113.切り裂きジャック殺人事件
「今回のガイシャは、中嶋まこと。発見者は、山野静香。ガイシャと発見者は無関係、と見られる。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
神道助六・・・捜査二課課長。
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
午後1時。捜査一課横の大会議室。『切り裂きジャック殺人事件』本部。
管理官は、説明を始めた。
「今回のガイシャは、中嶋まこと。発見者は、山野静香。ガイシャと発見者は無関係、と見られる。実は、昨夜未明。山野のご主人、孝夫氏が心筋梗塞で倒れた。119番通報で救急車を呼んだ。一命は取り留めたが、まだ重体だ。そして、呼び寄せた娘に確認されて、家に戻った。よくあることだが、慌てて玄関の鍵をかけ忘れたんだ。そして、死体を発見。今度は110番通報。命が無いことは、その場で判った。何本ものナイフが刺さっていたからだ。だが、死体は、どこからか運ばれたものだった。赤井警部補と鑑識が確認している。そうですね、井関さん。」
「玄関に引きずった跡がある。殺害現場から運ぶ途中、救急車が搬送して、山野さんが鍵をかけ忘れたのを目撃して、遺棄したものと見える。」
「なお、ガイシャは、『切り裂きジャック』の被疑者として、指名手配されていた。それで、ガイシャの名前は分かった訳だが、誰がホシか分かり辛くなった。先月、連続して女子高生を襲い、体の一部を傷つけて、スカートの一部を持ち帰っている。指名手配出来たのは、偶然通りかかった大学生のカップルが見付けて撮影したからだ、中嶋は、そのまま逃走していた。中嶋は、半グレの今中商会にいたことがあり、特殊詐欺の受け子をやっていた。会社がガサイレで摘発されていたので、受け子は皆逃走していた。今中商会は『クビにしたバイトなんか知らない』、と言っている。」
「呼んだ?」と、神藤課長が入って来た。
「どなたさん?」と、蘭子は惚けた。
「蘭子ちゃんは、相変わらずキツいね。確かに、パシリのバイトなんか知らないよね。何か、重要なものを逃げていない限り。」
「神道。何か無くなったのか。」
「ガサイレしたとき、『金のナイフ』が無くなっている。今回のナイフみたいな安物じゃない。中嶋と一緒に逃げた筈の受け子がいる。正体不明だ。」
「中嶋の交友関係を当たるしかないな。辻さん、中嶋の卒業した学校の同級生を当たってください。大曲は、念の為、中嶋の家を探せ。それと、得意のスーパー話術で、山野さんのご近所も当たれ。」
午後2時。クルマの中。
「蘭子、苛立ってるな。俺に嫌味言うのは、久しぶりだ。」
「山野さんは、発見者じゃないんですか?」
「あれれっれっっれれー、眩目君。発見者を疑うのは、捜査の基本でしょ?毎晩、恐い嫁さんにご教授頂いているのでは?」
「先輩も、嫌味、キツいっす。」
午後2時半。中嶋のアパート。
殺風景な部屋にしては、三面鏡がある。PCは無いが・・・。
「あった。」三面鏡を弄っていた先輩が見付けたのは、『金のナイフ』だった。
そして、ノックの音が聞こえた。
午後3時半。山野家。
「そうなんですよ、奥さん。警察ってね。根堀り葉堀りするんですよー。あ、私が言ったって言わないで下さいね。山野さんは商社マンなんですね。前から心臓悪かったのかな?」
「いえ。いつも私達夫婦はウォーキングするんですが、よくジョギングするのをお見かけしましたよ。」
「そうなんですか。お気の毒にねえ。じゃ、ちゃちゃっと、後片付けして帰りますから。山野さん、どこの病院でしたっけ?」と、スマホ片手に持って、ご近所さんに尋ねた。
午後4時半。捜査一課横の大会議室。『切り裂きジャック殺人事件』本部。
取り調べ室から、大曲先輩、蘭子、管理官、神道課長が出て来た。
神藤課長は、すぐに出て行った。
管理官は、説明した。
「まんまと騙されるところだった。村松が、それとなく病院に行ったら、山野孝夫氏は元気そうだった。そこで、私が、病院にそれとなく病状を確認した。確かに心筋梗塞の跡はあるが、もう治っている。一時的な圧迫だろう、と診断されていた。大曲くん達が、中嶋のアパートで遭遇したのは、アパートの本当の借主、白鳥由美子だった。白鳥は、中嶋の困窮を見て、以前借りたままのアパートの住まわせた。三面鏡は、仕掛け収納スペースがあった。イタリアの家具職人の仕事だ。そして、中嶋は、由美子にSDを預けていた。SDの中にリストがあった。特殊詐欺の被害者と詐欺チームのリストだ。山野孝夫は、そのメンバー、指令塔だった。妻役の静香は妻じゃなく、仲間だった。娘んかいない。自宅で拷問し、偽装してから、救急車を呼んだんだ。半グレは、業務提携で、実態は知らなかった。中嶋は、切り裂きジャックを演じることで、組織から逃れたかったんだ。ところが、奴らは警察より早く動いた。」
午後7時。眩目家。
「素直に出頭すれば良かったのにね、中嶋。」
「必死だったんだろう、2つの組織から追われていたから。お前は、逃げられないからな。執行猶予100年だ。」
ええ?俺、何か悪い事した?
―完―




