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211/221

211.自転車泥棒殺人事件

「ママ。あそこ、変。」

「何?」

「ジャングルジムに首を突っ込んでいる女の人がいる。熱中症になるよ。」

母親は、近寄り、声をかけようとしたが、息を呑んだ。


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。


 ===========================

 午前9時。ある小学校近く。小さな公園。

 異変に気づいたのは、墓参りの帰りの親子だった。

 今はお盆。そして、盛夏。

 熱中症を回避するため、母親は、小学生の娘を連れ立ち、早朝に、墓参りをしたのだった。

「ママ。あそこ、変。」

「何?」

「ジャングルジムに首を突っ込んでいる女の人がいる。熱中症になるよ。」

 母親は、近寄り、声をかけようとしたが、息を呑んだ。

 ジャングルジムには、その女の人が、自転車のワイヤーロックが巧みに固定されていて、泡を吹いていたからである。


 母親は、迷わず110番通報をした。


 30分ほどして、機捜と鑑識が到着した。

 赤井警部補は、「通報して頂いた、物部さんですね。手短に済ませますので。発見された時、不審車両または不審な人物を見かけましたか?」と尋ねた。

「ご覧の通り、アパートの裏手ですが、暑いし、お盆ですので。」

「赤井。ちょっとバーナー使うわ。複雑過ぎるし、ダイヤル錠だし。」

 親子が帰った後も作業は続き、やっと遺体を動かせるようになった時、赤井の部下が言った。

「国会議員の桶田芙美子です。」


 =================

 ====================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『小公園死体遺棄事件』本部。

 管理官が説明した。

「ガイシャは、桶田芙美子。総理を訳の分からない理屈でやり込めようとして、いつも肩透かしを食らっている、霊之特選組の新しい党首だ。前党首同様、評判が悪い。議論の場なのに、その気が全くない。現場は、地元だそうだ。発見者の物部さんも、一票入れて損したと言っていたそうだ。井関さん。」

「秋野、スライド。」

 秋野が操作してスライドがスクリーンに映し出された。

「使用された自転車のワイヤーロックが12個。【私の不徳です】というステッカーが胸に貼り付いていた。智子。これ、百均?」

「百均じゃないけど、ネットで売ってるパーティーグッズ。」

「当て嵌め過ぎだろう。死因は絞殺。自転車用シフトワイヤーを使ったようだ。いずれにせよ、ホシは自転車に詳しい。」

「他人に恨まれるようなことばかりしているけど、惨殺するかなあ。」と、蒔が、つい言った。

 辻さんが咎めようとすると、「一理ある。政敵やネット民なら、裏があるかも知れないが。辻さん。霊之特選組だけでなく、他の党にも聞き込みして下さい。関口係長のチームを応援に出します。大曲達は、桶田家だ。」

「「「了解。」」」


 午後2時半。クルマの中。

「村松。今回も、ご近所聞き込みする間、妙な奴いないか注意してくれ。」

「了解しました。」

「今回も、何か秘密握って消されたんですかね?」

「そうとは限らない。まともな人間なら、あの人間凶器は、首絞めたくなる。」

「はあ。」


 午後3時。桶田家。

 父親の匡氏は、正座して待っていた。

「天罰です。私は、甘やかし過ぎました。長男長女は流行り病で他界しましたが、今際のいまわのきわに言いました。2人ともです。『あの子は、きっと問題を起こす』、と。当たっていました。党の副代表、代表になるにつれ、世間に疎まれる言動ばかりで。」

「はあ。えと・・・。」

「アルバムと葉書ホルダーでしたな。あの子は筆無精で、葉書ホルダーはありません。党の名簿ならありますが。」

「あ、それで結構です。飽くまでも参考資料で、犯人が捕まればコピーは処分します。原本は勿論、お返しします。」

「あなたは、独身?」

「幸い、去年、結婚しました。」

「そうですか。あの子は一生独身だったでしょうね。世間知らずで甘えん坊で傲慢で、他人のケチばかりつけて。下品です!!!!!!!」


 階下に降りて、桶田の部屋にいる先輩と合流し、クルマに帰った。


 午後4時。クルマの中。

「先輩。先日、見知らぬ自転車が家の前にあったそうです。そして・・・。」

「持ち主と口論になった、か。」

 大曲先輩は、溝内課長に電話をした。

 スピーカーをオンにした。

「課長。ウラが採れました。」「そうですか。少年課の者と迎えに行かせます。」

「実はな、眩目。餅屋係長のチームが探し出した少年でもあるんだ。」


 午後5時半。捜査一課横の大会議室。『小公園死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、溝内課長、越前屋課長、倉田課長、餅屋係長、関口係長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。

 溝内課長、餅屋係長、関口係長は、すぐに出て行った。

「ホシは、小山景太郎。高校2年生。先月、駅前で買物の途中で、自転車泥棒に遭った。父親から母親の危篤の電話を受けた後、自転車が無くなっているのに気づいた。駅の待ち合いタクシーはなかなか乗れなかった。結果、母親の死に目に会えなかった。色々調べて、参議院議員の桶田が無断借用、いや、置き引きして自宅に帰ったことが分かった。自転車は登録番号があり、小山の所有物であることは明白だ。警察に言っても仕方がない、と復讐した。ここに来る迄に自白したよ。一通り、これからの段取りは説明したよ。マスコミの対応は井関警視監に任せて、私は、小山の父親と会う。後はよろしく。」


 午後7時半。眩目家。

「見当、ついてたの?」

「ああ。真っ先にワイヤーロックを多く買った者を自転車屋協会に照会した。で、仮説を立てた。施錠を忘れた自転車がある。通りがかって丁度いいや、と乗る人間は『性格』が限られている。溝内さんにも越前屋さんにも声をかけた。そして、救急病院で危篤に間に合わなかったデータを出して貰ったよ、倉田さん経由で。」


「知らなかったのは、俺一人?」

「いや、村松にも言って無かったな。今、お前に話すのはな。『寝物語』にいいからさ。さ、本番、スタート。」


 俺はズボンを下ろされても無抵抗だった。

「いつもの」ことだから。


 トホホ。


 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。



 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。

 越前屋幸太・・・捜査三課課長。

 溝内健児・・・生活安全課課長。



 餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。

 関口寛也・・・捜査一課第三係係長。警部補。


 井関一郎・・・警視庁警視監。


 ※モデルになった事件はありません。

 そして、フィクションです。

 クライングフリーマン


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