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103.亀甲縛り

停留所前方に異物を発見したワンマンバスドライバーが、バスを降りて確認した。

全裸の女が、横たわっているが、明らかに死んでいる。


 

 ========== フィクションです ===========

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。

 井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。

 村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。


 辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。


 赤井悦夫・・・機動捜査隊の警部補。

 郷原俊喜・・・警邏課課長。

 池野藤治・・・生活安全部保安課課長。警視正。


 =================================


 ※警視庁捜査一課。蘭子が課長になる前は、課長が全部一課を仕切っていた。当然だが。

 だが、村松のいた所轄でパワハラ・イジメがあり、合同捜査に訪れた際に、当該の相手数人の股間を蹴った為、警視庁内で問題になった。

 懲戒解雇になる替りに、一課の決裁を各係長が受持ち、蘭子は「お飾り」の「窓際族」になった・・・というのが、表向きの情報。

 実は、志摩管理官が「自分の監督下」に置くという名目で、「特殊捜査チーム」を結成した。蘭子の判子は、各係の係長が持ち、替りに決済印を押す。蘭子は特殊捜査チームの長として指揮を執っている。

 従って、ドラマ・映画のような「大事件の時だけの捜査本部」は置かない。

 大会議室は、特殊捜査チーム専用である。

 事件は頻繁に起こるので、大会議室が一日中空っぽなのは、希である。

 俺は、「ちょっとしたこと」があって、課長の夫である。

 課長の元カレである、大曲先輩とコンビを組んでいる。


 午前8時半。ある路線バスの通る道路。

 停留所前方に異物を発見したワンマンバスドライバーが、バスを降りて確認した。

 全裸の女が、横たわっているが、明らかに死んでいる。

 ドライバーは、所属する支社に連絡。支社から警察に連絡が行き、近くに来ていた警邏課のパトカーがいち早く現着した。

 間もなく、機捜もやってきた。

 赤井は野次馬整理及び現場保存に応援を呼んだ。

「何です?これ。」

 やってきた鑑識班。秋野は、思わず言った。


 午後1時。捜査一課横の大会議室。『路上変死体遺棄事件』本部。

 管理官は、説明を始めた。

「今回のガイシャは、道上道子。偶然だが、しゃどうのどう、だ。発見者は路線バス運転手。全裸で身元確認が出来ない状態だった。赤井警部補の機転で口をこじ開けると、歯の治療痕があった。全日本歯科医師会に照会したところ、大阪・難波のクリニックで3日前に虫歯の治療を行っていた。身元が判明したのは、歯医者のネットワークのお陰だ。しかし、井関さん、これって・・・。」

「ああ、亀甲縛りと言って、古くは拷問にも使われたが、SMプレイで使われることもある。だが、ガイシャが、そういうプレイをしていたかどうかは・・・。」

「呼んだ?蘭子ちゃん。」

 ひょっこり顔を出したのは、剽軽な顔の保安課の課長である、池野警視正。

 池野さんは、蘭子のファンで『蘭子ちゃん』と呼ぶ。

 部下には絶対見せない、もう1つの顔だ。

 普段は『般若』だが、『ひょっとこ』にもなる。

 今は、『ひょっとこ』だ。

「おじさま、助けて。ガイシャが亀甲縛りなの。」

「亀甲縛りのプレイする店は都内には2軒しかない。任せといて、蘭子ちゃん。」

 そう言って、そそくさと、皆を無視して出て行った。

 くすくすと笑い声が聞こえる。

 実は、蘭子が現場復帰出来た黒幕の一人でもある。

「何か、蕁麻疹出て来そう。」と、智子が言った。

 「お前、ホントのこと、言っちゃダメ。ニン!!」と井関が言った。

「えーと、どこまで言ったかな?あ、井関さん達が口から歯型を取って、送った訳だが、ガイシャが放り出された時の目撃者はいない。停留所のすぐ側にコンビニがあるのだが、生憎改装中で、ひとけが無かった。ホシは、それを知ってて、明け方、遺棄した、と思われる。」

「辻さん達は、プレイの店がわかり次第、店の店員から聞き込みしてください。大曲達は、大崎の、ガイシャの住所で手掛かりを探してくれ。」

 午後2時半。道上のマンション。

「どう見ても、普通のOLの住まいえすねえ。でも、家賃が高そうだ。」

 俺は、クローゼットを探し回ったが、めぼしいモノはなかった。


「成程ナア。」と、大曲先輩は、PCの前で唸った。

 俺のスマホに蒔さんからの電話があった。「今、替わります。」と言って、俺はスピーカーをオンにして、先輩にスマホを渡した。

「大曲さん。2軒の内一軒は、流行り病の時廃業していて、『暗中模索』って店の常連客にガイシャがいました。」

 向こうも電話を交代した。

「大曲くん。店は1時間きりのプレイで、後は客と店員の交渉次第らしいが、最近は、それは禁止になっているらしい。」

「店員の名前は名倉ですか?」

「ああ、その通りだ。手掛かりがあったのか?」

「日記にですね、名倉はナマクラだから役に立たない、って書いてます。その代わり、SNSで知り合った相手に『相手』させていたようです。じゃ、相手に辿り着けないかと思ったら、名前と住所が出て来ました。半グレの『いってまえ商会』です。いってまえ商会の本店は、大阪・難波です。」


 午後6時。捜査一課横の大会議室。『路上変死体遺棄事件』本部。

 取り調べ室から、大曲先輩、蘭子、管理官、池野課長、郷原課長、神道課長が出て来た。

 池野課長、郷原課長、神道課長は、すぐに出て行った。

「結論から言うと、ガイシャはプレイ中の過失死だった。ホシの板橋浩二は、ガイシャが求めるので、激しくやり過ぎた、と言っている。そして、死体遺棄。あの辺に土地勘があったのも当然で、現場から100メートル先が自宅だ。『お宮入り』する、と勝手に算段したようだ。二課は、この会社を以前からマークしていたので、ガサ入れに向かった。」

「一体、どんな快感だったのか・・・。」と村松が言いかけたのを「そりゃあ、いったい(痛い)快感さ。で、遺体になった。」と、大曲先輩は駄洒落を言った。

 蘭子に、小突かれた。

「マイナス5点。」

 皆は、笑った。


 午後7時。眩目家。

「今日は、青椒肉絲か。旨いね。」

「ああ、イタめるのは、得意だからな。後で、真吉イタメな。」


 恐い。


 ―完―









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