189.非売品
店員は、新宿の事件を思い出した。
よく観察すると、案の定、マネキンに似せた物体は人間の遺体だった。
========== フィクションです ===========
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。
※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。
※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。
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午前8時45分。あるドラッグストア前。
店員が開店準備をしている最中、変な人形が立っているのに気づいた。
トイレットペーパーやティッシュペーパー、今の季節だとお茶のペットボトル箱やミネラルウォーターのペットボトル箱を店の前に陳列するのが常識になっている。
店員が、そういった商品もワゴンを移動させようとしたら、気づいたのだ。
店員は、新宿の事件を思い出した。
よく観察すると、案の定、マネキンに似せた物体は人間の遺体だった。
30分後。機捜と鑑識が到着した。
「模倣犯とも言えるし、そうでないとも言えるな。」と、井関が言った。
鑑識が調べている内、赤井警部補の部下が、隣のスーパーの店長を連れて来た。
「言われて調べてみたら、確かに値引きシールが少し足りない。機械で発行する分もありますが、ストックもあるんです。しかし、何の為に・・・。」
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『ドラッグストア死体遺棄事件』本部。
管理官が説明した。
「ガイシャは、新利権党の議員立野圭介。発見者は、ドラッグストア寿の新町由紀。出勤後、開店前時間になたので、当番の新町がワゴンを外に運びだそうとしたら、気づいた。新宿の事件同様、パフォーマーが立って居るように見えた。だが、保冷剤の匂いに気が付いて、観察すると人間ではない、と判断し、110番通報した。遺体はチェックのスーツを着ていて、値引きシール、夕方、スーパーが見切り品に貼って行くシールがべたべた貼ってあった。機捜の赤井警部補の部下がスーパーの店長から盗難の事実を認めた。どちらの店も、数カ所の共用出入り口近くに防犯カメラがあることや店内に防犯カメラがあることで、バックヤードには無頓着だった。バックヤードとは、作業場や仮倉庫があり、従業員が出入りする場所のことだ。井関さん、死因は?」
「後頭部殴打による脳挫傷、ってところか。死亡推定時刻は、8時間前。あの辺りに土地勘があったのかも知れないが、スーパーもドラッグストアも似た様な造り、だ。」
「立野と言えば、他の党で暴かれた捏造ネタで、また国会質疑遅らせていた議員ですね。」
「バレてること承知だから、法案成立妨害出来れば何でもいい、ってのが野党の共通作戦だからな。週刊誌持ち込み禁止法案作ればいいのに。」と、珍しく辻さんが憤慨した。
「じゃ、辻さん達は、党の事務所。大曲達は、立野氏宅へ。」と、蘭子は言った。
午後2時半。クルマの中。
「珍しいですね、辻さん。」
「辻さんでなくとも、常識ある国民はイライラしているよ。あれ、子供のイジメじゃないか。週刊誌持ち込み禁止法案、賛成。」
午後3時。立野氏宅近くで聞き込み。
案の定、評判が悪かった。
「せいせいした、犯人さん、ありがとう。」そう言って手を合わせた人もいた。
午後3時半。立野家。
「近所で悪口言ってたのは、間宮さん、天野さん、小椋さん?」
「えっと、警察車両が出入りするので、お詫びに挨拶に回っただけですが。」と、大曲は惚けた。
「どうぞ、何なりとお調べください。」真美子夫人は、膨れっつらだった。
俺は、定式に従って、アルバムと住所録を見せて貰った。
すると、アルバムから剥がされた写真が数枚あることが分かった。
「親しい人は?」
「杉浦さんと、窓辺さん。杉浦さんは登山が趣味で遭難したまま。窓辺さんは、がんになられてから入院中。圭介は、何度もお見舞いに行っていました。」
秋野の話では、水没したらしくスマホは使用不能になっていた。
俺は、思いついて、「圭介さんの古いスマホやケータイ、ショップに返したんですかね?処分したのかな?」と、尋ねてみた。
真美子夫人は、枕元のケータイを持って来てくれた。
「まだ使えるからって、目覚まし時計の替わりに使ってましたわ。」
俺は、電源を入れてみた。
圭介氏と2人、詰まり、3人の、山をバックにした写真が壁紙になっていた。
電話の着信履歴を調べると、病院の電話番号があった。
「この病院だわ、窓辺さんが入院しているのは。」
俺は、大曲先輩に確認するまでもなく、蘭子に電話していた。
「分かった。村松に行かせる。慶応山根病院だな、番号は?」
階下に戻り、大曲先輩に報告すると、「正解だよ、眩目くん。奥さん、杉浦さんは、生きてます。犯人は、杉浦さんの秘密を知ったんです。」と、言った。
午後5時半。捜査一課横の大会議室。『ドラッグストア死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、神道課長、大仏課長、蘭子、大曲先輩、管理官が出て来た。
神道課長、大仏課長は、すぐに帰って行った。
「ホシは、新利権党の草間栄吉。5年前。流行り病が流行る直前、ひき逃げ事故があった。ひき逃げ犯人は、立野の友人、杉浦彰だった。立野の、もう一人の友人窓辺と立野は、3人一緒に山に上り、杉浦が遭難したまま、というアリバイを作った。新利権党が出来る前の事だった。草間は、このカラクリを知ってしまった。そして、立野を強請り、揉み合っている内に立野を殺害してしまった。草間は、立野が野党議員として与党を攻めあぐねているのを見ていたので、与党陣営に犯人がいるかのような工作をした。窓辺から話を聞いた杉浦は、ひき逃げ犯人として出頭、草間は、メール等で強請っていた事実が発覚して、自白した。真美子夫人は、野党の申し合わせで攻める材料を提供していた【週刊誌】と新利権党を告発するそうだ。お通夜は明後日。真美子夫人は、眩目くんに出席を望んでいるらしい。私は、記者会見に臨む。」
珍しく駄洒落を言って、管理官は、出て行った。
午後7時。眩目家。
蘭子は、珍しくチキンライスを炒めていた。
「真吉も、親友、いるのか。」
「2人。」
「暑中見舞い、出しておけ。愛妻とのツーショットな。あ、裸のはダメだぞ。」
「当たり前だよ。明日・・・。」
「買っておいたよ、旦那。友達は大事にしろ。」
皿に、チキンライスを盛りながら、「でも、一番は私だ。」と言った。
愛妻の扱い方も、あいつらに教わるか。
アチっ!!
―完―
※今回の登場人物(順不同)
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。
秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。
赤井悦夫・・・第三機動捜査隊の警部補。
大仏俊吉・・・交通課(交通捜査課)課長。




