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193/239

193.うでたまご殺人事件

「納涼盆踊り大会」とは言っても、昔のように通称「音頭取り」と呼ばれる歌手が招聘される訳ではない。

実質上、「路上カラオケ大会」である。


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。

 ===========

 午前8時。ある町。

 夕方からの「納涼盆踊り大会」の為の準備に青年団はてんやわんやだった。

「納涼盆踊り大会」とは言っても、昔のように通称「音頭取り」と呼ばれる歌手が招聘される訳ではない。

 実質上、「路上カラオケ大会」である。

 一人の青年が、青いビニールシートを見付けた。

 借りている駐車場の、『露店販売』のスペースだが、仕込みはお昼前からと聞いていた。

 そっとめくり上げ、事態の異変に気づいた彼は、団員達を呼んだ。

 青年団の団長は、深呼吸をして、110番通報をした。


 30分後。機捜と鑑識が到着した。

「えーと、通報してくれたのは?」

「俺です。青年団団長の御厨です。この真下が見付けたんです。露店の設営は、お昼前の予定でした。」

「このシートは、夕べはなかったの?」

「このスペースは、元々、そこのスーパーの第3駐車場で、毎年借りているんです。」

「じゃ、。昨夜は、駐車場だったってこと?」

「はい。閉店が午後9時なので、それまでにあったのなら、誰か気づくと思います。」

「了解。誰か、スーパーに尋ねに行ってくれ。」

「刑事さん達が担当するんですか?」

「いや、機捜、って言って、現場の『状態確認』専門だ。実際の捜査は別の刑事が担当する。」

「殺人事件だから、捜査一課、ですよね?」と、真下青年が確認した。

「そういうことだ、真下くん。御厨くん、昨日、閉店後に不審な車両、詰まり、この近くに路駐したクルマを見かけた者がいないか、確認してくらないか。」と、赤井警部補が言うと、「了解しました。」と、二人は敬礼らしきことをした。

 赤井は苦笑して、敬礼を返した。

「流行り、なのかな、クラウン。」と、井関が言った。


 ================

 ====================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『駐車場死体遺棄事件』本部。

 管理官が説明した。

「ガイシャは、身元不明だったが、生活安全課から失踪届が出ていた。一昨日だ。ガイシャは、石油等卸業者東明KKの社長東彰ひがし あきら。一昨日殺害された東は、昨日の夜、スーパー平和まんまる第3駐車場に遺棄された。今朝、地元青年団が盆踊り大会、と言ってもカラオケ大会なんだが、その会場設営に同駐車場を訪れ、ガイシャを発見した。特異な点は、コスプレをしており・・・秋野、特撮番組か?」

「えー、息子の息子が贔屓にしている『高齢ヒーロー・若ゲッター』の悪役らしい。で、その悪役は、いつも、うでたまご、つまり、ゆで卵を頬張っているそうだ。それで、コスプレ衣装だけでなく、口の中にゆで卵が詰まっていた。ガムテープで口を塞いでいたから、異臭に気づいた人は少ないかも知れないな。凶器は見当たらなかった。まあ、あそこは殺害現場じゃないだろう。」と、井関さんが応えた。

「辻さん達は、東明KKの元請けの会社、大澤興業に行ってください。大曲達は、ガイシャの東宅だ。」と、蘭子は言った。

 午後2時半。クルマの中。

「デジャブかな?前に・・・。」

「ありましたよ、先輩。あいつら、ガメツイですねえ。政府がナフサ騒ぎの時、ため込まないでくれって言うのを無視して、ため込んで。」

「昔のトイレットペーパー騒ぎ以降、同じこと繰り返している。あれ、元々は、団地の主婦が、スーパーまで遠いから、『買いだめ』しただけだったのに、マスコミが捏造して、それに乗っかって、って構図。今と同じだろ。ナフサの前のコメ騒動も、在庫抱えすぎて困っているらしい、がめつく儲けようとしたヤカラが。」

「天罰覿面、ですね。」

「お。今日は冴えてるねえ、眩目くーん。」


 午後3時半。東家。

 郊外だから、少し時間がかかったが、夫人は平然としていた。

「ざまあみろ。世論調査しなくても、民意は分かってる。」

 いつも通り、大曲先輩はPCを担当し、俺は二階の書庫を確認した。

 意外と勉強家だったようだ。

「はい。アルバム。信じてくれなくてもいいけどサ。主人は嫌がったの、在庫隠し。昔、トイレットペーパー騒ぎあって、何年くらい前だったかにもあったでしょ。あの時、倉庫の一部貸したのよ。で、業者の一人が、首つり自殺。」

「それで、嫌になってたんですね、東さんは。すると。今回は?」

「大澤興業の命令。仕方無かったのよ。」

「奥さん・・・俺は信じますよ。」

「ありがとう。」

 夫人は、大きなハンカチを出して、目に当てた。


 階下に降りると、先輩は誰かに電話していた。

「はい。お願いします。」

「眩目。ゆで卵の出所が分かった。あのスーパーが万引きに遭っている。防犯カメラは多いそうだ。」


 午後5時半。捜査一課横の大会議室。『駐車場死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、皇係長、大曲先輩、蘭子、管理官が出て来た。

 管理官が説明した。

「ホシは、大澤興業専務大澤大吉、鴻上道夫。ガイシャは、ひょんなことから、大澤が仮想通貨に手を出していることに気づいた。過去の事件で反省していた東は、その秘密を守る代わりに、ナフサ騒ぎの時に隠していたことを政府に報告すると言ったが、勘ぐった大澤は消すしかないと考えた。皇係長が鴻上を口説き落として、大澤は自白するしかなくなった。やり過ぎたんだよ、大澤は。コスプレさせたのは、体型が似ているから、だとさ。」


 午後7時。眩目家。

「喪服、確認しとけよ、明日、お通夜だ。」

「はい。ガメツイ奴の気性は一生治らないよね。」

「それは、お前を『手籠め』にした私への感謝の気持ちか?」


 どう、返せばいいんだろう?


 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 皇信也すめらぎしんや・・・捜査一課第二係係長。警部。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。


 ※当然ですが、上記のような番組は存在しません。

 クライングフリーマン





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