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第71話 記録整理は国の基礎──家計簿から始まる革命

 王都・行政記録局──略して“キロクョク”。


 ここ最近、俺はこの建物の一角、元・倉庫だった場所で机にかじりついている。


「ふぅ……領収書の山、今日も大量……」


 そう、俺はいま“王都全家庭の家計簿を統合整理する”という前代未聞のプロジェクトを任されていた。いや、押しつけられた。


「ちょっと待て、これ王様になる前に経理担当として過労死するのでは……?」


「一朗くん、今日のおやつ記録つけておいたよ♪」


 葵が魔法でホカホカの焼き菓子を浮かせて持ってきた。どうやら最近は“食事記録”にやたらハマっているらしい。


「わたしのロッド、カロリー入力で光る仕様にしてみたの!」


「どういう運用!? 戦闘時にバナナ食べたら威力増すの!?」


 一方クラヴィスは淡々と住民台帳をデジタル魔導化しており、ユグはなぜか“公共ログ踊り教室”なる文化事業を開いていた。


「ログ踊り、精神統一にもなるし、ついでに記憶にも定着するんだよ~♪」


 たしかに近所の子どもたちには大人気だった。なんかこう……着実に記録中心国家になってきてないか?


「よし……この記録技術、行政にも応用してみよう」


 俺は意を決し、“生活ログ分析魔法陣”を王都中心に展開。各家庭の魔法ポット、冷蔵庫、入浴ログ、光熱魔法水道まで、細かすぎる記録が一括で手帳に集約されていく。


「うわ……ガスの無駄遣いとか一発で見える……」


「これはもう家計簿じゃない、生活レントゲンだな」


 俺のスキル〈記録スキャン:生活領域〉が進化し、街全体が可視化された。


 そこから“浪費系魔法漏れ”や“影響を与える悪質経費魔法”が明らかになり──


「これ……税務査察の神が感動してる!?」


「はい。神殿から正式に“帳簿の祝福”降りました」


「やめて!? 俺、ただの元・派遣の経理職員だから!!」


 でも、俺の手帳が神々の標準帳簿になったあたりから、王都にある変化が起き始めた。


 ──無駄遣いが減った。

 ──食堂のメニューが栄養バランスになった。

 ──深夜残業が激減した。


「えっ、地味に革命起きてない?」


「それにね、記録されるってだけで、“見られてる感”があってサボれないんだって」


 庶民の声も変化していた。


「今日、ちゃんとログ見直したら余計な出費なくなったよ」

「うちの旦那、残業サボらなくなったわ」

「猫の餌代が減ってない? ログでバレた?」


 そんな中、王都行政から正式に通達が下った。


『記録庁の設立について協議する』


「ちょ、マジか!? 勝手に省庁できそうになってる!!」


「当然、一朗くんが“初代長官”でしょ?」


「いやいやいや、記録スキルで国動かすとか俺、ほんとに国のUSBメモリじゃん!?」


 こうして王都の革命は、家計簿から始まり、行政改革へと発展していく。

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