114.薔薇薔薇殺人事件
「智チャン、1つ聞いていい?怒っている相手はホシ?それとも、秋野くん?」
「両方よ、おじさん。」
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
赤井悦夫・・・機動捜査隊の警部補。
新垣舞・・・捜査四課課長。警部補。
=================================
※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
午前9時。牧場家(被害者宅)。
機捜の赤井警部補と鑑識が到着すると、ガイシャの娘が対応した。
凄惨な現場に、秋野は、外に出て、吐いた。
智子が睨んでいる。
「智チャン、1つ聞いていい?怒っている相手はホシ?それとも、秋野くん?」
「両方よ、おじさん。」
智子は、さっさと作業に入った。
「権さん、本部に当たり触りのない写真、送っておこうか?記者会見用に。」
「ああ、済まないな。秋野もいいとこあるんだけどな、文書分析とか、指紋照合とかゲソコン判定とか。」
赤井は、口角を上げ、それ以上は言わなかった。
明らかに、秋野は内勤向きだが、刑事同様、色んな経験が必要なのだ。
午後1時。捜査一課横の大会議室。『バラバラ死体遺棄事件』本部。
管理官は、説明を始めた。
「今回のガイシャは、牧場慎二。昔、フォークソングの大家と言われた歌手で、今は80歳。引退して随分になるが、発見者の娘によると、晩年は作詞や作曲をしていたらしい。発見者は娘と、後妻に当たる妻なんだが、妻が卒倒したので、娘は救急搬送を先にやらせた。心臓の持病があるらしい。先に赤井警部補から来た写真だけでも、凄惨な現場だと判る。ホシは、8畳間一杯にビニールシートを敷き、そこで遺体を切断している。従って、殺害現場は別の場所だと考えられる。井関さん。」
「死亡推定時刻は、36時間以上前。殺害現場から、ある程度乾いた遺体をビニールシートで包んで自宅に運んだ。運んだ部屋には、別のビニールシートを敷いた上で切断、遺棄した。股間のモノが切り取られているが、怨恨か、何かの意図かは分からない。それと、遺体の側に薔薇の花が幾つか。発見者の娘は、気丈なのか、母親を救急搬送した上で、110番通報、そして、親族に母親の方を頼む、と電話をしたらしい。」
「痴情の怨恨じゃないな。それなら自宅に運ぶ必要はない。」
「薔薇の花の意味だけは分かる。昔、そういう歌で大ヒットした人だ。」と、辻さんが言った。
「辻さんは、会社関係をお願いします。村松も付いていけ。大曲達は、自宅の仕事場スペースだ。」
午後2時。クルマの中。
「先輩、何か嬉しそうですね。」
「秋野のやつ、『小間物屋』を開いたらしい。」
「商売始めたんですか?でも、公務員は・・・。」
「そうじゃない、反吐吐いたんだよ。もうとっくに死語の表現だな。」
「秋野君、内勤向きですよね。」
「でも、一通り出来ないとな、仕事は。」
午後2時半。牧場家。
「済みませんねえ、ずかずか上がり込んじゃって。一通り、形式通りしないと、上司がコレ、なんすよ。」と、大曲先輩は、頭の両側に『ツノ』を立てた。
「刑事さんも大変ですねえ。」
「お父さんのマネージャーされてたんですか?」
「まあ、一時期。父が義母と再婚してから辞めましたけど。会社の方もアシストして下さってたみたいだし。」
「そうですか。じゃ、眩目君、私物の方、お願いね。」
俺が、2階に行くとき、先輩がウインクしたので、時間掛けて帰って来い、という合図だな、と思った。
幸い、牧場氏の楽譜や本が多く、娘さんに説明をして貰ってから、楽譜と本を1つずつお借りした。
階下に降りると、先輩はVサインをした。
何か見付けたようだ。
午後5時半。『バラバラ死体遺棄事件』本部。
取り調べ室から、蘭子、大曲先輩、管理官、新垣課長が出て来た。
新垣課長は、すぐ出て行った。
あの様子は、「ガサイレ」だ。
蘭子は、説明した。
「ホシの実行犯は、干し柿会の下っ端。元植木職人。そして、共同正犯は、妻の牧場新子。妻は、娘と生前贈与で揉めていた。会社のマネージャー田村を通じて知り合った干し柿会にコロシを委託。数日アリバイ作った上で発見者に。ガイシャの日記と田村の存在を突きつけたら、『素直に』吐いた。血を分けた娘を想うのは当然ですよね、井関さん。」
「はい。当然です。」そう言って、井関さんは智子をチラ見した。
午後7時半。眩目家。
「今の内に、遺書書いておくか。相続は、子供だけに行くように。」
「まだ、子供はいない・・・けど。」
「何だって?よく聞こえなかった。」
「まだ、子供はいない。」
「来い。今から、生産作業だ。」
しまった。
―完―




