捜査一課ですけどー特別編
俺、眩目真吉は、大曲先輩と共に、開光蘭子課長の取り調べに付き合うことになった。
机を挟んで蘭子は、被疑者堂守敏夫の前に座った。
モノカキ殺人事件
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。蘭子の夫。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。蘭子の元カレ。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。眩目の妻。
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午後1時。捜査一課。取り調べ室。
俺、眩目真吉は、大曲先輩と共に、開光蘭子課長の取り調べに付き合うことになった。
机を挟んで蘭子は、被疑者堂守敏夫の前に座った。
俺は、隅の『書記席』に座っている。
書記と言っても、今はICレコーダーを動作させているだけだ。
大曲先輩は、入口ドアの所に仁王立ちしている。
「詰まり、あなたは、がんで亡くなった友人野本英也の為に敵討ちをした、ということですか。」
「はい。野本は、ユーザーの、アカウント名三月三日の傲慢さに何度も筆を折る、いや、ウェブ投稿を止めようとしたようです。最初は、『警視・斎王』という作品で、腕利き刑事が活躍する作品で、『教え子』というタイトルの作品で、『殺害動機』が書かれていないじゃないか?と言ってきたんです。目が不自由になってきたせいもあって、度々誤字や誤変換を指摘され、修正していたそうです。彼は、読者に色んな解釈をさせた上で『解決編』を用意していたようですが、『内容の修正』は出来ない、と突っぱねたそうです。」
「まるで、作家さんと編集さんみたいですね。」
「はい。そんな約束していないのに。それを根に持ったのか、今度は、車椅子生活をしている男と介護する大姪との同居生活を描いた作品『私の大姪』という作品で、彼の父の遺品でもある椅子を大姪が壊してしまった、というエピソードを書いた時のことです。この作品は、彼の私生活が題材になっている作品です。大姪が予備の寄せ木造り椅子を運んだ際、折り畳み椅子も何脚かあるね、というクダリがあるんです。折り畳み椅子と言っても、パイプ椅子の事じゃありません。パイプ椅子なら、パイプ椅子と表現したでしょう。ストッパーの付いた、細長い椅子のことです。」
そこで、大曲先輩が、折り畳み椅子の写真を見せた。
「この椅子のことですよね、凶器の。」
「はい。彼の父や母が入院時、来客用に購入して使っていたもので、彼の脚が不自由になる前は、時々修理していて使っていたそうです。で、彼女は読後感想コメントとして『遺産の折り畳み椅子が沢山あって良かったね』と書きました。彼は確信しました。今までは疑惑のままでしたが、速読のつもりで読み落とししていたんです。興味がないなら、『お気に入りの作品』なんて言わなければいいのに。彼はそんな思いもあって、彼女を非難し、フォロワーを辞めました。フォロワーとは、支援者という意味です。ファンですという意思表示です。」
「それから、野本さんは体調を崩し、病気が進行して亡くなった。手記を読んだあなたは、彼女が死を早めたと思った。そして、彼のアカウント名を引き継ぎ、彼女がウェブサイトのスタッフの一人だと気づき、会社に乗り込んだ。編集課長から聞き出し、その場で彼女を罵り、殺害に至った。」
2人に沈黙があった。
大曲先輩が何か言おうとするのを蘭子が制し、こう言った。
「あなたは、1つだけ間違っている。間違っているのは、文章でも友人への義侠心でもない。殺した相手だ。編集課長の誕生日は三月三日だ。」
「・・・やっぱり、私はドジ夫なんですね。初対面の人の言葉を鵜呑みにするなんて。ネットの上では年齢も性別も関係ないのに。」
堂守の呼吸が静まるのを待って、蘭子は、大曲先輩に頷いた。
大曲先輩は出て行った。報告の為に。
―完―




