208.ほおずきは何の為に
だが、車内は異常だった。
男女は寝ていたが、『ほおずき』を幾つも咥えていて、白目を剝いて仰向けに寝ている。
リーダーの葛城ひかるは、素早く判断し、チームメイトに指示しながら、110番通報した。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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※お盆飾り: 先祖の霊が迷わず帰ってくるための目印・灯りとして、お盆のお供えに使われます。
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午前9時。ある公園の外。
出入り口付近に、自動車が駐まっていた。
中学校の草野球チームトワイライトのメンバーは出入り口付近に駐まっているので車内を覗きこんだ。
以前、同じようなことがあって覗き込んだら、所謂『カー〇ックス』の最中で、30分位は『鑑賞』した。
だが、車内は異常だった。
男女は寝ていたが、『ほおずき』を幾つも咥えていて、白目を剝いて仰向けに寝ている。
リーダーの葛城ひかるは、素早く判断し、チームメイトに指示しながら、110番通報した。
30分後。機捜と鑑識が到着した。
「君が葛城くんね。」
「現場保存、付近の誘導を行いました。」
葛城は、赤井警部補に敬礼した。
つい敬礼を返した赤井は、「ひょっとしたら、葛城巡査部長の?」と、尋ねた。
「はい。父の事件の時はお世話になりました。」
「そうか。完璧な処理だ。血筋だな。この辺は、駐禁だが、無視して駐車するクルマは多いの?」
「はい。注意して聞いて貰えないようなら、管理事務所に連絡しようと思っていました。」
「で、覗いたら、死体か。君たちが来る前に不審車両は?」
皆、かぶりを振った。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『違法駐車死体遺棄事件』本部。
管理官が説明した。
「ガイシャは、浅目新聞高瀬杏子、週刊あおはる横道新造。捏造記事をコンビして書きまくる。タカヨコと揶揄するSNSもある。現場は、小関記念公園と呼ばれる、小関池沿いの公園で、奇しくも、葛城巡査、いや、葛城巡査部長が殉職した公園だ。発見者が、その息子の明くんと野球チームだ。で、遺体は、ほおずきを咥えていた。井関さん、ほおずきって言えば・・・。」
「はい。お盆参りの花に使われます。先祖の霊が迷わず帰ってくるための目印・灯り、って言われています。漢字で鬼灯とも書きます。私はやったことがありませんが、実を鳴らして遊ぶ人も昔はいたようです。何かの符号なのかどうか・・・。」
「このコンビと言えば、例の『誹謗中傷』動画をAIで作ってすぐ削除して、まるで政府が他の党を誹謗中傷しているかのような印象操作をして、請け負った会社が白状してしまったことで、にっちもさっちも行かなくなった党を支援していましたよね。」と、蒔さんが言った。
「じゃ、これもトカゲの尻尾切り、かな?隣国が手下を処分した?」と、大曲先輩が言うと、「隣国と接点があったかどうかは、国際犯罪対策課では掴んでいない。だが、高瀬は妊娠していたことが解剖医の先生から報告があった。」と、入って来た井関警視監が井関さんに渡した。
「妊娠の報告書は、ついでに、と渡されたんだ。役に立つかな、父さん。」
「ああ、ありがとう。その後は円満らしいな。ニン!」
井関警視監は、すぐ出て行った。
「隣国との連絡はメールだろうな。どうする、開光くん。」
「どちらの会社もガイシャも洗いましょう。大曲達は、高瀬家に行け。横道家は餅屋係長の係に任せよう。浅目新聞の聞き込みは辻さん達に、あおはるは関口係長の係に行って貰いましょう。あ、村松。クルマは盗難車だったか?」
「盗難車だったそうです。」
午後2時半。クルマの中。
「尾行している奴がいるな。村松、振り切れ!!」
村松は、見事にスピンして、追跡車の真向かいに出た。
大曲先輩は、「ちょっと、寄り道だな。」と言い、ドライバーに手錠をかけた。
「頼まれただけだ。」と主張する男は、越前屋課長の名前を出した。
先輩は、越前屋課長に任せることにし、手錠のもう一方を街路樹にかけた。
「早く来てくれるといいね。熱中症になっちゃう。」と、大曲先輩は嗤った。
俺は、越前屋課長に電話した。
「いいよー。三木谷なら、案外素直なんだよね。」
午後3時半。高瀬家。
待っていた、母親の高瀬紀子は毅然としていた。
「じゃ、お腹の子供はオリているんですね?」
「そうなります。」
「分かりました。存分にお調べ下さい。ところで、貴方たちの上司って、キツい人?」
「え・・・まあ。」
「ウチの娘だけじゃないんだ、あんな言い方するオンナって、と思ってね。」
先輩と俺は、複雑な心境だった。
村松がいなくて良かった。
アルバムをさして、紀子氏は言った。
「この人が、最初の旦那、この人が最初のカレシ、この人が最初のカノジョ。」
え?
「早い話、だらしないのよ、あの人、お父さんの妾の子だし。」
クローゼットにも物置部屋にも異常は無かった。
書斎に戻ると、大曲先輩は尋ねた。
「紀子さんの今カレ、は横道さん、じゃ無いですよね?新田さん?」
「ピンポーン。こいつね。」
紀子氏は、俺が預かったアルバムを引ったくって、該当者を指さした。
先輩は、即撮影した。
午後4時。クルマの中。
帰っていた村松が報告した。
「あのイエだけまだバブルだって言ってました。あ、それから先輩。高瀬がほおずき鳴らすのを聞いた人がいました。」
「繋がったな、眩目。」
「繋がりましたね、先輩。」
その時、蘭子から電話があった。
俺は、スピーカーをオンにした。
「関口係長の話では、あおはるの記者以外にも、週刊近々の記者にも接触があると、あおはるで証言があった。それから、横道は、転職先を探していた、と餅屋係長から報告があった。」
「村松。3引く2は幾つだ。」
「1です。」
「だな。」先輩が嗤った。
午後6時半。捜査一課横の大会議室。『違法駐車死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、餅屋係長、関口係長、越前屋課長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
餅屋係長、関口係長、越前屋課長は、すぐに出て行った。
「ホシは、週刊近々の記者新田義男。新田は三角関係の精算だと言って2人を呼び出し、副作用を知った上でガイシャの高瀬にほおずきを服用させた。ほおずきが好きだった高瀬は油断した。横道と高瀬の両方の口にほおずきを入れたのは、カムフラージュだ。越前屋課長の話によると、空き巣のマエのある堀田敬三を警察の尾行に利用しようとしたのは、新田だ。弱みを握られていた堀田は尾行だけの条件で引き受けた。余計なことするから馬脚が現れた。横道の遺族は葬儀を検討中だが、高瀬家の葬儀は行わないらしい。まあ、我々には関係ないが。」
午後8時。眩目家。
おかゆを啜りながら、「酒井さんとなら気が合いそうだね、高瀬さん。」と言ってしまった。
「口説いたのか?」
「はあ?」
「15分後に取り調べだ。」
ええっ!!
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
越前屋幸太・・・捜査三課課長。
大仏俊吉・・・交通課(交通捜査課)課長。
深山俊哉・・・警視庁広報課課長。警部補。
餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。
関口寛也・・・捜査一課第三係係長。警部補。
井関一郎・・・警視庁警視監。井関権蔵の息子。
※モデルになる事件はありません。
クライングフリーマン




