195.臭い人
大便用の個室から何か臭う。
大便の匂いでも無い。
映画が終わって、またトイレに来た二人は、まだしまっているのに気づいた。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前9時。ある町のシネコン。
開場前の僅かの時間に、とスクリーゾーンより前のトイレにやって来た少年二人秋山彰と長田圭が、違和感を覚えた。
大便用の個室から何か臭う。
大便の匂いでも無い。
映画が終わって、またトイレに来た二人は、まだしまっているのに気づいた。
そこへ、便意を催し、やってきた少年が、ドンドンと扉を叩いた。
応答する人もいれば、五月蠅いな、と思う人もいるだろう。
だが、少年が何度も叩く内、扉が外開きの場合もあるが内開きの場合もある。
扉が外に開いたから、外開きなんだな、と秋山が思った瞬間、男の人が倒れ出て来た。
便意の塊の少年は、尻餅をついて、ズボンを汚した。
「110番する?」と、長田が秋山に尋ねた。
「この場合はスタッフさんだな。」秋山は外に走り、チケット確認係のおねえさんに言った。
「110番、お願いいたします。」
30分後。機捜と鑑識が到着した。
「えっと、発券してくれたのは、秋山くんと長田くんね。」と、赤井警部補は確認した。
「はい。」
「変だな、と思ったのは?」
「映画の前も終わった後も扉が閉まっていたから。スクリーンとすクリーンの間にあるトイレは個室が2個あるけど、入口前の、ここのトイレは個室1個なんです。それで故障中かな?と思ってたけど、うんちの臭いしないし、変な臭いしていたから。それで、彼がドンドン叩いている内に開いたんです。
「君たちが最初見たのは?」
「9時くらいかな?」
「で、発見してスタッフさんに届けた。」
「「はい。」」
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『シネコン死体遺棄事件』本部。
管理官が説明した。
「ガイシャは、腐乱はしていなかったが、いつ運ばれたかは分からない。有名人らしいから。誰かは判別出来たが。村松、後藤田さんって有名なのか。」と、管理官は村松に尋ねた。
「総理に向かって、『五月蠅い、話が長い。もういい。』って切れちゃって。自分が質問して答えて貰ってるのに、何様よぉ、って感じで。次の選挙で『煉獄行きナンバーワン』にノミネートされています。あ、落選候補ってことです。」
「成程。被疑者は多そうだな。井関さん。凶器は?」
「果物ナイフ。刺さったままでした。100円均一ものです。だな?智子。」
「父さん。私が安物使ってるってばれちゃうじゃない。」
「あ・・・すまん。メーカーを特定しにくいってことです。」と、井関さんは言訳した。
「あのー。巨岩党の副代表の方が見えてますけど。遺体確認に。」と溝内課長が顔を出した。
「15分、待って貰って。私が、お相手する。」
溝内課長が出て行った。
「じゃ、辻さん達は、巨岩党の方が遺体確認後、党事務所に。大曲達は、連絡してあるから、ガイシャの後藤田さん宅に。」
午後2時半。クルマの中。
「管理官、不機嫌でしたね、先輩。」
「ここんとこ政治家の暗殺、多いからな。多分また、『与党の誰かがやった』って、巨岩党は騒ぐだろうけど。」
「巨岩党って、本当に腐ってますよね。前の選挙の時、コンビニ前の、身障者用のスペースに街宣車駐めるわ、点字ブロック踏みつけるわで、こいつら人間じゃねえっておもいましたよ。『文句あるなら警察呼べ』って言うから、警察手帳を官制名刺出したら、『懲役何年ですか、お巡りさん』って言いやがって。200年は堅いな、って言ったら、場所替えしました。店員さんもお客さんも拍手。」
「受けるー。眩目くん、偉い。」
午後3時半。
ご近所回りしてから、後藤田栄五氏の家に行った。
お姉さんの恵津子さんが待機していた。
「弟はね、人に恨まれることしてきたんです。どんだけ後藤田家の財産、食い潰してきたか。死んで、すっきりー。面倒だから、事務長の越後さんに遺体確認頼みました。これ、要るんですよね。」と、アルバムと葉書ホルダーを用意してくれていた。
「あ。衣類のチェックもいるのかしら?麻薬やってなかったか、とか。」
「麻薬はともかく、衣類のチェックはお願いした方がいいかも。案外ね、おねえさま。ポケットに名刺入れたままだったってケースもあるので。眩目くん、お願いね。」
大曲先輩の処世術には驚かされる。だからこそ、元カノが上司になっても仕事出来るのだろう。
「確かに、名刺が入っていたことがありますね。事件と直接関係なかったけど、スーツが濡れて、ポケットの中で貼り付いていたんですよ。」
「警察って、細かい事調べるのね。」
「まあ・・・そうです。」
衣類に異常がないし、収納スペースも確認したのでアルバムを見ている内、気が付いた。
「どの写真にも映っている女性、いますね。大学時代は後ろの方だけど。」
「ああ、その人の影響受けて、『御左翼様』になったのよ。注意して聞くような子じゃないし。これで、やっとまともに戻るのよ。」
「名前、分かります?」
「葉書ホルダーの先頭。長谷あんずって人。」
俺は気になったので、恵津子さんに了解取って、辻さんに電話した。
「長谷あんずさん、ね。分かった。今、事務所で、蒔君が相手している人だろう。確認してみるよ、眩目くん。ありがとう。」
書斎に戻ると、大曲先輩は、「おねえさまは、長谷あんずって人にお会いになったことは?」と、尋ねた。
午後5時半。捜査一課横の大会議室。『シネコン死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
「ホシが出頭してきた。長谷杏子。あんずの子、だ。後藤田氏を熱心な隣国支持者に育てた、長谷あんずは、娘からも疎まれていた。シネコンの係員をしていた杏子は、『出生の秘密』を確認の上、実の父親を殺害した。さっき後藤田恵津子さんに確認したら、『出生の秘密』は知らなかったそうだ。週刊誌が喜びそうな『ダブル不倫』で生まれたのが杏子だった。あんずの事も憎かったが、世間を騒がしている父親を認めたくなかったそうだ。ああ、叔母に当たる恵津子氏は、弁護士は公選でいい、と応えたそうだ。それと、眩目くんに感謝する、と伝えてくれ、と伝言を預かった。良かったな。」
午後7時。眩目家。
「恵津子と寝たのか?」
「んな訳ないでしょ。第一、大曲先輩がいるじゃないですか。」
「ホントか?私と同じ、耳タブのところにほくろがあるぞ。」
「僕が不倫する訳ないでしょ。」
「じゃ、証明してみろ。」
しまった。また、嵌められた。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
溝内健児・・・生活安全課課長。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。




