108.忘れる筈のない怨み
「今回のガイシャは、高校生の宇野浩一。頭を乱打されていて、目撃者多数。映画館を出た所で、言い争う姿を何人もの人間が見ている。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
神道助六・・・捜査二課課長。
新垣舞・・・捜査四課課長。警部補。
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※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
午後1時。捜査一課横の大会議室。『ハンマー殴打事件』本部。
管理官は、説明を始めた。
「今回のガイシャは、高校生の宇野浩一。頭を乱打されていて、目撃者多数。映画館を出た所で、言い争う姿を何人もの人間が見ている。ホシは、駐車場で、自分のクルマの中から取りだしたハンマーで殴打をした。そして、逃走中。目撃した人や監視カメラから、ホシとガイシャは知人と判る。先日、大学生を、見知らぬ男がハンマーで打撃した事件とは違い、何らかのトラブルが過去にあったものと推測出来る。問題は、宇野が現役大臣の息子、という点だ。」
「他の事件をさておき、早く片づけろ、と?」
「そう言うな、開光君。重傷ではあるが、宇野は亡くなってはいない。」
「忖度する訳じゃないが、父親の大臣は悪名高い。大臣の身替わりに襲撃された、と言うことですかね?」と、大曲先輩は言った。
「普通に考えれば、そういうことになるな。辻さん、気を遣うかも知れないが、高校の方をお願いします。大曲は、ガサイレの積りで徹底的に調べろ。」
「「「了解。」」」
午後2時。宇野家。
「大臣には聞かないんですか?先輩。」
「狸にか?ばかされるだけだぞ。」先輩は、鼻で笑った。
俺は、やることがないので、宇野浩一の机とPCを調べていた。
「やってるなあ、バチバチ。SNSで大喧嘩だ。どっちもどっちだけどな。」
「大臣の家、詰まり、ここは公開されているんですか?」
「『資産状況』ってのがあるだろ?当然、大体の位置は分かる。ホシは、出入りするガイシャの後をつけたんだ。」
「内容は分からないけど、その喧嘩がネット上でなく、リアルに展開したんですね。」
「お前、うまいこと言うな。」
1時間後。俺達は引き揚げた。
午後5時半。捜査一課横の大会議室。『ハンマー殴打事件』本部。
取り調べ室から、蘭子、大曲先輩、管理官が出て来た。
「公式発表には、大臣の政策方針に腹をたてた若者が義侠心の積りで乱暴を働いた、とする。実際は、ホシが、婚外子ということだ。つまり、非嫡出子だ。早い話、お妾さんの子供だ。相続で揉めて、ハンマーを使用したことを素直に認めたよ。」
午後7時半。眩目家。
「お前、外にオンナ作ったら、ハンマーじゃすまないからね。」
「判ってます。」
「証明しろ。」
証明。毎日、証明しているのに。
―完―




