第74話 記録庁vs宴会魔族──予算をめぐる攻防戦
正式認可された記録庁は今、繁忙期を迎えていた。
「葵さん、今月の記録庁予算、なぜか“きゅうりの浅漬け代”が30%増えてるんですけど!」
「それ、ユグの講座の参加者が増えて“盆踊り後の茶菓子会”拡張したからだよ。実質文化振興費!」
「そんな項目あった!? てかお茶会ってどこから文化なの!?」
俺──高野一朗は、記録庁長官として日々ログと戦っていた。もちろん、戦う相手は“帳簿”だけではない。
その日、記録庁の会議室では一件の不可解な予算申請が提出されていた。
『宴会魔族連盟より、国家助成金の申請──名目:魔族文化維持活動、内容:ビール120樽・焼肉用ドラゴン肉15体分・金粉入りカクテル各種』
「うん。これは完全に宴会だな」
「もしくは胃袋によるテロだね」
申請者は“宴会魔族”──かつて魔王軍に仕えたが、現在は自称・友好勢力として王都郊外に居を構える、一癖も二癖もある魔族集団である。
そして翌日。
「いらっしゃ〜〜い! ようこそ記録庁へ!」
庁舎のロビーに現れたのは、筋骨隆々の赤い肌に羽根つき帽子をかぶった魔族たち。
「申請内容の件で、直談判に参った!」
「いや、まずは書類で申請してって言ってるでしょ!」
「書類は紙より“魂”で勝負じゃろうが〜っ!」
トップで現れたのは、“乾杯将軍ガブロス”。肩には常時ビール樽を背負い、口癖は「一口飲めば皆兄弟!」
彼らは、記録庁に「宴会文化を国の伝統に登録してほしい」と本気で要求してきた。
「一朗、どうする?」
「……よし、交渉に入る。こちらにも“宴会記録法”を整備する義務がある」
「え、それあるの!?」
そして始まった前代未聞の交渉──いや、実質“記録をめぐる宴会バトル”が展開される。
葵が持ち込んだ“聖女ロッド型収支記録スキャナー”が、魔族たちの飲み食いログを逐一記録。
「ビール一口、肝臓圧:中。テンション上昇ログ──大」
「焼肉五枚目にて“本音トーク”ログ発動確認!」
一方クラヴィスは、財務軍師モードで参戦。
「予算申請の半分が“おひねり”としてドラゴンガールズに回っているぞ!」
「宴会の闇、深いな!」
そしてユグはなぜか、“ログをリズムで伝える宴会ビート舞”を即興で創作し、魔族側の心を掴んでいた。
「ログ♪ ログ♪ 支出記録〜♪ 予算は大事〜♪」
「なにこの祭り感!!」
最終的に、両者のログが突き合わせられ、妥協案として“試験的文化助成金”が承認された。だがその条件は──
「宴会の成果を“国民向け文化番組”としてログ配信すること」
その夜、王都では前代未聞の生配信番組が放送された。
『今宵もログで乾杯! 宴会魔族と学ぶ文化と予算』
視聴者数、記録庁史上最多。
「……あれ? これ、国の認知改革として最強じゃね?」
「記録って、なんでもありなんだな……」
こうして、記録庁はまたひとつ“無茶な予算”をログの力で捌き、王都の行政機構に新たな風を吹き込んだのだった。




