194.訪問販売お断り
木の下に、男の人が寝ていたから。
いや、蠅がたかっている。
少年は110番通報をした。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前8時。ある町。
蝉取りに来た少年二人が、蝉を取った瞬間、違和感を覚えた。
木の下に、男の人が寝ていたから。
いや、蠅がたかっている。
少年は110番通報をした。
30分後。機捜と鑑識が到着した。
「えっと、通報してくれたのは、小池くんと桜井くんね。」と、赤井警部補は確認した。
「はい。」
「どうして死んでると思ったの?」
「生きてる人に蠅はたからない、と思いますど。」
「一本やられたな、赤井。」と、井関が笑った。
「発見したとき、ここでなくてもいいから、自動車みかけた?」
「いいえ、特には。ここ入り組んでいる場所だから・・・。」
「いや、通報ありがとう。君たちが発見しなかったら、発見がもっと遅くなったかも知れない。それより、シール一杯貼ってあるなあ。」
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『山の麓死体遺棄事件』本部。
管理官が説明した。
「ガイシャは、腐乱はしていたが、誰かは判別出来た。国会をエスケイプしていた。国別民間党党首の玉置信也氏だ。今、副党首の新間氏がこちらに向かっている。ホシはどうかは分からないが、玉置氏は、地元出身だ。事務所によると、後援会に行く筈が、行方不明になっていた。生活安全課の方に届けが出たのが昨日だ。井関さん。死因が?」
「昆虫の毒だ。昆虫の毒というと、スズメバチのアナフィラキシーショックが有名だが、これは『アオバアリガタハネカクシ』だ。付近に田んぼや沼があれば生息地になっているかも知れないが、それなら、あそこに運ぶ意味がないし、これは他殺だ。どこかの研究用のが使われた可能性がある。一番近いのが『薄刃大学』だ。それと、ご遺体に妙な特徴がある。今までも似た様な『ホシからのメッセージ』があったが、『訪問販売お断りシール』がべたべた貼られていた。蠅が寄って来た原因の1つかもな。これ、面白いな、って赤井も言っていたが、『玄関応対料金 5分毎に3000円』ってのもあるんだ。白けてセールスも帰るかな?」
「よし。辻さん達は、新間氏と合流して事務所に向かって下さい。薄刃大学の方は、関口係長に頼もう。大曲達は、玉置氏宅だ。マスコミに気をつけろ。死因は、解剖が済まないと分からない、と突っぱねろ。」と、蘭子は言った。
午後2時半。クルマの中。
「玉置氏って、与党と連立組むって言ってたのに止めて、他の野党と変わらなくなって、支持者が離れたんですよね?あのシール、元支持者かな?すると、ホシは・・・あ、予断は禁物。」
「ああ、通称年貢省に『握らされた』んだろう。根性無しだ。眩目。段ボール抱えるのを忘れるな。」
「マイクガード、ですね。」
「そういうこと。」
午後3時過ぎ。玉置家。
俺達は、マスコミから色んな質問を浴びたが、全て無視して、入った。
圭子夫人は泣き出した。
「主人は、『浪費税会議』に入れて貰えなかったから、グレたんです。気の小さな男なんです。父によく言われました。『あいつは小物だから止めとけ』って。でも、でも、恋愛結婚なんです。」
「奥様、落ち着いて。ご主人が『優しい性格』っていうのはみんな知ってます。きっと、逆恨みってやつですよ。電車の中で隣りあった人と腕が振れただけで切れて、なんて事件もある位ですから。連絡があったと思いますが、ご遺体は、すぐには戻って来ません。馴染みの葬儀社があったら、段取りだけでも連絡されたらいいですよ。あ、その前に、一応規則なので、眩目君、よろしくね。」
俺は、居間にあるPCの前に先輩が座るのを確認してから、奥の部屋に移った。ここは二階家じゃないが、敷地は広い。奥様の実家だそうだ。玉置さんは、どうやら『益男さん』だったらしい。
「これが、党を結成した当時の写真。党が分裂する前だから、アッチの人も混じってますけど。」
アッチの人とは、民間党が国別民間党と建前民間党に分裂し、建前民間党に残った人達のことだ。
建前民間党の方より国別民間党の方がまともだから、と選挙の度に支持率が上がっていたのに、『浪費税会議』に参加出来なかったことで言動がおかしくなった。
『浪費税会議』は、建前民間党が主体になっての与野党会議で、他にも参加していない党もある。前に、大曲先輩から聞いたが、通称年貢省の罠だったのだ。後で、『我々は味方』と言って、通称年貢省よりの方針に変更する為の。
結局、『浪費税会議』は上手く行かなかった。
結論ありきの会議、時間の無駄だった。
与党に入る筈だったのに、他の施策は全て空振りだったのに、成功してしまった。「分断」に。大曲先輩によると、隣国の狙いは、政権をかき乱し、分断・分散させることにあった。だから、『捏造』がバレた『誹謗中小』動画に、建前民間党は拘った。
こういう『裏切り者』が欲しかったのだ。
あのシールは?
あ、先輩の声だ。
居間に行くと、「大学に行ってた係長から連絡があった。やっぱり『研究用』が盗まれている。防犯カメラのSDを村松から受け取った鑑識が解析を急いでいる。
「奥様。ご主人の知り合いで佐伯って人はおられますか?」
圭子夫人は、持って来たアルバムを広げた。
「この人です。」
「ご主人は、失踪する前に、佐伯って人と待ち合わせのメール交換をしています。これ、スマホのバックアップです。自動転送を使ってます。ホシは、スマホのデータを消しています。さっき、秋野に確認したよ。保管していたスマホを操作させてな。」
そう言って、今度は、蒔さんに電話をした。スピーカーをオンにして。
「新間さんに確認してくれ。佐伯って人を元民間党のメンバーだと思えるんだが。」
電話は、辻さんに替わった。
「今、新間さんに確認したが、民間党が分裂する時、真っ二つじゃなかった。どちらにも組しない人がいた。その一人が佐伯氏だ。機密事項なんで詳しくは話せないが、と前置きして、佐伯氏が分裂の原因だった、と言っておられる。大曲くん、繋がったかな?ひょっとして。」
「繋がりましたよ、辻さん。」
午後6時。捜査一課横の大会議室。『山の麓死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、神道課長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。
神道課長は、すぐに出て行った。
「ホシは、元民間党の佐伯虎三、佐伯の友人で、世界友人会という半グレの会社をやっている大石光男、大石に命じられて実行した小中敏夫。佐伯は、揺蕩う玉置に声をかけ、また一緒にやろうという申し出を玉置が断ったので、殺害に至った。佐伯は玉置に替わって党を乗っ取ろうと画策していたんだ。夫人が何もかも証拠を握っているぞ、とカマをかけたら、あっけなく完落ちした。」
午後7時。眩目家。
あじフライを旨そうに頬張りながら、蘭子は「どこの組織も反社や半グレに繋がっていやがる。特に政治家はクリーンな政治家が少ない。あじフライの次は、お前な。」と言い、ニッと笑った。
何の優先順位だよー。
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
関口寛也・・・捜査一課第三係係長。警部補。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
※当然ですが、政党その他の団体は実在しません。
クライングフリーマン




