。」と、大曲先輩は応えた。

「PCは?」と、また大曲先輩は皇係長に尋ねた。

「無かった・・・。」係長は、蘭子に電話した。

「課長。小向さんは?」

「さっき、帰った。今、移動中だ。連絡して、折り返し電話して貰おう。」

 数分後。小向氏から、折り返し電話があった。

「今、事務所に着いたところですが、何か進展が?」

「ひょっとしたら、水田さんのPCが事務所にありませんか?」

「ええ。先日預かりましたが。」

「厳重保管してください。すぐに警備を送ります。もしもし・・・。」

「切れた。最悪だ。」

「小向さんの事務所近くから非常線を張ろう。警邏課に頼もう。」と、皇係長は言った。


 時計は、午後5時を過ぎていた。


 ―「捜査一課ですけど、229」につづくー


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目(くらめ)真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光(かいこう)蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。


 皇信也(すめらぎしんや)・・・捜査一課第二係係長。警部。




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