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198/224

198.無理っす

授業を終えた講師は、生徒達に、試験のプリントを返していた。

「先生。無理っす。」


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。

 ===========

 午後9時。ある町の予備校。夏期講習。

 授業を終えた講師は、生徒達に、試験のプリントを返していた。

「先生。無理っす。」

「町谷。一週間でもうねをあげた?早過ぎるだろ。志望大学、どこだっけ?」

「そいう話じゃなくって。」

 町谷が指さしたのは、窓だった。

 ん?

 講師の武田はおかしな風景を見た。

 女子生徒が窓の外から、こっちを見ている。

 ここは・・・3階?


 急いで窓を開けた。

 ショベルカーが窓の外にある。

 え?

 よく見ると、女子生徒は巧みにショベルカーに固定されている。

 震える手で、武田は110番通報した。


 30分後。機捜と鑑識が到着した。

 テレビで観たことはあるが、流石に警察の機捜とやらは早い。

 武田は、幸いなことに、予備校の近くのアパートに住んでいる。


 ショベルカーを専門業者が操り、下ろしている。

「発見者は・・・夏期講習利用者の生徒で町谷と言います。高校の後輩に当たります。遅いので、家に帰しました。セキュリティーがって言われそうですが、門は開きッぱなしです。」

 武田は、担当の刑事に話した。


 =================

 ====================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『予備校死体遺棄事件』本部。

 生活安全課の溝内課長、捜査二課の神道課長が来ていた。

 管理官が説明した。

「ガイシャは、夏期講習利用者の陣内亞矢子。発見者は、同じく利用者の町谷仁志。何気なく外を見ると、ガイシャが見えた。その方向に学舎はない。幽霊かと思い、講師の武田に報告した。窓を開けて消えたら怪談だが、そこには、ショベルカーがあった。レンタルの盗難車だ。今、事務長が来ているそうだから、後で私が事務長に接見する。溝内課長。」

「実は、予備校みやびは、昨年、幽霊騒ぎがあった学校です。利用者父兄から、夏期講習のキャンセルが続いているそうです。」

「またまた、隣国の影。あの土地買収に隣国系の企業が動いているらしい。臭わない?」

「お前は、いつも臭うな。コロン買ってやろうか?」と、蘭子が揶揄った。

「辻さん達は、予備校の宮井事務長と一緒に予備校に。大曲達は、陣内家に。」

「「「了解。」」」


 午後2時半。クルマの中。

「予備校って言うと、受験関係ですかね?」

「恐いな。」

「僕は、公私ともに恐い人がいます。」

「知ってる。」


 午後3時。陣内家。

 俺達が行くと、母親の陣内公子は、玄関に倒れていた。

 そこへ、聞き込みから戻って来た村松がやってきた。

「村松。救急セット。眩目。水、水。」

 30分後。

 公子は正気を取り戻した。

 エアコンの正常な音が聞こえる。

 村松が近所から【梅干し】を貰ってきていて、それを口に含ませてから、先輩が冷蔵庫の経口補水液を飲ませた。

「良かった。お母様は、緊張のあまり、脱水症状を起こしたんですよね。ご遺体の身元確認は、学校と予備校で写真で済ませてあります。ご遺体は、解剖が済む迄待って下さい。」と、いつものように説明した。


 俺は、世間話をしてから、アルバムと仲の良い友達を確認した。

「大下圭子さんと小山紀子さんですね。どの人かな?」

「この人と、この人。あ。」

「どうされました?」

「小山さんの方は、一昨年自殺されました。」


 階下に降りると、大曲先輩はグーサインを出した。

「心配だって言うから、村松には残って貰うことにした。」

「はい。よろしくな、村松。」

「はい。」


 午後5時。捜査一課。第二応接室。

 俺達が方針を相談していると、溝内課長から連絡が入った。

「発見者の町谷くんと武田先生が何者かに拉致されたらしい。」

 5分と経たない内にノックの音があった。

 村松が開けると、そこには、警備課の小宮課長が立っていた。

「ここで良かったですか?」

「何か、あったのですね、小宮課長。」と、蘭子はスマホと小宮課長本人に言った。

「拉致に関してのタレコミがありました。」

「溝内課長、拉致は、市民からの通報ですか?」と、蘭子はスマホに向かって言い、スピーカーをオンにした。

「市民からの通報です。あの予備校の予備校生です。」

「タレコミは、その拉致したクルマのナンバーです。たまたま見かけて記憶力がいいから、と言って切れました。どうやら海外の使い捨てスマホのようです。」と、小宮課長は溝内課長に聞こえるようにスマホに向かって言った。

「開校課長。例の、ショベルカーで死体が発見された案件と関係がありそうですね。今、Nシステムで検索してはいますが。盗難車かも知れません。移動が分かれば、次の手が打てます。」

「指名手配しよう。」と、管理官が応えた。


 午後7時。眩目家。

 蘭子は何故か天麩羅を揚げていた。

 村松がレシピを書いていた。

 本当に、あいつは器用な奴だ。

 パワハラで追い出されていたら、警察に取って、大きな損失だ。

 蘭子のスマホが鳴動した。画面を見ると、管理官シマとなっている。

「開光蘭子のスマホです。」と言って、俺が代わりに出て、スピーカーをオンにした。

「盗難車が、横浜、関内駅の近くで発見された。神奈川県警に協力を申請した。単なる誘拐の場合は、町谷くん宅に連絡があるだろうと判断して、特殊犯係の和泉警部補に連絡をしておいた。明日。また打ち合せしよう。」

 何で蘭子が電話に出ないかは、志摩管理官は尋ねなかった。流石だ。


 芋の天麩羅を頬張りながら、蘭子は、「事件解決まではお預けだ。ワン、って言え。」と強要した。思わず、「ワン!」と言ってしまった。俺って、犬だったんだ。


 翌日。捜査一課。第二応接室。

 和泉係長から報告があった。

「町谷くん宅にが逆探知を設置、待機しましたが、連絡なし。武田先生はアパートで独居ですが、張り込みはさせています。開光課長とお仕事出来るのは光栄です。」

「ファンレターは要らないよ。それと、口説くなよ。私は亭主持ちだ。」

 村松がクスクス笑っている。

「方向性が違うのかも。」

「どういうことだ、大曲。」と、蘭子の目が光った。

「予備校にショベルカーを横付けした時点で、違和感があった。」

「詰まり、拉致・誘拐の強請る相手は予備校か。」

「呼んだ?」と言いながら、神道課長が入って来た。

「宮井事務長さん。横領の穴埋めにサラ金に手を出している。岡道商会だ。岡道商会の支部は、横浜・関内だ。」

「よし、奇襲しよう。四課も応援して貰うか。」

「ええ?舞ちゃんも来るの?マンモスうれp。」

「似合わない。」と蘭子が言い、村松も大曲先輩も「似合わない」と言った。

 滑った。


 午前11時半。横浜・関内。

 神奈川県警、警視庁捜査二課、警視庁捜査四課(仮)の強行突破で、岡道商会は一網打尽になった。


 午後3時。捜査一課横の大会議室。『予備校死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、神道課長、小宮課長、溝内課長、和泉係長、蘭子、大曲先輩、管理官が出て来た。

 神道課長、小宮課長、溝内課長、和泉係長はすぐに出て行った。

 管理官が説明した。

「ホシは、岡道商会の社員、武藤勘吉、木村英介、轟三太。奴らは、予備校事務長の宮井が督促に応じないので、強硬手段に出た。ガイシャの陣内亞矢子は、宮井の愛人だった。陣内を殺し、予備校の明け渡しを要求した彼らは、今度は武田先生と町谷くんを誘拐し、予備校の明け渡しを要求した。宮井事務長の義兄が予備校のオーナーだ。彼らが欲しかったのは、あの予備校の物件だ。黒幕は那珂国マフィアのようだが、それは、これからの捜査だ。記者会見に行ってくる。本部解散。」


 午後5時。

 溝内課長から、遺体引き渡しの許可が出た、と蘭子のデスクに電話が入った。

 蘭子は、大曲先輩に、遺族に報せるように命じた。但し、事務長の愛人だったことは伏せて。先輩は、ガイシャの『愛人』が絡んでいることは掴んでいた。ガイシャと、友人大下さんとのメールを通じて。そのこともお母さんには内緒にしていた。


 午後7時。眩目家。

 夕食の後、小宮課長から頂いた、パイナップル缶詰を開けて、2人で食べた。

「事件、解決したな、真吉。」

「ということは・・・。」

「パイナップルより甘い物がいいな。」

 そう言って、俺の耳を引っ張って、風呂場へ。


 やっぱり。


 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。


 小宮孝・・・警備課課長。

 溝内健児・・・生活安全課課長。


 和泉方助・・・捜査一課特殊犯係係長。警部補。


 名も無き殺し屋・・・???




予備校夏期講習は、自身の体験からです。

クライングフリーマン

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