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217/222

217.コメだらけ

熱に強いプレートに紙が封入されているのを。

『コメを止めたのは私です』


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 ===========================

 午前8時。あるコメ問屋。

 爆発が起き、火事になった。

 消防が鎮火した後、大量のコメ袋の残骸の中から死体が発見された。

 そして、消防隊員は見付けた。

 熱に強いプレートに紙が封入されているのを。

『コメを止めたのは私です』


 消防隊員の通報で、機捜と鑑識が到着した。

「正直なホシだな、コメ隠しについては。」と、赤井が言ったが、「噂には聞いていたが・・・おや?」と、井関がクビを傾げた。


 =================

 ====================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『コメまみれ殺人事件』本部。

 事件の名称は、仮称であり、正式には記号と番号の固有番号で資料管理されている。

 飽くまでも、捜査員達の、他の事件と混同しないための名称で、俗に、『戒名』と呼ばれている。従って、妙な戒名も許されるが、このチーム内でのことだ。

 管理官が説明した。

「ガイシャは、コメ卸業ゆめ精米KKの社長、遠阪悦司。時限爆破装置は、左腕に巻き付いていたらしい。井関さん。」

「凝ってるねえ、ホシは。まるでミサンガか腕時計のように巻き付いていた。秋野。スライド。」

 秋野がスライドをスクリーンに映した。

「巻き付いていた左手は自由が効く状態。ところが、右腕は脱臼、その上、腰のベルトに拘束バンドで固定。椅子に座らされ、膝に米袋。米袋も固定。ところで、消防隊員が見付けたプレートには紙が封入されていたが、その紙にQRコードが刷り込まれていた。サイバー犯罪課に回して分析した所、地図が出て来た。秋野。」

 秋野がスライドをスクリーンに映した。

「地図に相当するのは、ある半グレの倉庫。」

「呼んだ?」と、神道課長が入ってきた。

「私のラブレター、読んでくれた?」

「この倉庫の持ち主を調べて教えろ。蘭子ちゃん・・・。」

「3倍返し、どうした?」

「まだ、覚えてたか。フジ雄山コーポKK。去年、手入れがあったとこ。群馬の山中にあった。」

「で?」

「あったよ、お、こ、め。やっぱり『コメ騒動』は猿芝居だった。倉庫は、元は食肉加工会社のモノだった。それをフジ雄山コーポKKとコメ卸業ゆめ精米KKが合弁会社として幽霊会社を作った。で、一気にバレてしまった。拘留中のフジ雄山コーポKKの連中に確認したよ。『ブツをぶっ飛ばすバカがどこにいるんですか?』って言われたよ。正論だ。それに、誰も脱走していない。」

「管理官。群馬県警に協力をお願いします。辻さん達は、フジ雄山コーポKKへ。大曲達は、ガイシャの遠阪氏宅へ。関口係長にも別にデータを確認して貰いましょう。」

「県警の方は引き受けた。」と、管理官は言った。


 午後2時半。クルマの中。

「関口係長のチームは?」と、俺は大曲先輩に言った。

「最近は、こっちのチームの手伝いもするが、関口さんのチームは自殺案件が多い。詰まり、自殺案件と絡んでいるってとこかな。村松、慎重に聞き込み、な。」

「了解しました。」

 午後3時。遠阪家。

 夫人の楓さんは、泣きながら言った。

「幾らコメ問屋だから・・・って。」

「お気持ちはお察しします。ホシの、犯人の胸中は捕まえないと分かりません。最近、不審な車は?」

 楓さんはクビを振った。

「そうですか。手続きですので、お手数ですが・・・。」

「はい。」

 家の一角にある『事務室』があった。

 大曲先輩は、そこに入って行った。

「昔は、会社兼自宅でした。その名残です。」

 二階に上がりながら、楓さんは説明した。

 アルバムと葉書ホルダーは準備してくれていた。

 慰安旅行の集合写真があった。

「やっと、会社が大きくなったのに。これが、退職された豊年さん。定年退職です。」

「この端の人は?」

「1ヶ月で止めた、宮下くん。バイトでした。他に給料のいいバイトを見付けた、と言って。」

 階下に戻ると、大曲先輩が楓さんに尋ねた。

「奥さん。宮下って人物に心当たりありませんか?」

 俺と楓さんは、顔を見合わせた。


 午後3時半。クルマの中。

「いつも資金繰りがーって言いながら、顔がほころんでいたそうです。最近は、眉間に皺寄せて歩いていたとか。」

「自業自得だな。点、の1つが見つかった。」

 大曲先輩は、辻さんに電話した。スピーカーをオンにして。」

「宮下・・・下の名前は?」

「安治、です。安いに、治安の治。」

「了解。常務さんに確認する。」


 =====================

 午後4時半。捜査一課。第二応接室。

 辻さんが報告した。

「宮下安治。本名でしょうね。運転免許証番号が履歴書にあります。3ヶ月。試しに使ってくれ、と不意に面接に来たが、よく働いていた。慰安旅行の後、急に辞めると言い出して驚いた、と言っていました。」

「キーパーソンだな。」と蘭子が言うと、「群馬県の食肉加工会社ですが、乗っ取りに逢って倒産している。会社は、宮下食肉加工。」と、神道課長が言った。

 そして、関口係長が、「宮下家は心中しています。工場は群馬県ですが本宅は都内です。」と、報告した。

 そこに、ノックがあり、溝内課長が顔を出した。

「開光課長。ホシが出頭してきました。」

 ==========================


 午後5時半。捜査一課横の大会議室。『コメまみれ殺人事件』本部。

 取り調べ室から、溝内課長、倉田課長、神道課長、関口係長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。

 溝内課長、倉田課長、神道課長、関口係長はすぐに出て行った。

 管理官が説明した。

「ガイシャは、宮下安治。一家心中があった時、アメリカの牧場で修行をしていた。帰国後、色々調べて宮下食肉加工を倒産させた半グレと組んでいるゆめ精米KKに潜り込み、真実を知った。そして、犯行に及んだ。半グレの方は拘置所だから、断念したそうだ。お盆参りをした後、出頭した。悔いはない、と言っている。それと、最近のハム・ソーセージも中間業者が噛んでいる、と言っていた。世の中、金、金、金。イヤになるな。」


 午後7時半。眩目家。

「管理官が、あんなこと言うなんて。」

「明日でいいから、お前も宮下家の一家心中の報告書、読んでおけ。業務連絡、終わり。」


 次の、『無言の連絡』に息を呑んだ。

 新しいネグリジェだ。


 神様。


 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。

 溝内健児・・・生活安全課課長。


 関口寛也・・・捜査一課第三係係長。警部補。




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