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197.MHK集金人詐欺事件

凶器はそこにあった。

バタフライナイフを刺され、自転車に寄りかかったから、体重でナイフをめりこませた形になる。


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。

 ===========

 午前10時。ある町の公民館前。

 補欠選挙の準備で来た職員が、自転車に寄りかかっていたと思っていた男が自転車に突っ伏しているのを発見した。

 職員浅川は、慌てて110番通報をした。


 30分後。機捜と鑑識が到着した。

 凶器はそこにあった。

 バタフライナイフを刺され、自転車に寄りかかったから、体重でナイフをめりこませた形になる。

「取り敢えず、浅川さん。入館禁止にしてください。」と、赤井警部補は指示した。

「了解しました。」



 =================

 ====================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『MHK集金人詐欺死体遺棄事件』本部。

 生活安全課の溝内課長、捜査二課の神道課長が来ていた。

 管理官が説明した。

「ガイシャは、来栖竜子。長身で細身なので、パット見は男にも見えなくもない。MHKの受信料は、知っている者も多いと思うが今は下請けの集金人はいない。MHKの社員が集金している。代行業者を名乗り、領収書まで用意している詐欺集団がいる。神道課長。」

「要は、半グレの下請け。オレオレ詐欺で警察官役や弁護士役まで登場したが、その変形。オタクのお孫さんが滞納しているので、迅速に支払いましょうって高齢者を狙う。その案内役のオンナがガイシャだった。着ていた制服は、以前の集金人のものを再現したレプリカ。指名手配していたが、こんな形でお目にかかるとはね。」

「生活安全課にも、よく問い合わせの電話があります。『何かおかしい』って。」と溝内課長が言った。

「じゃ、神道。身元は分かっているんだな。」

「そういうこと、ら・・・開光課長。」

「じゃ、辻さん達は、周辺の住宅の目撃情報を。公民館は大きな道からは離れているが、市営住宅他の住宅地への抜け道に当たるらしい。大曲達は、来栖の家に。溝内さん。」

「今、遺体確認を終えて、生活安全課に待たせています。来栖の母親です。一緒に向かってください。」と溝内課長は大曲先輩に言った。


 午後3時。来栖家。

 溝内課長は、ガイシャの母である来栖松江を送った後、帰って行った。

 松江は、アルバムを開いて、こう言った。

「この子が、竜子と付き合っていた荒井忠太くん。悪い仲間に誘われて、オレオレ詐欺の受け子をして・・・仲間は警察に捕まって、荒井くんは惨殺されました。暫くして、ここに一人住まいをして、オレオレ詐欺の受け子をやっていたようです。何とか止めさせたかったけど・・・。」

「待って下さい。荒井君は亡くなっているんですよね。」

 俺は、不審に思ったが、言葉を待った。

「私は、会社の命令で、北海道の社員寮の寮母をしていたんです。ショックから立ち直ったと思っていたら・・・ある日。『なんてことしてくれたんだ』という書き置きが郵便受けに入っていました。

 俺は、その紙片が直筆であることを確認して、ビニール袋に入れ、秋野に連絡した。

「それに触った人は?」「投函主、松江さん、俺。」

「了解。持ち帰ってください。」


 大曲先輩が待っている、元勉強部屋は、クローゼット同様きちんとしていた。オレオレ詐欺の受け子をする程の不良とも思えない。

 先輩に話をすると、「あらいってのは、新しいの方でなく、荒々しいの方?」と尋ねてきた。

 先輩は、神道課長に電話をした。スピーカーをオンにして。

「あらいってのは、新しいの方でなく、荒々しいの方?OK、特定出来そうだ。」

 クルマに帰ると、村松が待っていた。

「先輩。来栖は『いい不良』だったみたいです。」

「分かるように言えよ。」

「高校時代は、とても女子高生らしい女子高生だったそうです。ご近所の話では。ところが、お母さんが単身赴任して暫くしてから不良っぽくなったって言うンです。で、オレオレ詐欺のグループが出入りするようになった。」

「繋がったな、眩目、村松。お前達は最高の後輩だ。」

「「ありがとうございます。」」


 午後5時半。捜査一課横の大会議室。『MHK集金人詐欺死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、溝内課長、神道課長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。

 溝内課長、神道課長は、すぐ出て行った。

 管理官が説明した。

「ホシは、公民館職員浅川要、半グレの富山浩一。『荒井忠太殺し』の真相究明に、来栖竜子は、自らを囮にして調べていた。浅川と富山がグルだったことを突き止めた来栖は、『返り討ち』に逢った。だが、それを予感していた竜子は、母親の鏡台に、証拠になるSDを隠した。そのデータには、竜子が関係した特殊詐欺の被害者データもある。そSDのありかは、大曲くんが、暗号を解いて突き止めた。暗号のパスワードは、『CYUUTA』だった。」


 午後7時。眩目家。

「第一発見者を疑え。ミステリーの定番だな。私のプリン、食べたのは、お前だな。」

「推理しなくても、分かるでしょ。明日、お通夜、行く?」

「他に用がなきゃな。警察官になれば良かったのにな、竜子。」

 いや、それは・・・。

「今、いや、それは・・・って思っただろ。」

「あ。プリン、ごめんなさい。」

「お供えは、プリンでもいいかな?」


 はあ?


 ―完―

 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。

 溝内健児・・・生活安全課課長。



 ※「題材」になるような事件は起こっていません。オリジナルです。

 クライングフリーマン




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