222.帰れなくなった議員達
「落とし物をした」という電話が入り、途中で切れた。
空港ロビーと言っていたので、巡回の警察官がセグウェイで空港ロビーに行くと、酔っ払いのように眠りこける三人の男がいた。
よく見ると議員バッジを身に着けている。
警察官は、上司に連絡した。
========== フィクションです ===========
=================================
※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
===========================
午前9時。羽田空港警察署。
「落とし物をした」という電話が入り、途中で切れた。
空港ロビーと言っていたので、巡回の警察官がセグウェイで空港ロビーに行くと、酔っ払いのように眠りこける三人の男がいた。
よく見ると議員バッジを身に着けている。
警察官は、上司に連絡した。
=================
====================
午後1時。捜査一課横の大会議室。『羽田空港死体遺棄殺人事件』本部。
管理官が説明した。
「ガイシャは、先日隣国に旅立った、超党派国会議員団の、小梅党伊座俊喜議員、移民党知本はじめ議員、利権飲酒党仲西隼人議員の3名だ。いずれも空港ロビーで発見された。税関によると、別段変わった様子は無かったと言う。また、国際線に搭乗予定だったキャビンアテンダントは5名の男と彼らが談笑しているのを目撃している。各党の出迎えだと思った、と言う。だが、空港署警察官が発見した際は、眠りこけているとしか思えなかった。井関さん、ヤクですか。」
「ああ、新種の。カプセルがなんじゅうにもなっていて、最初は入眠剤が効いて眠くなってきて、入眠剤が溶けると、何かの毒で即死。時限服毒薬だ。出迎えた筈の5人の職員だが、トイレで眠っていた。こちらは、ただの入眠剤だ。」
「眠っていた5人の話によると、ある大物議員と秘書らしき人物が現れ、労った後、ドリンク剤を皆に振る舞ったそうだ。その大物議員も秘書も飲み干したので、思わず皆は習った。後から考えると、その2人、お迎え職員、議員団はドリンクのキャップが違っていた、と言う。」
「詰まり、普通のドリンク剤、入眠剤要りドリンク剤、毒入りドリンク剤だ。保冷ケースに入っていたから、ソレ毎『始末』された。」と、井関さんは、説明を足した。
「大掛かりですね。少なくとも、5人を誘導してトイレに連れて行った人物が3人いるのかも知れない。」と、蘭子が推理した。
「それで、小梅党伊座議員の胸ポケットから紙片が出て来た。秋野。」
秋野は、スライドをスクリーンに映した。
『余計なことをするからだ』
「今回も、政権与党の賛成派の仕業に見えなくもない。しかし、幾ら反対派でも知本議員まで殺すのはやりすぎだろう。野党はともかく。」
大曲先輩の言葉に、入って来た井関警視監が、「そうとも言えないけどな。知本は元総理の石我の後輩だ。だが、大曲くんの言う通り、アンチだから殺す、では話が出来すぎている。」と、言った。
「実は、各党から、ホシについて詳細を話せ、と言って来ている。結果は、国民よりマスコミより先に必ずお知らせします。そう言っておいた。」
そして、ふふふ、と笑った。
「あいつらやマスコミ人間は、普通の脳みそを持っていない。ねえ、父さん。」
「珍しく意見が合ったな、あいつらのは、『合わせ味噌』だな。」と、井関さんも嗤った。
「どうするね、開光くん。」と、管理官は当惑気味に言った。
「団長は、伊座議員でしたね。大曲達と村松は、伊座議員宅、餅屋係長のチームは知本議員、皇係長のチームは仲西議員のお宅に伺い、手掛かりを探す。辻さん達は小梅党、関口係長のチームは利権飲酒党、紅林係長のチームは移民党だ。政党関係は、深刻な顔して頷くだけでいいです。どうせ、何も出て来やしない。議員の誰かの怨恨だ。」
「「「了解!」」」
午後2時半。クルマの中。
「質疑などで行状の悪さ、は皆有名だ。表だっていないところ、が味噌、だ。」
「先輩、何味噌です?」
「クロ味噌か、シロ味噌。」
「「はあ。」」
午後3時。伊座家。
母親の真美子が出て来た。
「行状が悪いからっておっしゃりたいでしょ?」
「捜査に余談は禁物です、お義母さま。」と、大曲先輩は済まして言った。
「ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー。」
「書斎は、ここです。」
大曲先輩が書斎に入ると、真美子さんは俺に尋ねた。
「貴方、独身?」
「妻帯者です。」
「不倫は?」
「まだ死にたくありません。」
「そう・・・。」
危ない。独身だったら総化学の会に勧誘されるだろう。
アルバムを広げた真美子さんは、「この人が、総化学の会の同期の狭山睦夫さん、この人が、小梅党の同期の早川道夫さん。どちらかが俊喜を殺したの?」と、尋ねて来た。
「捜査に余談は禁物です、お義母さま。」と、俺は先輩に習って言った。
アルバムと葉書ホルダーを小箱に入れてくれた真美子さんは、「名刺ケースとか要る?」と、何故か親しげに尋ねてきた。
「あ、助かります。議員さんですものね。お付き合いは広い筈です。」
書斎に行くと、大曲先輩は作業を終えていたが、「お義母さま、有田さんって、ご存じでしょうか?」と真美子さんに尋ねた。
クビを振るので俺は、名刺ケースを開けた。
あった。一番上に。
「この人が、渡航前に会った人物だ。」と、大曲先輩は満足そうに言った。
先輩は、その場で蘭子に報告した。
スピーカーホンにした。
「分かった。各班に、確認させよう。」
先輩が電話を切ると、「この人が、殺したの?」と真美子さんはまた尋ねた。
「今の所、VIPです。有田さんが、何か解決の切っ掛けを持っているといいですね。」
午後4時半。捜査一課。第二応接室。
「大曲くん。有田新一氏は総化学の会も脱会、小梅党も離党しているらしい。昔の小梅党代表が勝手に移民党との連立解消したり、利権飲酒党との合併として亜細亜党を作って衆議院選挙で惨敗したので、離れたメンバーの一人らしい。しかも先頭を切って。総化学の会は口を濁しているけどね。」と、辻さんは言った。
「じゃ、当然ガイシャと疎遠になった。そして、出発前に会っている。 臭いますね。で、有田さんは?」と、先輩は尋ねた。
「失踪届が出ている。」と、蒔さんが応えた。
「合併云々は、利権飲酒党にとってデメリットしか無かっただろうね。今回の渡航も乗り気では無かったらしい。」と、関口係長が言い、「知本議員は移民党では評判が良くない。折角上がった移民党の支持率を下げる会派だから。」と、紅林係長が言った。
「怪しい動きと言えば、反社の南方会がチャカの取扱いを止めた、という噂があるらしい。」と、新垣課長が言い、「KK日の出夜明けが、闇バイトやってた人間をスカウトした、という噂もある。」と、神道課長が言った。
そこへ。酒井と倉田課長が入って来た。
「蘭子課長。この人、知り合い?」と酒井が言い、倉田課長がプリントアウトした紙片を出した。
それは、こんな文面だった。
『有田なら、死んでる。自殺でな。開光課長のファンより』
皆は驚いて、蘭子を見た。
「捜査一課ですけど、223」につづくー
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。
倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。
酒井優香・・・サイバー犯罪対策課課員。
皇信也・・・捜査一課第二係係長。警部。
餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。
関口寛也・・・捜査一課第三係係長。警部補。
紅林新太・・・捜査一課第四係長。警部補。
井関一郎・・・警視庁警視監。井関の長男。
名も無き殺し屋・・・???
※空港警察に関しては詳細が違うかも知れません。
お含みおきください。
クライングフリーマン




