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188.謎のSD

「蘭子ちゃん、俺達も来ていい?」と神道課長が言い、「座布団1枚足しておくよ。」と、蘭子が返した。

 

 ========== フィクションです ===========

 =================================

 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。本来の階級は警部だったが、降格になった。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。

 この物語は、蘭子の特殊捜査チームの活躍のお話である。


 ※「暴力団対策課」は、敢えて「旧捜査四課」として扱っています。

 ※警視庁で痴漢被害の相談・対応を主に行っているのは、各警察署の生活安全課です。

 ===========

 ※前回のあらすじ。 

 午前9時。中野区。ある市民プール。

 プールの入口の前にプールがあったからだ。

 プールの前にあったのは、所謂ビニールプール、家庭用の『水浴び』用だ。

 被害者は、熱心な宗教団体系国会議員で、派手なパフォーマンスで有名だった。

 被害者の家でデータやアルバムを入手した大曲は重大な事実に気が付く。被害者と親しくしていた幼馴染は、実は公安の潜入捜査官だった。その捜査官三田村は、罠に嵌まり謀殺されていた。

 これは、単なるおしゃべり議員が殺されたヤマじゃない。公安部は、第一課第二課を吸収合併した。2025年4月。そして、囮捜査官が同じ時期に殺された。偶然じゃない。」

 開光蘭子は、憤然と立ち上がった。


 ================

 ====================

 午後5時半。捜査一課。第二応接室。

 公安第一課課長十文字さんが出て行った。

「明日、改めて会議を行う。村松、連絡だ。」

「了解しました。」

「蘭子ちゃん、俺達も来ていい?」と神道課長が言い、「座布団1枚足しておくよ。」と、蘭子が返した。

「ヤクザネットワークにも確認しておくよ。どうもマフィアの匂いがする。」と、新垣課長が言った。


 午後7時。眩目家。

 俺が、焼きそばを焼いていると、電話を掛けまくっていた蘭子が「換気しろよ、真吉。」と言って、ベランダに出た。

 俺は、換気扇を回しているのだが・・・。


 翌日。午前9時。捜査一課。

 蘭子は珍しく皇係長、餅屋係長、関口係長を呼び、小声で打ち合せをした。

「それぞれ案件を抱えているだろうが、一日だけ私に時間を開けてくれ。」

 3人は、無言で頷いた。

 名目上は、蘭子は判子を押すだけの【窓際族】だが、実は違う。

 捜査四課を名目上解散させたのも、飽くまで名目上だ。

 反社、即ち暴力団が激減した訳ではないからだ。

 公安も同じだった。

 数々の『圧力』から開放する為、第一課と第二課を吸収合併したのだ。

 これらの事項は、元から『スパイ』と認識される警察官にも伏せられている。

 公安の『ターゲット』になっている団体には、今も監視が続けられている。


 今回の事件の『新佐進氏のご遺体』は、返却が2日間延期された。

 これは、母親の登喜子さんに、蘭子が直接お願いしたものだ。

「滅多に言わない台詞を言います。我々はご子息の『カタキ』を討ちます。信じてください。」

「おま・・・かせ、します。」昨日、蘭子のスマホのスピーカーから流れた登喜子さんの声は震えていた。

 蘭子が言った通り、警察官たるもの『安請け合い』は禁じられている。

 敢えて言ったのは、所属団体に有無を言わせない為だ。

 登喜子さんは、問い合わせがあっても、「警察の判断ですから。」と言うことが出来る。


 午前11時。蘭子のデスク。

 生活安全課の溝内課長がやってきた。

「所轄の警察官が万引き少年を捕まえたところ、こんな紙片を持っていた、と言って来ました。

『喋ネクタイは、与党に殺された。それだけだ』


「面白い。自己顕示欲が強すぎるのが、あの連中の特徴だ。村松、読んでみろ。」

「ゆずりはネクタイは、よとうにころされた。それだけだ。」

 席が近い3人の係長が寄って来て、紙片を読んだ。

「ちょう、ねくたい、の積りかな。」と、餅屋係長が言い、「正体、バレバレですね。」、と皇係長が言った。


「見せて貰おうじゃないか、平和理想の実力とやらを。」


 午後1時。捜査一課横の大会議室。『プール殺人事件』本部。

 餅屋係長、皇係長、関口係長、神道課長、新垣課長が来ている。

 管理官が説明した。

「ガイシャは、2人の女性と行動を共にすることが多かった。一人は、総化学の会小梅党に誘った徳永。もう一人は、公安から潜入していた三田村。三田村は、公安部組織再編の際に殺害されている。公安部にもスパイがいたと判断して、監察官が捜査している。飽くまでも開光君の推理の段階だが、新佐は、組織のノルマをこなしながら、徳永の動きを見ていた。徳永が尻尾を掴まれたと判断して、元の組織に相談していた。元の組織は小梅党じゃなく、隣国の大組織だ。マフィアだ。神道課長、新垣課長の尽力で、今回の新佐暗殺には反社、半グレの各組織と直接関係ないことが判明した。キーパーソンは徳永だ。今、休暇中だ。3係長の各チームには、平和思想系の日本巨参党、邪民党、平和の会に揺さぶりをかけて貰う。小梅党が直接隣国マフィアと関わりがないことは、三田村の中間報告が示している。その報告が去年3月31日。失踪し、後日自殺死体として発見された。全てが関連している。私は、これから布石を打つ。」


 =============

 午後1時半。警視庁記者会見場。

「ご存じの通り、新佐氏は惨殺されました。所属する小梅党では、恨まれる筋合いがない、と発表されています。本日、捜査に進展がありました。新佐氏の、ご母堂からSDが見つかった、とのことでした。未だ解析中ではありますが、事件解決の糸口になる、と判断しております。」

 ある記者が手を挙げた。

「地の子新聞さん。」

「誰が、担当するんですか?」

「捜査一課ですけど、何か?」と、管理官は首を傾げ、言った。


 午後2時。日本巨参党本部。

「ええ。SD。住所録らしいんですが、暗号付きで、団体名しか分からない。新佐さんと個人的にお付き合いされている方、教えて頂けませんか?」と、餅屋係長は、にっこり笑って言った。

 午後2時。邪民党本部。

「ええ。SD。住所録らしいんですが、暗号付きで、団体名しか分からない。新佐さんと個人的にお付き合いされている方、教えて頂けませんか?」と、皇係長は、すまして言った。

 午後2時。平和の会本部。

「ええ。SD。住所録らしいんですが、暗号付きで、団体名しか分からない。新佐さんと個人的にお付き合いされている方、教えて頂けませんか?」と、関口係長は、すまして言った。

 3つの政党の事務長は、「同じ野党。それだけです。」と応えたが、平和の会だけは、動きを見せた。

 平和の党選挙対策委員長中田英介は、成田空港に急いだ。

 彼は、チケットを買ったが、搭乗口に向かうことが出来なかった。

 麻薬犬と空港警察が待ち構えていたからだった。

 それを見ていた、隣国人女性は、踵を返した。


 そこを、黒いサングラス、黒い上下スーツの男が近寄り、言った。

「命が惜しければ、本国に帰らない方がいい。アンタのことがばれている情報は伝えておいたから。あ、これ、落としものですよね?」

 男は、催涙スプレーをバッグの下に落した。

 警察犬が寄ってきた。

 男は、もういなかった。

 女性は、隣国語で何か言った。

 警視庁警備課課長小宮は、自動翻訳器のスイッチを押した。

『私の催涙スプレーじゃない。』女性は、青ざめた。

 空港警察の捜査官が近寄ってきた。


 ====================

 午後5時。捜査一課横の大会議室。『プール殺人事件』本部。

 取り調べ室から、小宮課長、十文字課長、井関監察官、神道課長、新垣課長、餅屋係長、関口係長、溝内課長、蘭子、大曲先輩、管理官が出て来た。

 小宮課長、十文字課長、井関監察官、神道課長、新垣課長、餅屋係長、関口係長、溝内課長はすぐに出て行った。

 管理官が説明した。

「今回の事件解決の前に、監察官、十文字課長から連絡が来た。三田村殺害に関して公安部庶務課の貴志係長が情報漏洩していた事が判明した。組織再編に当たり、三田村が囮捜査官だったことをリークしたんだ。すぐに逮捕・拘束した。そして、新佐の部屋に三田村が隠したのは、国界議員の名簿だった。暗号化されてはいるが、元のデータは配布されたものだった。三田村は、殺される前にトリックを仕込んだ。さて、ホシだが、主犯は、徳永網子こと通称リー・アン。そして実行犯は、隣国籍の、通称ミャー・ジュディー。ミャーは空港で、徳永は、新佐登喜子さんを殺害しようとした所を村松が逮捕した。先頃話したように、同機は、国会で失敗している新佐を利用して、与党がヒットマンを使ってまで、思い通りの政治を行っている、と国民に吹聴するためだ。新佐は、尊い犠牲になった。」

「自動翻訳器で『日本の警察を舐めるな』と言っておいた。私も久しぶりに空港に行って、いい気晴らしだった。」

 気晴らしついでに逮捕?

 でも、よく逮捕できたな。


 管理官は、急いで記者会見場に行った。


 ========

 午後7時。眩目家のマンション近く。

 眩目の部屋からベランダに出た開光蘭子はグーサインを出した。

「何やってんだよ。俺は、『自殺を装った』から・・・まあ、いい。またな、蘭子。」


 ===============

 午後7時。眩目家。

 ベランダから戻った蘭子に、「浮気してる?」と、俺は尋ねた。

「証明しよう。」

 あ、しまった。

 蘭子は俺の耳を持ち、引っ張りながら浴室に向かった。

 口は禍の元、だな。新佐を笑えない。


 ―完―


 ※今回の登場人物(順不同)

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。警視正。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。警部補。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。巡査。

 秋野[井関]智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。巡査。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。巡査部長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。巡査。


 神道助六・・・捜査二課課長。警部補。

 新垣舞・・・捜査四課(仮)課長。


 小宮孝・・・警備課課長。

 溝内健児・・・生活安全課課長。


 深山俊哉・・・警視庁広報課課長。警部補。

 皇信也すめらぎしんや・・・捜査一課第二係係長。警部。

 餅屋重樹・・・捜査一課第一係係長。警部。

 関口寛也・・・捜査一課第三係係長。警部補。


 井関一郎・・・警視庁警務部監察官。

 十文字ともんじ彰・・・警視庁公安部公安第一課課長。警視正。


 名も無き殺し屋・・・???


 ※現実の政党や議員名を参考にしていますが、本件とは一切関係ありません。

 2025年4月に公安部の組織編成が変更されたことは事実です。

 クライングフリーマン



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