199.実は偽物
運転手はヘッドライトで、その物体を確認した。
「飛び込み自殺か?」父親は言った。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午後9時。ある町の国道。
贔屓のチームのナイターを観に行っていた親子が、駅でタクシーを拾って自宅に帰る途中だった。ゲリラ豪雨の為、試合は早めに中止になったので、父親とタクシーの運転手は、その話題に夢中になっていた。
タクシーは、何かに乗り上げた。
運転手はヘッドライトで、その物体を確認した。
「飛び込み自殺か?」父親は言った。
「違うよ、父さん。誰かが動いた様子は無かった。それに・・・死体遺棄って奴だよ、運転手さんは悪くない。」
少年の言葉に励まされたのか、ドライバーは本部に連絡をした。
「会社から110番してくれます。それと、貴方方の代車を手配して貰いました。このクルマは、すぐには動かせないし。」
30分ほどして、機捜と鑑識が到着した。
今夜の担当は、赤井警部補だった。
「今中有紀くん、ヘッドライトを横切る人は見なかったんだよね。」
「はい。遺体は道路上に放置されたんです、有紀くんの推理通り。今、調べていますが、街灯が故意に壊されています。死体遺棄事件です。」
赤井は、簡単な質問の後、親子を代車のタクシーに乗せて見送った。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『国道死体遺棄事件』本部。
管理官が説明した。
「発見者は、タクシードライバーと、そのタクシーに乗っていた客の親子。ガイシャは稲光昭明美。先日、『食料品税反対』の立場をひっくり返したことで、公約違反だと騒がれていたが、一昨夜、姿を消した。失踪も不可解だが、井関さん。」
「DNA鑑定をしなければいけないが、ガイシャは『男』だ。切るのはタ〇国とかで簡単に出来るかも知れないが、付けるのは簡単じゃない。」
「井関さん。稲光議員は結婚していますよね?確か息子と娘が。」と、蒔が質問した。
「SF的なことを言えば・・・ま、いいか。DNA鑑定を待とう。男は産めない。基本的に。」
「タクシードライバーも親子も全裸のガイシャを見ている。メガネをかけている印象が強いし、赤井もまさか、と思ったそうだ。一応、ご亭主の劉邦氏に遺体確認に来て貰うことになっている。」
「取り敢えず、辻さん達は、失踪当時のことを移民党に確認してください。」と、蘭子は言い、「大曲達は、劉邦氏に確認してくれ。」と言った。
午後2時。生活安全課。応接室。
溝内課長が、自らお茶を運んできた。
「どうでした?」
「確かに、明美に似ている。だが、ご存じの通り明美は女です。ジェンダーとかどうとか、そういう法律に拘っていたことは事実だが・・・。」
「落ち着きましょう、劉邦さん。深呼吸3回してから、大丈夫、大丈夫、大丈夫、と3回言ってみてください。」
大曲先輩は色んな技を持っているなあ。
10分後。落ち着いたようなので、大曲先輩は言った。
「遺体は生物学的に男性で、性転換手術の跡は見当たらない、と解剖医の先生の所見があります。そして、ご主人との間に1男1女がいらっしゃる。そうですよね?」
「はい。」
「詰まり、遺体は、奥様のそっくりさんか、奥様のきょうだい、ということになる。いずれにせよ、国会議員で失踪中の方は、まだ見つかっていない。きょうだい、の話は?」
「初耳です。そっくりさんとおっしゃったが、例えば阿寒国で整形美容の手術を受けたとか。」
「今、頭蓋骨再生で確認しています。表は弄れても、骨、頭蓋骨は弄れないそうです。」
「分かりました。失踪届は下げないことにします、引き続き捜査してください。」
「つきましては、お宅にお伺いしてもよろしいでしょうか?失踪原因を追及する為にも。」
「しかるべく。」
あ。劉邦氏は、弁護士だった。
午後3時。稲光家。
書斎のPCは大曲先輩に任せて、俺はアルバムを見せて貰った。
「あれ?肩組んでる。」
「ああ、昔は、今の総理と仲良かったんです。でも、暗殺された元総理は、現総理を可愛がっておられた。だんだん考え方がひねくれるようになってしまって・・・お恥ずかしい。」
「あまり、私見は挟めないんですが、ホシは、犯人は、それを知ってて犯行に呼んだのかも知れませんね。奥様は、選挙前とは違って食料品税の減税に反対の立場ですよね?」
「はい。犯人は、総理を奥様を殺した犯人に仕立てる積りだったかも知れません。」
「どうして?」
「詳しい事は申し上げられませんが、最近、『濡れ衣』を着せようとする事件がありまして・・・。」
書斎に戻ると、大曲先輩は、「ホシは、濡れ衣を着せようとしていたらしい。脅迫文がある。盾に取られたのは、政府の防衛情報だ。」
あ。防衛大臣をやっていた時期のある議員だった。
午後5時。捜査一課横の大会議室。『国道死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、溝内課長、神道課長、新垣課長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
溝内課長、神道課長、新垣課長は、すぐに出て行った。
管理官は説明した。
「ガイシャは、DNAが稲光議員とは別の人物だった。詰まり、『見せしめ』の為の人形だ。議員が誘拐されたとして、タイムリミットまで僅かだ。劉邦氏または移民党に身代金要求があるかも知れない。和泉係長のチームを双方に待機させた。また、反社半グレの動きを監視するように神道課長、新垣課長に指示した。根比べだ。」
―「捜査一課ですけど、200」につづくー
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
溝内健児・・・生活安全課課長。警部補。
和泉方助・・・捜査一課特殊犯係係長。警部補。




