第73話 爆誕!記録庁(仮)──民意がノってきた
記録庁(仮)──その存在は、最初こそ“便利な雑用係”扱いだった。
ところが。
「一朗さん、今週のログ集計、ありがとね! うちの店、在庫ロス減ったわ〜」
「近所の子が“ログ観察日記”で絵日記書くようになったんですよ! 夏休み前に奇跡です!」
なぜか市民のあいだで“記録スキルによる生活改善”がじわじわと広まり始めた。
特に反響が大きかったのは、先日の王様のゆるゆる記録展。
あの展示を見た市民たちはこう思ったのだ。
「記録って、固いものじゃないんだ……なんか、使いたくなるな」
こうして、俺──高野一朗が責任者(仮)として運営する記録庁(仮)は、突如として注目の的となった。
ある朝、俺が庁舎の仮設デスクでログ管理していると、扉がバンッと開いた。
「記録庁(仮)の代表、一朗氏だな!」
「え、誰!?」
現れたのは、王都行政局の政務担当官。いかにも“バリバリ仕事してます”な眼鏡女子だった。
「王城より正式命令。本日をもって記録庁、仮を取って正式庁舎へ昇格とする!」
「うわああああ! 勝手に肩書き変わったあああ!」
その日の午後、王都広場には新たな横断幕が掲げられていた。
祝・記録庁 正式認可!
王都市民の反応は異様なほどにポジティブだった。
「これで我が家の夫もログされてサボらなくなるかしら」
「税金の無駄遣いとか“見える化”されるんでしょ? マジ助かる〜」
そして夕方には、市民自作の記録庁音頭なる謎の盆踊りが始まり、なぜかユグがリードダンサーとして中央でくるくる回っていた。
「ログ音頭、リズムに合わせて申告しよう〜♪」
「歌詞がピンポイントすぎる!!」
気づけば、周囲は記録スキルを活かした市民参加型改革の風潮に染まっていた。
「なあ葵……これ、もしかして……革命、始まってない?」
「うん……たぶん記録革命って名前つきそうなレベルだよ」
王都の行政機構は着実に変わりつつあった。
庁舎の裏では、クラヴィスが古文書のデジタル魔法化に没頭し、ユグは記録舞踊教室を開き、葵は新たな聖女記録補助法なる法案を作成中だった。
もはや、この町のあちこちにログの風が吹いていた。
そして、その中心に──まさかの俺がいた。
「いやいや……俺、ただの元・派遣経理だぞ……?」
だが、これが運命というやつかもしれない。
「記録は……俺たちの生き様だ」




