204.ヘルメットは何の為?
「お父さん、工事の人って、休憩ないの?」
「馬鹿なこと言っちゃいけない。もうお昼なんだから、お昼休みでしょう。」
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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正午。晴海家。
晴海伸吾は、午前中、登校日で学校に行っていたが、1時間で終了。
ゲームセンターを冷やかして、帰宅した。
父の東吾は離婚調停中のため、父子家庭のような生活で、昼食のカレーライスを作っていた。
「お父さん、工事の人って、休憩ないの?」
「馬鹿なこと言っちゃいけない。もうお昼なんだから、お昼休みでしょう。」
「朝、出掛ける時、平地になった住宅の所にショベルカーがあって、運転する人が座ってたんだけど、動かなかったんだ。」
「まだ、作業始まっていなかったんじゃないの?」
「今日の授業は9時半からだよ。大抵9時位から始めるじゃない?」
「じゃ、仕事仲間待ってたんだよ、きっと。」
「でもさ。行く時と同じ姿勢でショベルカー動かした後がないんだ。ヘルメット被ってると逆に暑くない?」
父親の東吾は息子と、現場に行き、とんでもない勘違いをしていることに気が付いた。
平地は、出来上がっている。そして、ショベルカーにに乗っている人は、人形のようだった。
「もしもし。」
触って、人形が転げ落ちた。
いや、それは、人間の死体だった。
東吾は110番通報した。
40分ほどして、機捜と鑑識が到着した。
赤井警部補が晴海親子に確認した。
「じゃ、昨日の夕方は、ショベルカー自体無かったんだね、伸吾くん。」
「はい。学校行く時、初めて見たんです。」
「赤井。また、有名人だよ。」と、井関が言った。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『ショベルカー死体遺棄事件』本部。
管理官が説明した。
「ガイシャは、与党移民党の、元税務省事務次官一ノ瀬隼。今般、空港税関所長に転勤になったことで話題になった。遺体には、所持品があり、上半身ランニングとヘルメットは偽装だったことが分かっている。遺体は、脱水書状をおこした後に死亡。ですね、井関さん。」
「拘束バンドの跡があり、監禁されていたものと思われる。しかし。妙なモノをズボンのポケットに入れていた。秋野。」
秋野はスライドをスクリーンに映した。
「水と汗と泥で汚れていたが、こう読める。『国民の皆様に食料品税を大きく負担させ、自らが流用していました』紙だけ見たら自殺みたいだが、自殺する者が自らに拘束バンドはしない。」
「詰まり、与党が自殺させた、と思わせたい訳だ。手が込んではいるが、辻褄が合わない。自責の念があるなら、自宅で首を吊るな、大抵は。」と、言いながら神道課長が入って来て言った。
「税に最も影響力のある税関係調査長が交替したが、まだ影響力のある者がいた、と大騒ぎした。裏に何かあるよね?」と、神道課長が蘭子に媚びを売って見せた。
「口説くのはよせ。私は人妻だ。」
辻さん達が、笑いを堪えている。
「一番、人事異動をさせたく無かったのは、実は隣国だろう。その傀儡を始末した、ということは、政府への脅しかも知れない。辻さん達は、与党事務所に行って下さい。大曲達は、一ノ瀬家だ。村松は、ご近所だ。」
「「「了解。」」」
午後2時半。クルマの中。
「誰が得するんだろう?」
「お、眩目名探偵は、どう推理したのかな?」
午後3時。一ノ瀬家。
夫人の一ノ瀬静子は、和服美人だった。
お知らせがあったので、対談室に用意してございます。
対談室?
聞けば、税に関して、お仲間が時々来ていた、という。
俺は、アルバムを広げる際、テーブル下に盗撮用カメラを見付けた。
俺は、こういう時の為に大曲先輩に教えて貰った『裏技』を使った。
まず、ウェットティッシュを被せる。輪ゴムで止める。これだけだ。
夫人は驚いていた。
アルバムと葉書ホルダ-を預かり、書斎に戻ると、先輩は言った。
「奥様。データが多いようなので、PC丸ごとお借りできますか?明日、お持ちしますが。」
「よろしくお願いいたします。」
午後4時。クルマの中。
大曲先輩は、PCからHDDを取り外してから、保護カバーで包んだ。
そして、スマホで酒井に協力依頼をしていた。
「この党も、党員全員のPCを調べる必要がある。情報、ダダ漏れだ。単に増税の情報だけじゃない。今度発足する情報局の情報も、一ノ瀬がいることでダダ漏れだった。」
「じゃ、何故?」
「勘づかれた、という隠語を暗号ファイルで残している。そこで、酒井女史の出番だ。」
「村松、ご近所は?イケメンで優しくて、で評判。そして・・・。」
「そして?」
「公安がいました。」
「「ええっ!!」」
これには、俺も大曲先輩も驚いた。
公安課は、通常の刑事でも分からない位、地域に入り込む。だが、大きな欠陥がある。
通常の買物や、家のメンテなど行わない。仮住いだからだ。
映画やドラマのようにはいかない。
通常、俺達が公安課と呼んでいるのは、公安第一課だ。
「第七係の若尾史佳さんが、潜入していました。」
「村松は、知り合いなの?」大曲先輩が尋ねると、「向こうから声をかけてくれました。」と村松は応えた。
「一ノ瀬さんは、前前総理の志田さんの秘書をやっていたことがあります。何故、税務省事務次官が秘書を、と疑問を持たれ、隣国とのパイプ役ではないかということで、24時間体制で監視していたそうです。食料品税の減税を盛んに反対していたのが税調査会長でなく、元管領だったのかということも疑問に思われていました。そこで、財政務大臣の人事で、空港に行った。『トカゲの尻尾切り』だろうと、おっしゃっていました。」
午後5時。捜査一課。第二応接室。
「捜査一課のお手並み拝見、というところか。相変わらずお高いな。いや、お堅いな。」と、神道課長が発言した。
「ショベルカーと言えば、土建屋、土建屋と言えば、ヤクザ屋さんだ。あのショベルカーはレンタルで、盗難にあっている。少年が目撃したように、もう平地にする解体工事は終わっているんだ。まだ、紐も張っていない状態だから、簡単に搬入できた。コロシは、隣国がいっちょ噛みしているな。」と、新垣課長が言った。
「今、サイバー犯罪課で解析して貰っていますが、ハッキングされていた可能性があります。少なくとも、『企画段階』の『情報局』の情報は流れてしまっていると思います。」と、大曲先輩は言った。
「仕掛けるしかないな。」と、蘭子は平然と言った。
翌日。午前9時。一ノ瀬家。
俺と大曲先輩は、ノートPCを届けに訪れた。
「大切な遺品ですので、お気を悪くなさらないで下さいね。コンピュータウイルスが混入したかも知れないので、チェックしましたが無事でした。ご遺体は解剖があるので・・・。」
先輩の言葉に、「承知しております。懇意にしている葬儀社に連絡はしてあります。」と、夫人は応えた。
俺達は辞去すると同時に、控えている公安課に合図を送った。
公安課も尾行は得意だ。
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午前10時。神宮外苑。
公安課から連絡を受けた皇係長のチームが張り込みを始めた。
女子学習院跡に、一ノ瀬静子と待ち合わせしていたのは、外房会という反社組織だった。
幹部に声をかけたのは、新垣課長だった。
「飛んで火に入る夏の虫、かな?」
外房会は、捜査四課(仮)によって、一網打尽になった。
「アンタも来て貰うよ、元税務調査会長の矢沢平太さん。」そう言って、同席していた矢沢に新垣は手錠をかけた。
サイバー犯罪課の仕掛けたトラップで、『情報局』の情報を一ノ瀬静子が見付けたことにしたのだ。一ノ瀬静子が持参したPCには、そんな情報はない。そして、一ノ瀬静子には、ノートPCを持参して欲しい、と外房会名義のメールを送っていた。
黒幕は、矢沢だった。
午後3時。捜査一課横の大会議室。『ショベルカー死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、若尾史佳係長、皇係長、新垣課長、神道課長、蘭子、管理官が出て来た。
若尾史佳係長、皇係長、新垣課長、神道課長は、すぐに出て行った。
管理官が説明した。
「ホシは、元税務調査会長の矢沢平太、一ノ瀬の妻静子、外房会幹部の武藤五郎、大崎圭介。空港に『左遷』された一ノ瀬をグループは見限った。トカゲの尻尾切り、だ。監禁の末、グループの情報が漏れていないことを確認すると、既に解体工事が終わっている場所にショベルカーを移動、一ノ瀬を放置した。一ノ瀬は、『減税反対』したからじゃなく、用済みになったから消されたんだ。これから、記者会見に臨む。」
午後5時。眩目家。
ニュースでは、元税務調査会長の逮捕を大々的に取り上げていた。
早退した蘭子は、悩殺的なネグリジェを着て、「早く、鎮めて。」と、ウインクした。
眩目家の「黒幕」だ、と眩目真吉は思った。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。
酒井優香・・・サイバー犯罪対策課職員。
皇信也・・・捜査一課第二係係長。警部。
若尾史佳・・・公安部公安第一課第七係係長。
※公安に関するデータは、間違いがあるかも知れません。
お含み置き下さい。
クライングフリーマン




