209.誰が為に闘う
井関が確認して、すぐに赤井警部補に言った。
「赤井。遺体だ。殺人のな。」
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前9時。両国国技館近く。ハンバーガーショップ。
力士が前を通る時、ショップの脇のゴミ捨て場に人が突っ伏しているのが見えた。
残念ながら、体型的に確認に近づくのは無理がある。
そこで、馴染みの店員に声をかけた。
店員は、すぐ確認に行き、店長に報告した。
店長は、すぐ110番通報した。
15分ほどで、機捜と鑑識が到着した。
井関が確認して、すぐに赤井警部補に言った。
「赤井。遺体だ。殺人のな。」
「関取は、よくここを通るんですか?」と、赤井が尋ねると、「ハンバーガーが好きなので。あ、1時間前にも、ここを通りましたが、あの状態じゃ無かったです。」
「じゃ、開店前の1時間の間に遺棄されたことになる。まだ閑散とした時間帯だな。店長、鑑識と我々のの作業が終わったら、オープンしていいですよ。関取。それまで我慢してくださいね。」
「ごっつぁんです。」
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『ハンバーガーショップ死体遺棄事件』本部。
管理官が説明した。
「ガイシャは、週刊れいわ麻雀の編集長立石五郎。麻雀雑誌も最近はあまり売れない。グラビアなんかをオマケにつけても、あまり売れない。そこで、立石は、試しに現政権応援記事を追加したら、バカ売れしだした。何しろ昨今は政府の揚げ足取りばかり。政治家や、オールドメディアと呼ばれる新聞・テレビは、週刊誌ネタを前に出す。それで皆右に習え。取材は週刊誌しかやらないから、新聞などは『炬燵記事』なんて言われている。大曲くん、そんなに変わったのかね?」
「どんな業界でも『一番手』が一番美味しい。今のところ、れいわ麻雀の競合相手はいませんね。でも、並み居る先輩週刊誌が敵視しだした。邪魔と思って消そうとするヤカラがいてもおかしくない。」
「呼んだ?」と、神道課長が入ってきた。
「呼んでない、まだ。ああ。こんな時に神道がいれば助かるのになあ・・・って、ここにいるな。」と、蘭子が言うと、「へたくそ。今、隣国マフィアと繋がりありそうな半グレは2個。決まったら報告するよ。」そう言って、神道課長は出て行った。
「どこが煙たがっているのかも問題だが、どうする、開光くん。」
「副編集長が遺体確認に、生活安全課に来ているそうですから、まずは辻さん、副編集長の村上さんに事情を聞いてください。大曲達は、立石家だ。村松も行ってこい。」
午後2時半。クルマの中。
「正義なのかな、って思ってましたが、案外、商売の闘争ですかね?」
「あり得なくはないが、お前、身内の人に言う言葉、神経配れよ。」
「了解です。」
「でも、結果的に『正義の味方』ですよね。総理の一番人気のあるのが若者世代。麻雀なんか関係なく買うでしょう。すると、今までの週刊誌・新聞・テレビに飽き飽きしてSNSで情報を得ている世代なら。」と、村松が言った。
午後3時半。立石家。
立石華子は、もう喪服を着ていた。
「刑事さん。先にこれ、読んで下さい。」
華子が差し出したのは、所謂『エンディングノート』だった。
亡くなってからの、細かい段取りが書いてある。
最後の方にメモ欄があり、ぎっしりと書かれていた。
「俺は、最後には殺されるだろう。だが、徒花の足掻き、見せてやろうじゃないか。社員の退職金も稼がなくちゃいけないし。」
「ITは、私が教えました。普通の人なら、とっくに定年退職。麻雀仲間で造った雑誌で、メンバーの一人が作画も担当していました。大学の同級生なんですって。母は、父のこと、好きにさせてやってくれ、って言って亡くなりました。母が亡くなった後、父は終活するようになりました。あの対抗記事は、『売れないからヤケクソ』で書いたんじゃないんです。親会社も倒産しています。反政府運動には、心底対抗したかったんです。他のメンバーにエンディングノートを見せて、一人でやろうとしていたんです。村上さんは、こう言いました。『二抜け』出来るメンツいないじゃないか、って。」
『二抜け』とは、麻雀俗語で、五人以上でプレイする際に、『補欠』として抜けることを言う。
俺は、後から先輩に教えて貰った。
詰まり、四人は『一蓮托生』ということだ。
俺の邪推は、あっさり敗れた。
「大曲さん、玄関手前と門灯の裏側、塀の隅と庭の物置の影に防犯カメラがあります。全てチェックして下さい。父のPCとタブレットは台所です。もう一つのタブレットとスマホも預かっています。」
俺は、華子さんが胸元から出したタブレットとスマホを預かった。
そして、2階へ。
葉書ホルダーの葉書の一枚、アルバムの写真の一枚に赤丸が付いていた。
「これは?」
「犯人の、パシリです。昔、親会社で同僚だった、能美敬一郎です。共犯者です。」
先輩のところに行くと、先輩がグーサインを出した。
帰り際、華子さんは、大曲先輩に言った。
「喪が明けたら、妻にしてくれませんか、大曲さん。」
「こんな時に、悪い冗談を・・・。」
「考える時間はあります。タイプなんです。」
ええええっ!!
午後6時。捜査一課横の大会議室。『ハンバーガーショップ死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、神道課長、溝内課長、酒井優香、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
神道課長、溝内課長、酒井優香は、すぐ出て行った。
管理官は説明した。
「ホシは、二課でマークしていた、白滝クローKKの北宗男、週刊ぐみきゅんの志田耕助。白滝は、やはり、隣国マフィアと繋がりがあった。現政権を讃えるメディアがあってはいけない、と、ぐみきゅんに指令が下り、白滝に依頼して抹殺した。北は、土地勘があり、あのハンバーガーショップでバイト経験があった。遺骨が帰り次第、エンディングノートに従って、葬儀を執り行うそうだ。週刊れいわ麻雀は解散、だが、華子氏の後見人になるそうだ。大曲くん。告別式、行ける?」
午後7時半。眩目家。
「遺体引き取りのことで連絡したら、独身者を紹介してくれ、って言われたんだ。他の誰を押す?」
あ・・・そなの?
「ファザコンを埋めるパートナーが必要なんだってさ。酒井以上の変人だな。」
「だね。」
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
酒井優香・・・サイバー犯罪対策課職員。
溝内健児・・・生活安全課課長。
※「週刊誌」の世界や「麻雀雑誌」については詳しくはありません。
フィクションです。
※「徒花」とは、咲いても実を結ばずに散ってしまう花、または「むだ花」のことです。転じて、見かけは華やかであっても、中身や確かな結果を伴わない物事のたとえとしても使われます。
クライングフリーマン




