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221/221

221.捜査一課特殊事件捜査係

小学生2人が道路上に異様なマネキンを発見した。

パンイチの男に貼り付いていたのは、モバイルバッテリーだった。

目撃者の証言で、1時間ちょっと前にワゴン車を1台見かけられていた。


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 ===========================

 前回のあらすじ。

 小学生2人が道路上に異様なマネキンを発見した。

 パンイチの男に貼り付いていたのは、モバイルバッテリーだった。

 目撃者の証言で、1時間ちょっと前にワゴン車を1台見かけられていた。


 =================

 ====================


 午後1時。捜査一課横の大会議室。『小学校近辺死体遺棄殺人事件』本部。

 管理官が説明した。

「ガイシャの身元が分かった。Dokodemoの社長斉藤四郎。アメリカに旅行に行っている筈が、ホテルに到着していなかった。会長職で気まぐれだから、他の場所で遊んでいるかも知れないと思っていたようだ。息子さんの社長は、殺される理由がない、と言っている。社長さんは今、溝内課長が相手している。」


「普通なら、誘拐だよね。金でなくても。」と、新垣課長が入ってきた。

「でも、誘拐を家族に報せなかった奴がいる、ホシだ。」


「「「「「「「え???」」」」」」」


 新垣課長と一緒に入って来たのは、捜査一課特殊事件捜査係、通称特殊犯係の和泉啓太警部補だった。

「まさか、こちらの案件と繋がっているとは。Dokodemoの社長斉藤四郎氏がアメリカに出発したのが、一週間前。宿泊予定のホテルをキャンセルせず帰国しました。出帰国記録によると、5日前に帰国しています。ところで、3日前、誘拐されたらしい、と使い捨てスマホから連絡が入ったのですが、捜査員が向かう途中、『手違いだった。申し訳ない。』という電話連絡が公衆電話からありました。不審な案件なので、一応追跡調査をする一方、別の案件、誘拐事件に人員を割いていました。開光課長に連絡が遅れて申し訳ありません。」

「遅延はカバー出来るでしょう。使い捨てスマホ、というのは、追跡調査の結果ですか。」

「そうです。そして、ご存じの通り、公衆電話は非通知です。この案件の被害者がDokodemoの社長斉藤四郎氏、届け出をしたのが、長男の斉藤長一郎氏。1回目の連絡と2回目の連絡が同じ人物だったので、信用してしまいました。そして、広報課で公開捜査になり、この案件の被害者が社長斉藤四郎氏と知り、生活安全課に身元確認に来ている長一郎氏に直接確認しました。極秘帰国は知らなかったと、話されています。」

 和泉警部補の話に蘭子は、「極秘帰国したんじゃない。極秘帰国させられたんだ。」と言った。

「至急・・・。」

「至急、CIAに連絡をとり、ベガスに斉藤四郎氏が現れたか調べてくれと依頼したよ。仕事が早いだろ?開光くん。」

 井関警視監に、蘭子は苦笑して敬礼した。


「辻さん達は、長一郎氏とDokodemoに行き、社内を探って下さい。餅屋係長のチームと、紅林係長のチームを連れて。村松も行け。大曲達は、ガイシャ自宅だ。」


 午後2時半。クルマの中。

「思ったより複雑な案件ですね。」

「思ったより、な。和泉さん、転任してまだ半年経たないが、結構やり手らしい。向こうも極秘任務、こっちも極秘任務だからなあ。」と、大曲先輩は、溜息をついた。


 午後3時半。斉藤家。

 想像以上に大きな家だった。

 3人の家政婦と共に出迎えたのは、夫人の蝶子氏だった。

「お電話の案内、ありがとうございました。課長さんは女性なのね。」

「はい。」

「恐い?」

「「え・・・まあ。」」

「書斎は、家政婦が案内致します。主人の持ち物は寝室の隣の物置です。御案内します。」


 物置と呼ばれた部屋は見事な書庫だった。

 コミックもあった。

「子供や孫のじゃないんです。役に立ちそうな発行物なら、即時に買い求めていました。」

「なるほど。勉強家だったんですね。偉い人のお宅だと大抵全集や百科事典が並んでいますが。」

「ネットで検索出来るような情報なら、その出版物は、『虫のえさ』って言ってましたわ。」

 夫人は、目頭を押えた。

 アルバムを見せて貰い、「お子さんが皆事業を引き継いで・・・この方は?」と、気になるので、夫人に尋ねた。

「常務の九重さんです。九重弘さん。主人と会社を立ち上げました。元の、親会社MTTの同期です。」

 同期?何か違和感を覚えた。社長も副社長も専務も息子さんだ。完全な同族経営だ。


 書斎に行くと、大曲先輩は、そっとグーサインを出した。


「どうも、お邪魔しました。先に御案内した通り、解剖がありますので、すぐにご遺体は戻りませんので、追って連絡がありますので、ご了解下さい。」

「課長さん、恐い?」

 また、夫人が尋ねるので俺はつい、「実は妻なんです。恐いです。家でも職場でも。」と応えてしまい。夫人は、大きく口を開け笑った。

「お疲れ様でした。」


 午後4時半。クルマの中。

「そんなネタ、ありかよ。」と、大曲先輩も笑った。


 午後6時半。捜査一課横の大会議室。『小学校近辺死体遺棄殺人事件』本部。

 取り調べ室から、新垣課長、神道課長、深山課長、溝内課長、倉田課長、餅屋係長、皇係長、関口係長、紅林係長、和泉係長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。

 新垣課長、神道課長、深山課長、溝内課長、倉田課長、餅屋係長、皇係長、関口係長、紅林係長、和泉係長は、すぐに出て行った。

 第二応接室は、そんなに広くない。皆、立ったままの取り調べだ。

 管理官が説明に立った。

「ホシは、Dokodemoの常務である九重弘、反社の遠浅会の浅井光也、香山佐吉、半グレのクールクールKKの端野玄大。遠浅会の浅井は、バガスに来たガイシャと接触、借金の代わりに新技術の新製品の情報を渡すという条件で、2人で帰国した。帰国直後、ガイシャは会社に電話をしようとした。電話に出たのは九重だった。浅井は、会長の命が惜しければ、情報を差し出せ、と言った。九重にしてみれば、『寝耳に水』だった。新製品のことは聞いていない。そこで、社長の名前で一旦警察に誘拐があったと電話しておきながら、それを打ち返す電話をし、浅井に取引を持ちかけた。半グレのクールクールKKとは親しい九重は、拷問してガイシャから情報のありかを問いただした。ガイシャは断固拒否した。自白剤を飲まされても、という覚悟があったのかどうかは分からない。だが、社長の長一郎氏に寄れば、『架空の新技術製品』だった。怒り狂った浅井は、部下に始末させた。モバイルバッテリーを貼り付けたのは、去年、モバイルバッテリーの発火事故が多かったから、利用者の復讐という形を取ったそうだ。社長の長一郎氏によれば、欠陥品のケースより、利用者の管理ミスのケースが多いそうだ。」

「欲に目が眩むと、何も見えない。」

 そう言ったのは、村松だった。


 午後8時。眩目家。

「『実は妻なんです。恐いです。家でも職場でも。』名台詞、改めて聞きたいな。」

 しまった。蘭子が、遺体の引き取り日時を確認したに違い無い。


 俺は、すぐに裸体になって、土下座した。

「申し訳ない。」


 翌日、目に隈が出来てるだろうな。


 ―完―



 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。

 新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。

 溝内健児・・・生活安全課課長。

 深山俊哉・・・警視庁広報課課長。警部補。


 皇信也すめらぎしんや・・・捜査一課第二係係長。警部。

 餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。

 関口寛也・・・捜査一課第三係係長。警部補。

 和泉啓太・・・捜査一課特殊事件捜査係、通称特殊犯係の係長。警部補。

 紅林新太・・・捜査一課第四係長。警部補。


 ※モバイルバッテリー及びスマホ等の事故は、暑い車内放置の場合が多いようです。

 また、夏場は、熱を持ちやすいそうです。バッグやポケットに収納するなどの工夫が必要です。

 連想する会社名・個人名は、フィクションですので、お含みおきください。

 クライングフリーマン





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