191.コンビニは誰のもの?
「どうだ、酒井。慣れたか?」と、開光が尋ねた。
「サイバー犯罪課の連中がですか?サイバー犯罪課倉田課長がですか?」
新垣が、首を横に振った。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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正午。警視庁食堂。
珍しく、開光蘭子、新垣舞、酒井優香が一緒にランチを取っていた。
「どうだ、酒井。慣れたか?」と、開光が尋ねた。
「サイバー犯罪課の連中がですか?サイバー犯罪課倉田課長がですか?」
新垣が、首を横に振った。
「普通は、お前が仕事場に慣れたか、って質問だが。」と、蘭子は呆れた。
「聞くだけ野暮か。法事は?」
「ぎまいに任せています。出しゃばりだから、張り切ってますわ。これ、本当に、あの子が作ったの、ジェンダーが。」
「ああ。ウチの夕食を作る時もある。」
「開光課長はBなんですか?」「Dカップだ。」
「漫才するなよ。」新垣は、開光と村松の【昔の話】を簡潔に話した。
「成程。じゃ、お先に。」
酒井は、さっさと自分のトレーを片づけた。
「めっけもんだな、蘭子。」
「めっけもんだよ、舞。」
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『コンビニ餓死死体遺棄事件』本部。
管理官は戒名に違和感を覚えたが、いつも通り説明した。
戒名とは、事件のニックネームで、実際のデータ処理は記号と番号のシリアルナンバーで管理されている。これは、デジタル時代だからではなく、他の事件と混同しない為である。
「ガイシャは、大手コンビニチェーン草野マートの店長青山道夫。店は、会社の方針で撤退・撤去工事に入ったところだ。午前9時。撤去解体業者が作業をしようとすると、人影が見えた。閉店したのを知らずに誰かが入ったと思い、声をかけながら入ってみると遺体が転がっていた。業者作業員小山によると、付近に駐停車の跡は無かった。110番通報を受けて赤井警部補も確認したが、深夜のゲリラ豪雨で、駐停車の跡は分からなかった。井関さん。」
「現場のゲソコンも、さっぱりだ。返り血も流せただろう。殺害現場でない可能性もある。凶器はバタフライナイフ。見つかっていない。」
「靑山夫人によると、一昨日の夜から帰っていない。閉店が決まってから、飲み屋に行って朝帰りも珍しくなかったそうだ。それで、失踪届を出そうとしたら、警察から連絡が来た。」
「じゃ、辻さん達は草野マートの営業本部へ。大曲達は、靑山家へ。」
午後2時半。クルマの中。
「カスハラって知ってるよな、眩目。カステラじゃないぞ。」
「知ってますよ。カスタマーハラスメント。客の嫌がらせですよね。」
「そうだ。警察からの連絡が来た時、カスハラのせいで、閉店になった、って泣き喚いていたそうだ。」
「じゃ・・・でも、閉店まで追い込んだんでしょ?それだけで青山さん、打撃じゃないですか、現にやけ酒飲んでたんでしょ?」
「くーらーめ、くん。」
「余談は禁物だよね。」
「でした。」
午後3時半。ご近所回りをして、靑山家へ。
「あ。ダメです。」
靑山夫人美春は、梁にロープをかけ、首を吊ろうとしていた。
間一髪だった。
俺が、冷蔵庫にあったウーロン茶を飲み干すと、夫人はぽつりと言った。
「私達、子供、いないんです。店が子供みたいなものでした。バイトの子4人と、何とか切り盛りして・・・。」
「奥さん、カスハラした奴の顔は覚えています?馴染みの客でした?」
美春さんは、かぶりを振った。
大曲先輩が秋野に電話し、鑑識に応援を呼んだ。
俺がアルバムと葉書ホルダーを持って階下に降りると、秋野以外にもう一人いた。
酒井優香だ。
「ヤッホー、眩目君。新しいシステム作ったから、秋野くんに説明がてら、来ちゃった。」
「来ちゃった?倉田さんは?」
「後で言っとく。」
相変わらずマイペースな人だ。
美春夫人が、カスハラの犯人を、ゆっくり言うと、タブレットの画面に出て来た。
「こ・・・こんな感じです。」
「じゃ、秋野君、しめーてはい、よろしく。」と言って、秋野と一緒にさっさと帰った。
「大曲さん、今の方は?」
「あ。えーと、システム課の一般職員です。事務関係は、警察官だけでなく、民間採用もあるんです。」
「そうですか。ありがとうございます。ありがとうございます。」と、夫人は何度も俺達に頭を下げた。
先輩は、帰る前に、生活安全課の溝内課長の名刺を渡して、帰りの車中、運転する俺の横で溝内課長に話を通しておいた。
「了解。定期的に部下にうかがわせます。」
午後4時半。第二応接室。
神道課長が言った。
「間違いない。今回は、組絡み。舞ちゃん、どうぞ。」
「舞ちゃん?馴れ馴れしい。横須賀のスカジャン会が、隣国料理の店の物件を探していたようだ。あの国のカラミなら、ザ・ヤクザも共同戦線だ。その該当物件が・・・。」
「青山さんの店か。あ、でも・・・。」
「そうです、課長。青山マートでは事情を知らず、フランチャイズの替わりに直営店を出す予定でした。それで、他のネタで本部を強請っていたようです。」と、辻さんは報告した。
「面白い。ねずみ取り・・・いや、イタチ取りするか。辻さん。草野マートに協力してッ貰って下さい。」
蘭子は、とんでもないことを考えていた。
―「捜査一課ですけど、192」につづくー
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
倉田喜一・・・サイバー犯罪対策課課長。警部・
酒井優香・・・サイバー犯罪対策課事務員。
溝内健児・・・生活安全課課長。警部補。
※題材になるような事件は起っておりません。
クライングフリーマン




