227.モヤモヤ
男は、テレビカメラの前にプラカードを押しつけた。
プラカードの内容は、テレビ局の過去の不祥事の数々だった。
衆知の事実である。
スタッフは男を取り押さえ、警察官に引き渡した。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午後8時半。テレビ汐留。
恒例のチャリティー番組『まるごと1日』のマラソン中継中、乱入者が現れた。
男は、テレビカメラの前にプラカードを押しつけた。
プラカードの内容は、テレビ局の過去の不祥事の数々だった。
衆知の事実である。
スタッフは男を取り押さえ、警察官に引き渡した。
番組は、何事もなかったかのように進行した。
『乱入』を非難する声よりも、番組が反省の色無く、開催している事実に対する糾弾が多かった。
そして、翌日。月曜日の朝は、いつもと違った。
午前8時。テレビ汐留。
乱入男と同じTシャツを着た男が、横たわっていた。
男の口には、札束に似せた新聞紙が詰められていた。
新聞は、テレビ局と同じ系列の新聞だった。
発見した警備員は、上司に報告、110番通報された。
30分後。機捜と鑑識がやってきた。
赤井を待っていたのは、遺体と警備員だけでは無かった。
「山谷さん。新聞社だけじゃなかったんですか。」
赤井の言葉に、「商売だからね。マスコミ関係は多いよ。口に詰められているのは、コピーだが、系列の汐留新聞だ。捜査一課の、あのチームが担当するのかな?」と、山谷は尋ねた。
「多分。」
「じゃ、1つ情報を。ガイシャは、この局のアシスタントプロデューサー一色敬三だ。ご遺体から判明するかも知れないが。」
「助かります。」赤井は敬礼した。
今は、警備会社の警備隊長だが、山谷は、元警察官だった。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『テレビ局AP死体遺棄事件』本部。
管理官が説明した。
「ガイシャは、テレビ汐留のアシスタントプロデューサー一色敬三だ。山谷さんの会社が警備担当らしい。山谷さんは、一色氏と面識があったので、すぐに特定出来た。一色氏は、昨日、一昨日の、同局チャリティー番組の担当をしていた。着服問題を始めとした、過去に色んな不祥事が明るみに出ているので、第三者委員会から勧告を受けていたにも関わらず、今年も開催され、チャリティーマラソンのゴール直前で、乱入男が現れた。山谷さんによると、マラソンコース全ての場所に警備員を配置することは、番組側から拒否されていたそうだ。それで、乱入出来る場所は、幾つもあったそうだ。今、交通課が取り調べをしているが、徳丸課長補佐によると、今朝の事件に関与していない、自分に感化されたのだろう、と言っているそうだ。」
「模倣犯、でもないですね。」と、蒔さんが言い、辻さんに叱られた。
「しっかりしてくれよ。関係あるのなら、共同正犯だろう。」
取りなすように、大曲先輩が言った。
「乱入男に関しては、SNSでの反響は、かなりのものです。テレビは、傲慢な番組が多い。スポンサーが1社でも付くと、スポンサーのせいにして逃げる。スポンサーになる企業は丸投げで、ろくに番組を調べない、『殿様商売』。自社に不利益が出た時、初めて本腰になる。甘えすぎです。だから、不祥事が起きる。」
「詰まり、大曲くん。スポンサーは未だに『真っ当なチャリティー番組』だと信じているのだね?」
「その通りです、管理官。繋がりはともかく、乱入男の言い分自体は正しいです。募金した人間の善意を踏みにじっている。」
「取り敢えず、辻さん達は、テレビ局へ。大曲達と村松は、一色家へ。」
「「「了解。」」」
午後2時半。一色家近く。
「ヤバイ。どこで聞きつけやがった。眩目。『偽装』だ。村松。クルマを頼む。」
「了解。」
マスコミらしい車両が一色家の近くに駐めている。
こういう場合に備えて、段ボールを組み立てて、『鑑識』の腕章をつけることになっている。刑事らしき人物ならマイクやカメラが追い掛けるが、鑑識なら追い掛けない。
午後3時。一色家。
「遅い。」女子高生は、言った。
大曲先輩は、大まかに説明する。
女子高生も、大まかに自己紹介した。
「逆恨みじゃないわ。自業自得よ。」女子高生の一色冴子は、涙は流したが、泣かなかった。
大曲先輩は、案内された書斎に入り、俺はクローゼットを確認してからアルバムを見せて貰った。
「お父さんと親しかった・・・。」
俺は言いかけて、息を呑んだ。
アルバムに仲良く写っていた人物。それは、乱入男だった。
「一杯食った・・・食らわせられた。そうだね。冴子ちゃん。君の企画・立案かい?」
冴子ちゃんは、ハンカチを取りだし、涙を拭いた。
「所謂、『ドッキリ企画』でした。父も金井さんも、無理矢理番組を続けたところで、世間のバッシングは避けられない。いくら上層部の命令でも。スポンサーの殆どが、今年限りの契約でした。ランナーの星アンナさんも賛成してくれました。慈善事業は、いつの間にか『偽善事業』になっていました。絶対参加してくれなかった、『お笑いの大御所』達の意見も、上層部には、何処吹く風でした。初代司会者のHさんが降板したのも、『番組自体のドラマ化』を嫌っていたからです。チャリティなのに出演者にギャラが出る。外国なら、あり得ないことです。ドッキリを割り込ませて、バラエティーショーで終わらせたかったんです。」
「大体、分かった。」
いつの間にか、スマホで大曲先輩は蘭子に中継し、状況を聞いていた。
「30分後に、そこのマスコミを離れさせる。大曲達は、冴子ちゃんを連れて脱出しろ。『追手』を捕えるんだ。」
午後3時半。マスコミが付近にいなくなった時、マイクロバスが家の前に駐まった。
これは、非常時に使用する、警視庁の防弾ガラスマイクロバスだ。
揺れる車内で、先輩は俺に言った。
「ガイシャと乱入男金井はメールでやり取りしていた。ハッキングの跡は無かった。
スパイがいたんだ。テレビ局社内に。」
午後4時。待ち構えていた、警備課、捜査二課の刑事達に半グレの社員達が逮捕・連行された。
午後5時半。捜査一課横の大会議室。『テレビ局AP死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、神道課長、小宮課長、大仏課長、徳丸課長補佐、倉田課長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
神道課長、小宮課長、大仏課長、徳丸課長補佐は、すぐに出て行った。
管理官が説明に立った。
「ホシは、テレビ汐留の社長小川信也、副社長大鳥玄司、専務中山伸吾、ディレクターの古田圭子、半グレの麹町新光社の太田敬吾、南俊和。造反しようとする金井と一色は、推進派に取って、邪魔になった。そこで、『テレビ局に不満を持つ過激な視聴者の復讐』という『ドラマ』の筋書きが立てられた。ランナーの星アンナさんが、うっかり古田に口を滑らした為、金井と一色の『ドラマ』は、無理矢理書き換えられた。麹町新光社は、スポンサーの内の一社だった。本来、ドキュメンタリーはノンフィクションだ。早く辞めるべき番組だった、とアポローンの社長天野さんが言っていたよ。一色冴子さんは、親族が引き取るそうだ、葬儀も親族が代行する。これから、記者会見に臨む。解散。」
午後7時半。眩目家。
村松が、『広島焼き』を焼いている。
出来上がると、さっさと持ち帰った。
「大曲先輩の推理通りだった。」
「ああ。羨ましいか?私が鍛えたんだ。後で、お前も鍛えてやる。」
裸じゃ説得力ないが・・・。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
山谷敬三・・・元警視庁警部補。今は警備会社警備隊長。
大仏俊吉・・・交通課(交通捜査課)課長。
徳丸勘・・・交通部交通課課長補佐、警部補。
倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。警部。
小宮孝・・・警備課課長。警部。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。




