224.高速出口
ドライバーは、仕方無く、その観光バスの車内を覗いた。
ドライバーを初め、座席に座った者は全員、延びている。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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それは、一種、異様な光景だった。
午前6時。ある高速道路出口。
降りようと思った乗用車は降りることが出来なくなった。
後続車は貯まってきて、クラクションを鳴らす。
ドライバーは、仕方無く、その観光バスの車内を覗いた。
ドライバーを初め、座席に座った者は全員、延びている。
昇降ドアの付近を観察した乗用車のドライバーは、亡くなっていることを確認した。
発見者のドライバーは、病院に勤める男性看護師だった。
「死体がある。降りられない。後続車に伝えてくれ。」と、1つ後ろのクルマのドライバーに伝え、110番通報をした。
5分後、駆けつけた白バイ警察官は、上司に連絡した。
30分後。やってきた機捜と交通課応援パトカーの警察官が事態の収拾、交通整理に当たった。鑑識も到着した。
赤井は言った。
「めんどくさくなりそうだ。」
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『高速道路出口死体体遺棄殺人事件』本部。
管理官が説明した。
「ガイシャは、ドライバーを含め、11人。それぞれの持ち物からドライバー以外は『敬和の会』の党員だと判明した。病気療養中の代表に替わって指揮を執っている副代表持田松子が、10人に含まれている。代表の山中孝史氏が身元確認に来て、今、溝内課長が相手をしている。山中氏は、臨時に外出許可を貰い、車椅子で到着した。マスコミには井関警視監が記者会見を開き、対応している。発見者の町田浩二氏は、病院の看護師で、迅速に110番通報を行った。死因だが・・・井関さん。」
「先日の議員団毒殺の記憶も消えないまま、の事件です。件の『毒入りドリンク剤』です。恐らく、ホシと犠牲者達は、一緒に飲んだのでしょう。同じものを飲んだと思い込んだんだ。」
「空港の時と同じ手口ですね。ホシは皆に顔を知られている、あるいは・・・。」
「あるいは、従う条件があった。今、代表の山中氏と接見中ですが、先に報せに来ました。政党宛に、大口の寄贈があったそうです。贈収賄が漏れるとヤバイから、と絵画のプレゼントです。ボッホです。それと、バスに乗って出掛けたのは、その人から『敬和の会』の党員達を招待されたのだそうです。伊豆の別荘とやらに。」
溝内課長は、そう言うと、さっさと出て行った。
「恐らく贋作だろうな。素人には判断出来ない。別荘も怪しいな。空港の事件は実験だったんだ。詰まり、明らかに政党への怨恨じゃない。」
「見せしめ、かもな。南方会の系列を今、調べさせている。ドリンク剤を入手出来たのは、反社の南方会だけだ。」と、入って来た新垣課長が言った。
新垣課長は、かつて潜入捜査をしていた関係で反社には顔が利く。だが、全ての反社を傘下にしていた訳でもない。顔が利く反社のネットワークで、独自に調べさせるのだ。
「今までのヤクと違い、吸引具も注射器も要らない。ドリンク剤に混ぜることが出来るということは、注射器っぽいものは要るかも知れない。前回の目撃証言で保冷ケースを使っている。誤魔化す方法はある。」新垣課長は、珍しく溜息をついた。
「辻さん達は、車椅子の山中氏にご足労頂いて、『敬和の会』の党員達を調べてください。党員達が巻き添えということを確認して、寄贈の絵も借りてきてください。鑑定家をそこに呼ぶ訳にもいかないから。井関さん、鑑定は?」
「ああ、専門家を呼ぶよ。CTスキャンにはかけるけどね。」
「じゃ、大曲達は、副代表の持田氏の家に行け。村松も、『ご近所回り』だ。」
「「「了解!!」」」
午後2時半。持田家。
「うちの子は、人様に恨まれてるようなこと・・・。」
大曲先輩は根気よく母親の登喜子に『逆恨み』説を解いた。
「それに、代表の山中氏が狙われていたのかも知れませんよ。」
「それも・・・そうね。」
俺は、書斎替わりの私室を先輩に任せ、アルバムチェックをした。
「ああ。修学旅行の時、山中さんと知り合ったんですか・・・伊豆・・・ですか。」
「本人は嫌がってましたけどね。小学校の時、伊豆でしたから。」
「はあ。」イジメかな?と思ったが、黙っていた。
「これは、政党で演説に回った時ですね。この方は?」
「確か、ボランティアで手伝いに来た大野さん。大野末吉さん。この方。」
登喜子は、葉書ホルダーを捲って行き、葉書を取りだした。
俺は、念の為、撮影した。
「あら、メモじゃないのね?」
「ああ、日本人の名前って似た名前の人いるじゃないですか。例えば、萩原さんと荻原さんとか。メモだと書き間違えることもありますよね。」
「なるほどね。ただのイケメンじゃないのね?」
俺は返答に困ったが、先輩に合流した。
「眩目。そっちに大野さんって人いた?」
俺は、スマホで写した写真を先輩に見せた。
「この人です。」
「持田さんは、事件の3日前に大野さんに会ってる。その後のメールはない。」
大曲先輩は、『敬和の会』に行っている辻さんにスマホで電話した。
スピーカーをオンにして。
「大曲です。絵画を提供してくれたのが、大野さんて方かどうか確認してください。持田さんは3日前に会っています。」
暫く、向こうのやり取りがあって、山中氏が替った。
「絵画を頂いたのは大野さんじゃありません。大野さんって言えば、選挙の時に来られた、ボランティアの男性ですね、確か。絵画を頂いたのは、三田村圭子という女性の方です。秘書を連れて来られて、会社役員ということでした。」
「じゃあ、事件とは関係ないかも知れませんね。ご協力あるがとうございます。」
「いいえ。」
「あ。切っちゃった。辻さんのスマホなのに。まあいい。VIPには違い無いな、大野氏は。」
先輩は、少し考えて、神道課長に電話した。
「大曲です。前に、十一協会は、どこの政党の選挙にもボランティアで入っているって言っておられましたよね。」
「ああ。暗殺された元総理の件で、世間が騒いだ時な。被疑者は元総理が十一協会の広告塔だからと言っていたが、寄ってたかって調べた結果、どこの政党にもボランティアに派遣していることが分かったんだった。」
「じゃ、『敬和の会』にも派遣して不思議はない訳ですね。」
「何か掴んだのか?」
「殺された持田さんは、3日前に大野末吉って人物と会ってます。」
「分かった。十一協会に大野がいるかどうか、だな。調べてみる。」
午後3時半。クルマの中。
「先輩。世間の風評の通りでした。バカみたいな言動が多いけど、なかなか野心家だそうです。」と、村松が報告した。
午後4時半。捜査一課。第二応接室。
「結論から言うと、大野は、十一協会から送り込まれたスパイだな。」と、神道課長が言い、「絵画を寄贈した三田村は、大野の紹介らしい。山中氏の秘書が覚えていた。」と、辻さんが発言した。
「三田村がドリンク剤を振る舞えば、全員飲むわなあ。三田村の出自だが・・・。」と、蘭子が考え込むと、「出自は分かったよ。亜細亜平和会という新興勢力のヤクザ、反社は、南方会から別れた組だ。隣国マフィアから南方会がドリンク剤を手に入れていたとしたら、亜細亜平和会にも流れる。黒幕は、隣国マフィアだ。日本は、ヤクの実験牧場だ。流行り病の時も、反社を上手く使ったのでは?という噂があった。ヤクザネットワークも捨てたもんじゃないだろ?三田村は、組長のオンナだ。」と、新垣課長が続けた。
「そうか。持田は、絵画を政党に寄贈するから、副代表としての株が上がる、と言われたんだろう。党員達に一緒に飲もう、と言ってドリンク剤を飲み干した。そして、惨劇。」と、大曲先輩は言った。
「『敬和の会』を潰して、何のメリットがあるんです?」と、俺はつい言ってしまった。
「人数だろうな。それに単細胞。違憲飲酒党なら上手く行かない。今の政権に一番不満なのは野党でもマスコミでもない。手下の不甲斐なさにやきもきしている、あの国だ。ついになりふり構わず、マフィアを使いだした。マフィアまでは手が届かないかも知れないが、国内の犯罪者はふん縛れる。」と、蘭子はニヤリと嗤った。
午後6時。捜査一課横の大会議室。『高速道路出口死体体遺棄殺人事件』本部。
取り調べ室から、神道課長、新垣課長、大仏課長、餅屋係長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。神道課長、新垣課長、大仏課長、餅屋係長は、すぐに出て行った。
管理官が説明した。
「ホシは、亜細亜平和会の三田村圭子、草野栄五、新屋敏夫。十一協会の大野末吉。政党を乗っ取ろうと画策していた十一協会と隣国マフィアの指令を受けていた亜細亜平和会が手を組んだ。絵画は贋作だった。向かっていた別荘も他人名義。三田村と大野は何故バレたのか?と不思議がるから、『神様』が決めたことだ、と言っておいたよ。発見者の看護師の勤める病院には感謝状を贈る予定だ。記者会見に行ってくる。解散。」
午後7時半。眩目家。
「犯罪者はな、殺すこと自体がメリットなんだ。お前をおかずにするのもメリットだけどな。」
全裸で夕飯を頬張る嫁。
ホラーだ。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
大仏俊吉・・・交通課(交通捜査課)課長。
餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。
井関一郎・・・警視庁警務部監察官。




