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201.あんた誰?

「すっげえ。本物だ。」

「本物の起動捜査隊の赤井です。本物の里中歩くんと田中広務くん、かな?」


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。

 ===========

 午前10時。ある町のガソリンスタンド。

 市民プールに向かう途中の中学生が、午後から営業のセルフサービスのガソリンスタンドに、マネキン人形を見付けた。

 近寄ると、人形ではなく、男性の遺体だった。


「どうする?ひろむ。」

「1.あゆむが110番通報する。 2.俺が110番通報する。 どっちがいい?」

「2.」


 30分後。機捜と鑑識が到着した。

「すっげえ。本物だ。」

「本物の起動捜査隊の赤井です。本物の里中歩くんと田中広務くん、かな?」

「はい。最初、マネキンかと思ったんです。でも、チェーンがあるでしょ。トラックとかからマネキンが落ちて、あそこに行くかなあ、と思ったら、妙に『精巧』だから。」と、田中は股間を指さした。

「鋭い観察力と洞察力だ。警察官向きだな。でも、年齢的に今は無理かな。」

「死体、ですよね。あ、遺体か。」

「不審な車は見なかった?」

 2人は、かぶりを振った。


 =================

 ====================

 午後5時。捜査一課横の大会議室。『ガソリンスタンド死体遺棄事件』本部。

 管理官は説明した。

「ガイシャは、坂出隼さかいでしゅん。イーモスの社員という触れ込みで、石油産出国の戦争の煽りで、石油が6月で枯渇するとデマを流し、物議を醸した人物だ。石油の専門家の割りには前年度のデータだけで結論じみたことを言って、総理が1年以上の石油を確保したことで、引っ込みが付かなくなって、SNSで笑い者になった、でいいんだね、大曲君。」

「はい。当時、元会社からもそっぽを向かれた事から、実際は何の研究も実績もなく馘首されたのでは?と噂されていました。どうも、テレビ局に雇われた、似非専門家のようですね。で、先頃の地震で総理が出動する際にも、『何故かけつけない』『行ったら迷惑する』と、もう、あの思想丸出しで発言し、今度は『危機管理専門家』と肩書きを改めています。」

「問題はバックだよな。今回の事件も隣国が糸引いてる感じがする。今は、テレビ局と、坂出とを繋いだ半グレを探している。」と、神道課長が入って来て言った。

「詰まり、ガイシャは、『駒』で、今度は自分が『詰まれた』と見せたい何者かがいて、目的は、総理に逆らったから、総理派がやらかした、という印象を持たせたかった、ということだな。井関さん。ガイシャはかつらだったって聞きましたが。」

「左様。智子が以前から言ってたんですけどね。遺体は剃髪された形跡がないから、元からハゲ・・・スキンヘッドだったんじゃないかと。」

「その辺も、世間に恥をさらすことで、総理派の復讐と見せたかったのかも知れない。詰まり、逆だ。」

「以前の事件同様、悪印象の為に惨殺している、ということかね、開光君。」と、管理官は言った。

「そうなりますね。個人事業主で独居だから、遺体確認の協力をお願いします、と溝内課長からテレビ局のプロデューサーを呼んであります。辻さん達は、ガイシャの印象はどうだったか、という名目でテレビ局に調査に行って下さい。村松も同行しろ。男性警察官の格好でな。大曲達は、ガイシャのヤサが判明しているから、存分に調査しろ。」


 午後2時半。クルマの中。

「独居なんですか。」

「うん。両親は他界して、兄弟姉妹はいない。荼毘に付すのは親族だな。友人も少ない。あの性格じゃなあ。会社でも孤立していたらしい。馘首されたのは噂だけでもなさそうだ。実は、極秘で皇係長の係が、イーモスのOBを当たっている。馘首された事件の詳細は分からなかったが、坂出の上司が、坂出が馘首される前に自殺しているんだ。その件で捜査している内に、今回の事件だ。」

「ああ。皇係長は、自殺事件を扱うことが多いですもんねえ。じゃ今回の事件との関わりも・・・。」

「なきにしもあらず、ってとこか。あ、そうそう。もうすぐお盆だろ?」

「はい。お盆と言えば、終戦。終戦と言えば靖国参拝。坂出の奴、靖国参拝にも、偉そうに総理に『行くな』ってSNSで書いている、直接言えよなあ。」

「もろ、隣国思想じゃないですか。思い上がった挙げ句に、裸でぽい、ですか。」

「ま、そんなもんよ。特殊詐欺で言えば、『受け子』の一人、さ。」


 午後3時半。坂出のマンション。

 俺達は、張り番の警察官に挨拶をして、入室した。

 管理会社に『殺人現場かも知れない』と言ったら、素直に解錠してくれたらしい。

「始めたばかりの個人事業主にしてはいい身分だ。」

 でも、PCのある部屋と衣食住に使っていた。

 俺は、バスルームを先ず確認した。

 ここは現場じゃない。普通のバスルームだ。ベッドも汚れていなかった。

 天井裏を確認した。え?まさか。

 白い粉が見つかった。

 衣類を確認したら、クローゼットスペースは数着の衣類だけだった。

 俺は、大曲先輩に白い粉を見せ、蘭子に連絡した。

「了解した。」と、蘭子は返答した。

 俺が電話を切ると、先輩は画面を見せて、こう言った。

「これが、殺された原因だ。隠しファイルがあったんだ、ここに。」

 先輩は、ノートPCを持ち上げた。

 以前にもあった。

 SDはUSBと違って薄い。PCの真下に隠せば、あるいは裏に隠せば分かり辛い。

 以前の事件でも、そんなケースがあった。

 大曲先輩でないと発見出来なかっただろう。或いは、サイバー犯罪課に就職した酒井優香ぐらいか。

 SDのファイルで判明したのは、テレビ局のアナウンサー銭馬新子が「ただ者」ではない、ということだ。坂出は、白い粉の一部をバスルームに隠した。

 他は、別の場所だ。他が見付けられることを覚悟の上で、『保険』を取っておいた。

 考えている内に大曲先輩の電話が終わった。

「村松に、係長達と別れた後、銭馬の尾行を指示した。」


 午後4時半。クルマの中。

 先輩は、俺の横で電話をしていた。

「そうか。実は、辻さん達が聞き込みをしたとき、『アナウンサーでもプロデューサーより偉い人がいるんですね』と村松が尋ねて貰ったそうだ。彼らの反応から、カマかけた甲斐があったと言っていた。番組の実権を握っているのは、プロデューサーじゃない。銭馬だ。」


 午後6時。捜査一課横の大会議室。『ガソリンスタンド死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、神道課長、刑事部薬物銃器対策課の鮎川課長、皇係長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。

 神道課長、鮎川課長、皇係長は、すぐに出て行った。

 管理官が説明した。

「ホシは、銭馬新子、半グレむつみ会KKの岩見五郎、肝付健吾。『ヤク』が絡んでいたので、刑事部薬物銃器対策課に緊急逮捕して貰った。売買及び所持の現行犯逮捕だった。一方、こちらで起訴する坂出殺しだが、坂出と銭馬は『ヤク仲間』だった。坂出は、名草をキッカケに政治評論家になる筈だった。ところが、とんだ失態を演じた。最近もだ。銭馬に縁を切ると言われた坂出は、ヤクのことで逆に強請った。その結果がガソリンスタンド死体遺棄事件だ。テレビ局では、村松が勘づいたように、プロデューサー初めスタッフは、元MHKアナに忖度していた。だから、どこの馬の骨とも分からない坂出を起用していた。そして、坂出が元の会社イーモスで起こした事件もヤク絡みだった。坂出の上司は自殺に見せかけて、むつみ会が殺した。坂出は、まさか自分もむつみ会に殺されるとは思っていなかっただろう。だが、眩目くんと大曲くんが見付けた『遺産』で、捜査は一気に進んだ。これから記者会見に行く。」


「ハゲはハゲなのよ。」智子は、そう言い放った。

 誰も理由は聞かなかった。


 午後8時。眩目家。

 おにぎりを食べ終わって、

「また、村松が活躍したね。才能見込んで採用したの?」と、つい言ってしまった。


「これから、お前の才能を見せて貰おうか。」

 しまった。


 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 溝内健児・・・生活安全課課長。


 皇信也すめらぎしんや・・・捜査一課第二係係長。警部。

 鮎川哲太・・・刑事部薬物銃器対策課課長。警部。


 ※実は今回、麻薬関係で逮捕するのが『刑事部薬物銃器対策課』だと初めて知りました。

 以前は、組織犯罪対策部内の「組織犯罪対策第五課」が担当していたそうです。

 クライングフリーマン



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