196.生きるも死ぬも
開場前の僅かの時間に、巡回してきた警備員が死体を見付けた。
式場のスタッフみたいだが、少し違う。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前10時。ある町の結婚式場。未来希望会館。
開場前の僅かの時間に、巡回してきた警備員が死体を見付けた。
式場のスタッフみたいだが、少し違う。
鼻に詰め物があり、明らかに息をしていない。
式場の支配人に届けると共に、警備会社に連絡。警備会社から警察に連絡をして貰った。
「ウチの葬儀会館部じゃないな。制服が似ているが・・・まあ、現場保存しないとな。」
30分で機捜と鑑識が到着した。
「発見したのは、警備員さん?」
「はい。平和共同警備の山下です。赤井さん。」
「ああ。その後、怪我は・・・。」
「腱鞘炎が残りましたが、今はほぼ大丈夫です。あ。式場支配人の名越さんです。」
「名越です。ウチの制服に似ているが、ちょっと違う。葬儀会館部の部長が、こちらに向かっています。」
「じゃ、オタクの系列の来征会館じゃなくて、ヨソの葬儀会館のスタッフですかね?」
「赤井、これ。袖口に引っかかっていた。」と、井関が名刺を渡した。
名越が横から見て、「異世界会館なら、13キロは離れていますよ。」と、言った。
その時、来征会館の部長の平井が到着した。
「異世界会館の制服。明神くん・・・。」
「「「知ってるんですか?」」」
皆は異口同音に叫んだ。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『葬儀会館スタッフ死体遺棄事件』本部。
倉本課長と酒井さん、そして、神道課長が来ている。
管理官が説明した。
「ガイシャは、明神睦子。異世界会館という葬儀会館の接待スタッフだ。発見された現場の未来希望会館の系列の来征会館の営業スタッフだった女性だ。来征会館の平井部長によると、顧客データの流出があり、懲戒解雇されたようだ。同じ業界に未練があったのだろうな。職種は違うが業種を変えて、あ、違うな。業種は同じだが職種を変えて再就職した。で、何らかのトラブルで、以前の職場に遺体になって、逆戻りした。井関さん。」
「遺体は、死後20時間。保冷剤で持たせている。鼻に詰め物しているのは、遺体に施す詰め物だ。正に、ガイシャが遺体に施していたのと同じだ。」
「接客スタッフは、昔と違って流行り病以降、会館で基本的に調理せず弁当配布で、遺体に施す洗浄・保冷・清拭が多い。ガイシャは、苦にせず真面目にこなしていた、と平井部長が言っていた。」
「現場は現場だが・・・辻さん、やはり異世界会館に聞き込みしてください。来征会館の方は餅屋係長に行って貰う。倉田さん、酒井さん。情報漏洩について?」
「業者は、きちんとした区分けはないですが、未来希望会館のように、結婚式・葬式両方行う会社のタイプと、異世界会館のようなタイプがあるようです。両方やる未来希望会館は、葬儀会館ぶの来征会館を別の敷地に建てて、客が混同しないようにしています。で、双方のタイプは、同じタイプの会社とは交流があっても、違うタイプの会社とは交流がなく、会社の支店本店間のみのシステムで独立しています。」と、倉田課長が説明した。
「ややこしいから、Aタイプ、Bタイプって言うわね。未来希望会館がAタイプ、異世界会館がBタイプ。AタイプからBタイプ、BタイプからAタイプにはハッキングしにくいの。分かる?眩目くん。」
「何となく。」
「常識的な考え方からすれば、管理官や平井部長の感想のように、業界に未練があるから再就職した、と思えなくもない。だがしかし。ガイシャが例えば隣国スパイだとしたら?」
「酒井さん。トラブルって、情報漏洩の失敗ってことですか?」と、大曲先輩は言った。
「流石、開光部長の元カレ・・・開光部長の右腕ね。」と言って、酒井さんはウインクした。
「今、ウチの部下が、異世界会館でハッキングの痕跡を洗っています。」と倉田部長が説明し、酒井さんは、「ハッキングにもゲソコンがあるのよ、智ちゃん。」と言った。
「成程。」と、智子は頷いた。
いつの間にか、仲良くなっていたんだ。
「言われて調べてみたら、隣国から半グレに接触があったのが2軒。今、調べている。その内、尻尾、出すだろう。」と、神道課長は言った。
「取り敢えず、大曲達は、ガイシャ宅に向かってくれ。お母様がお待ちだ。マダムキラーの大曲を。」と、蘭子は言った。
午後2時半。クルマの中。
「「ハッキングにもゲソコンがあるのよ、智ちゃん。マダムキラーの大曲を。ストレス貯まるなあ。」
「まあまあ。」
「まあまあ、何?」
「いや、別に。
午後3時半。
ご近所に挨拶に行ってから、俺達は明神家に到着した。
すると、睦子の母美織が梁にロープをかけ・・・俺達は慌てて下ろした。
「お母様。深呼吸しましょう。3回。」
深呼吸が終わると、先輩は言った。
「今から、魔法の呪文を教えます。順番、順番。これを3回言いましょう。落ち着かないようなら、もう一度、深呼吸。」
「順番、順番。順番、順番。順番、順番。刑事さん、何の順番?」
「はい、落ち着きましたよ。1番目に、娘さんが親しかった人を見付けます。2番目に、その親しかった人と最近連絡を取り合ったかどうか、確認します。3番目に、娘さんと、その人とに何か事件があったかどうかを我々が調べます。それから、手順を踏んでいって、犯人逮捕、自供、起訴。そして、裁判。さ、1番目をやりましょう。眩目くん、お願いね。」
「「はい。」」
美織さんがアルバムを必死に探して、胴元孝という人物を見付けた。
異世界会館の元営業主任だ。
胴元は、係長の三木が病死したのに、自分の責任だと言って退職した。
その後、情報漏洩が発覚した。
美織さんは、思い出してくれた。
俺は、書斎で待っている大曲先輩に報告した。
「辻さん、胴元孝という人物です。あ、ありましたか、ゲソコン。」
午後5時半。捜査一課横の大会議室。『葬儀会館スタッフ死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、神道課長、倉田課長、酒井さん、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
管理官が説明した。
「ホシは、神道課長が目をつけていた半グレの岡市商会の胴元孝、合田権太。酒井さん達が目星を付けたように、ガイシャの明神睦子は、Bタイプなのに、Aタイプと同じハッキングをしようとして失敗した。隣国マフィアは失敗に厳しい。胴元と合田に始末させた。復讐的な考え方をする者は、凡ミスを犯しやすい。却ってヒントを残す結果になった。サイバー犯罪課から、どちらの会社にも指導が入る。お母様には気の毒だが、睦子は立派に犯罪者だった。」
午後7時。眩目家。
「真吉。」
「何です?」
「順番、順番。順番、順番。順番、順番。」と言いながら、衣類を投げ捨てる蘭子。
ちょっと、違うと思うけどなあ。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。
酒井優香・・・サイバー犯罪対策課勤務。
餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。
※葬儀社の詳細は、詳しい資料に基づいておりません。フィクションです。
クライングフリーマン




