107.地震は恐い
ある県で、地震が起きた。
震源地は遠かったが、局内でも大きく揺れた。
ハプニングが起こった。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
神道助六・・・捜査二課課長。
新垣舞・・・捜査四課課長。警部補。
=================================
※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。
だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。
懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。
実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。
従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。
大会議室は、特殊捜査チーム専用である。
事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。
俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。
課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。
午後9時。あるTV局。
ある県で、地震が起きた。
震源地は遠かったが、局内でも大きく揺れた。
ハプニングが起こった。
看板とも言うべき、メインのアナウンサーが机の下に潜り込み、震えているのだ。
異変を察知した、番組ディレクターとプロデューサーは、カメラをサブのアナウンサーに切り替えた。
「ただ今、〇〇県で、震度6の地震がありました。震源地と離れていますが、局内でも強い揺れを感じました。地元の局と繋がりましたので、そちらから中継して頂きます。
日頃、口を歪ませ、政権批判をしているアナウンサーだったが、思わぬ所で馬脚を現わした。
それから2日間、オールドメデイアは庇ったが、SNSでは大炎上した。
『あんのないアンパン』という渾名の、そのアナウンサーの渾名が変わった。
『腰抜けあんのアンパン』という名前に。
『こしあん』の変わりに『腰抜けあん』と揶揄したものだった。
2日後。午後9時。
TV局の駐車場で警備員は、雨の中。不思議な自動車を発見した。
タイヤ部分と車の下部分が、セットでよく使われるパネルで覆われていたのだ。
近づくと、異臭がする。
警備員は会社に電話の上、警察に電話した。
午後1時。捜査一課横の大会議室。『アナウンサー不審死事件』本部。
管理官は、説明を始めた。
「今回のガイシャは、テレビ局アナウンサー大場篤志。発見者は、同局と提携している警備員網田圭祐。昨夜、巡回中に発見した、網田の話では異臭がするとういうので、科捜研も手伝って、慎重に調べると、新種の神経ガスだった。大場は自分の自動車の下に閉じ込められ、神経ガスを吸ってしまった。新垣課長。」
「この神経ガスですが、麻酔などに使われる『笑気ガス』に似ていて、しかし、有毒です。封入されているボトルも、『笑気ガス』用のものを使用しています。別件でガサイレしたところ、1本紛失している、と報告しました。所持していたのがバレているのに、嘘をつく理由はないと思います。ホシは、何らかの事情または手段によって、その1本を入手し、ガイシャに適用したのだと思います。」
「怨恨で犯行に及ぶ際に、都合のいい武器を手に入れた、という訳か。どうするね、開光くん。」
「ガイシャを恨んでいる者は多い。総理を初め、気に入らない相手は口汚く罵る。コメンテーターのように。早く降板させろ、という視聴者からの投書が多いそうです。」と、珍しく辻さんが話した。
「私、あいつ、嫌い。」と、智子が言い、村松が頷いた。
「じゃ、辻さん、テレビ局関係をお願いします。大曲は、大場のPCに手掛かりを見付けろ。多分、自分へのクレームも集めている筈だ。」
午後2時。大場のアパート。
管理人にカギを開けて貰った。
意外にも、独身だった。
スーツが数着と普段着が数着。本宅じゃないのかな?
めぼしいものがないのを大曲先輩に相談すると、こう言った。
「大物代議士と繋がっていたよ。大柄な態度は後ろ盾があるからだ。こっちは課長に行って貰おうか。」
==========
午後3時。草間信介の自宅。
蘭子は、草間と面談し、大場との関係を正した。
「黒幕だなんて、とんでもない。調べて貰ったら判るけど、大場君は、郷里が同じでね、高校の後輩に当たるんですよ。」
「詰まり、先輩後輩との関係で、次の選挙で押している訳ではないのですね。」
「記者みたいなこと言うんですね、課長さん。」
「お気を悪くなさらないでください。殺人事件ですので、被害者と交流のあった方々皆さんに『確認』作業を行っているのです。他の方には、他の担当者が確認に行っております。」
「そうですか。ご苦労様です。」
「では・・・あ、秘書野方は、先ほどの女性お一人なんですね?」
「ああ。欲張って何人も雇う者もおりますが、私は有能な秘書なら一人で充分だと考えております。」
「ごもっともです。では・・・。」
========
午後3時半。大場のアパート。
「繋がったな、眩目。」大曲先輩は嬉しそうに言った。
午後5時半。捜査一課横の大会議室。『アナウンサー不審死事件』本部。
取り調べ室から、蘭子、大曲先輩、管理官、新垣課長、神道課長が出て来た。
新垣課長と神道課長はすぐに出て行った。
「ホシは、草間代議士の秘書塩見江威子。塩見は、新垣課長らが『挙げた』日本庚申会の幹部の姉だった。庚申会の倉庫から、神経ガスをくすねた塩見は、騙して抱いた大場を、この際、と思い、番組サブアナウンサーの黒井美佐子とつるんで、大場をクルマの下に追い込み、殺害した。『地震だ!』と、叫んだら、自分からクルマの下に潜り込んだ。他にも、代議士の弱みを大場は掴んでいて、揺すっていた。また、政治家絡みの大捕物になった。私は、これから検察に向かう。」
午後7時。眩目家。
蘭子が笑っている。
「どうしたの?ねえ、ねえ、ねえ。」
「填まったな、真吉。」
しまった。
―完―




