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190/240

190.甘い誘惑

夏休みで来ていた親子連れが、奇妙な黒い物体を見付けた。

丸太の様な木の近くに黒い虫がたかっていた。

何か甘い匂いがするな、と父親が思った。


 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。

 ===========

 午前8時半。渋谷区。道玄坂。

 夏休みで来ていた親子連れが、奇妙な黒い物体を見付けた。

 丸太の様な木の近くに黒い虫がたかっていた。

 何か甘い匂いがするな、と父親が思った。

 子供が「あ、カブト虫。」と言って、持っていた捕虫器に移していると、「父さん、何か、変。」と父親を呼んだ。

 父親は、とんでもない事件に巻き込まれたことを知った。

 通報したのは、近くにいたカップルだった。


 30分後。機捜と鑑識がやってきた。

「通報してくれた毛利さんは?」

「はい。」と、カップルが手を挙げた。

 事情聴取を始めた、赤井に子供が袖を引いた。

「これ?それにくっついていたんだけど。」

 父親が、事情を話した。

「じゃ、それ、おねえさんに預けて貰えるかな?後で返すから。」と、智子が言った。

「いいよ。」

「女性の鑑識さん、ですか。ドラマでしか観たことしかないから、実際はいないかと思っていました。」

「いますよ。人数は少ないけど。あの刑事さん達に、貴方たちも話して貰えます?」

「あの刑事さん達が担当するんですか?」「いいえ、捜査は、別の係です。」


 ================

 ====================

 午後1時。捜査一課横の大会議室。『カブト虫死体遺棄事件』本部。

 管理官は戒名に違和感を覚えたが、いつも通り説明した。

 戒名とは、事件のニックネームで、実際のデータ処理は記号と番号のシリアルナンバーで管理されている。これは、デジタル時代だからではなく、他の事件と混同しない為である。

「ガイシャは、移民党の議員淡谷大介。同じ与党なのに、『国旗損壊罪』法案に反対していて有名になった。発見者は、道玄坂に遊びに来ていた親子と、休暇を取って遊びに来ていたカップル。遺体は、発泡スチロールに丸太の絵を描いたものに包まれていた。そして、熟したバナナやパイナップルなどの甘い匂いの果物が仕込まれていて、そこに数匹のカブト虫が放たれていた。遺体は、カブト虫を持った、少年時代の写真を持っていた。調べてみると、淡谷氏は佐賀県の出身ではあったが、帰化していた。死因と関係あるかそうかは不明だ。井関さん。凶器は?」

「所謂、千枚通しだ。まだ体内に残って居た。これが止血になっていた。」

「早朝。不審なトラックを見かけたという情報があったが、夜更かしした酔っ払いの為、どの程度の信憑性か分からない。」

「一見すると、反総理派の淡谷を総理派の誰かが片づけたように見えるが・・・。」

「なわきゃあない。で、俺を呼んだよね?」と、神道課長が入って来た。

「呼んだっけ?」と、蘭子は惚けた。

「あの辺は、隣国系の料理屋が多い。淡谷御用達の店は、半グレの方から見れば分かる。」

「小松商会は、淡谷と接したことがある。これ、写真。」

「素直に出せよ、神道。実行犯は、こいつらかもな。本ボシは・・・これからだな。」

 神道課長は、そこで派手に、すっこけた。

 皆見て見ぬ振りをしている。

「じゃ、辻さん達は、移民党に。大曲達は、淡谷家に向かってくれ。。」

「「「了解。」」」


 午後3時。淡谷家。

「夫が、何をしたって言うんですか!」

 いきなり、亞矢子夫人は言った。

「まだ、捜査はこれからでして。手続き上、ご主人の持ち物やPCを調べさせて頂くこちになっていまして。あ、党の了解も取ってありますよ。」

「詰まり、犯人を見付けるヒント、ですか。」

「流石です、奥様。小さな事象でヒントが見つかることもありますので、後、お願いね、眩目くん。」

 二階に上がると、息子らしい青年が自室に隠れた。

 ???

 俺は型どおり、お悔やみを言ってから、「移民党で仲の良かった方は?石羽根さん以外に。」と、尋ねてみた。

 アルバムを繰りながら、亞矢子夫人は、「主人とロッキーに登って遭難した田岡さんかしら?」と言った。

 1枚しかないと言うので、その田岡氏の写真を撮影させて貰った。

 今は、スマホで撮影した写真で、後でどうにでも修正出来る。


 衣類をチェックし、葉書ホルダーをお預かりして、俺は階下に降りると、大曲先輩はそっとグーサインを出した。

 そして、「奥様。きっと、逆恨みって奴ですよ。今は、そう思いましょう。」と、言った。


 午後4時。クルマの中。

「な訳ないだろ、日本国民の敵、売国奴だから。」

 その時、先輩のスマホが鳴動した。

 俺は、運転中の先輩の代わりに出て、スピーカーをオンにした。」

「息子の徹ですが、2浪中で、あまり外に出ません。引きこもり状態です。道玄坂の土地勘ですが、近くの予備校に通っていたことがあります。小松商会の近くです。」

「でかした、みーちゃん。」

「やだ、先輩ったら。」

 えー。先輩、守備範囲広いなあ。


 午後5時半。捜査一課横の大会議室。『カブト虫死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、神道課長、大曲先輩、蘭子、井関警視監、管理官が出て来た。

 神道課長と警視監は、すぐに出て行った。

 管理官が説明した。

「ホシは、淡谷徹と田岡宗佑。そして、小松商会の社員。田岡は、姿を消して半グレの小松商会に所属していた。隣国は徹を仮想通貨依存症にして、田岡をパイプ役に仕立てた。淡谷が隠した移民党データは、みつから無かった。そこで、徹を使って淡谷をおびき寄せた。徹は、実子でないことにも父親に反発していた。子供の頃、本当の息子と徹は入れ替えられたのだ。息子のDNAは隣国人のものだった。後は、小松商会が処理した。カブト虫は、日本のカブト虫ではなかった。徹は、もう少年の歳ではない。日本国籍の大人として法の裁きを受けてもらう。」


 午後6時。夕方のニュース。

 管理官は、淡谷の出自を暴いた上で、移民党のデータ情報漏洩の恐れがあった、と説明してから事件の概要を説明した。

 井関警視監は、移民党にセキュリティー監視の厳重管理を提言した、と述べた。


「あのデータな。どこにあった、と思う?」

「どこ?」

「留守番電話があったんだろう?」「あった。」

「あのタイプは、『予備』のSDを格納出来る引き出しがあるんだ。大曲が、もう一度行って確認した。それと、智子が、カブト虫、違うやつだが、持って行った。喜んでいたらしい。」


 そう言いながら、蘭子は衣類を脱ぎながら、「ミーン、ミーン。」と鳴いた。

「それは蝉でしょ。」


 蘭子が薄ら笑った気がした。


 恐い。


 ―完―


 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。

 井関一郎・・・警視庁監察官(次期警視監)


 ※フィクションです。










 午後2時半。クルマの中。

「珍しいですね、辻さん。」

「辻さんでなくとも、常識ある国民はイライラしているよ。あれ、子供のイジメじゃないか。週刊誌持ち込み禁止法案、賛成。」


 午後3時。立野氏宅近くで聞き込み。

 案の定、評判が悪かった。

「せいせいした、犯人さん、ありがとう。」そう言って手を合わせた人もいた。

 午後3時半。立野家。

「近所で悪口言ってたのは、間宮さん、天野さん、小椋さん?」

「えっと、警察車両が出入りするので、お詫びに挨拶に回っただけですが。」と、大曲は惚けた。

「どうぞ、何なりとお調べください。」真美子夫人は、膨れっつらだった。

 俺は、定式に従って、アルバムと住所録を見せて貰った。

 すると、アルバムから剥がされた写真が数枚あることが分かった。

「親しい人は?」

「杉浦さんと、窓辺さん。杉浦さんは登山が趣味で遭難したまま。窓辺さんは、がんになられてから入院中。圭介は、何度もお見舞いに行っていました。」

 秋野の話では、水没したらしくスマホは使用不能になっていた。

 俺は、思いついて、「圭介さんの古いスマホやケータイ、ショップに返したんですかね?処分したのかな?」と、尋ねてみた。

 真美子夫人は、枕元のケータイを持って来てくれた。

「まだ使えるからって、目覚まし時計の替わりに使ってましたわ。」

 俺は、電源を入れてみた。

 圭介氏と2人、詰まり、3人の、山をバックにした写真が壁紙になっていた。

 電話の着信履歴を調べると、病院の電話番号があった。

「この病院だわ、窓辺さんが入院しているのは。」

 俺は、大曲先輩に確認するまでもなく、蘭子に電話していた。

「分かった。村松に行かせる。慶応山根病院だな、番号は?」


 階下に戻り、大曲先輩に報告すると、「正解だよ、眩目くん。奥さん、杉浦さんは、生きてます。犯人は、杉浦さんの秘密を知ったんです。」と、言った。


 午後5時半。捜査一課横の大会議室。『ドラッグストア死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、神道課長、大仏課長、蘭子、大曲先輩、管理官が出て来た。

 神道課長、大仏課長は、すぐに帰って行った。

「ホシは、新利権党の草間栄吉。5年前。流行り病が流行る直前、ひき逃げ事故があった。ひき逃げ犯人は、立野の友人、杉浦彰だった。立野の、もう一人の友人窓辺と立野は、3人一緒に山に上り、杉浦が遭難したまま、というアリバイを作った。新利権党が出来る前の事だった。草間は、このカラクリを知ってしまった。そして、立野を強請り、揉み合っている内に立野を殺害してしまった。草間は、立野が野党議員として与党を攻めあぐねているのを見ていたので、与党陣営に犯人がいるかのような工作をした。窓辺から話を聞いた杉浦は、ひき逃げ犯人として出頭、草間は、メール等で強請っていた事実が発覚して、自白した。真美子夫人は、野党の申し合わせで攻める材料を提供していた【週刊誌】と新利権党を告発するそうだ。お通夜は明後日。真美子夫人は、眩目くんに出席を望んでいるらしい。私は、記者会見に臨む。」

 珍しく駄洒落を言って、管理官は、出て行った。


 午後7時。眩目家。

 蘭子は、珍しくチキンライスを炒めていた。

「真吉も、親友、いるのか。」

「2人。」

「暑中見舞い、出しておけ。愛妻とのツーショットな。あ、裸のはダメだぞ。」

「当たり前だよ。明日・・・。」

「買っておいたよ、旦那。友達は大事にしろ。」

 皿に、チキンライスを盛りながら、「でも、一番は私だ。」と言った。


 愛妻の扱い方も、あいつらに教わるか。


 アチっ!!


 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。


 赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。


 大仏おさらぎ俊吉・・・交通課(交通捜査課)課長。




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