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第57話 記録の夜明け──新しい歴史を刻むために

 朝だ。

 誰がどう見ても、完全に、真っさらな朝だ。まぶしいくらいの陽光、どこまでも青い空、そしてやたら元気な鳥の鳴き声──うん、世界は生きてる。


 俺はレヴェルスの広場に立って、のびをひとつ。うん、肩が痛ぇ。異空間での戦闘後遺症か、はたまたただの寝違えか。


「ふぅ……死んだかと思ったぜ」


「一朗さん、それ十回くらい言ってます」


 隣からツッコミが飛んできた。俺の彼女、篠崎葵さん。柔らかい微笑みを浮かべながらも、目は笑っていない。こえぇ。


「いや、でもほんとに危なかったろ? あれ、半分世界崩壊してたし」


「でもちゃんと戻ってこられたじゃないですか。一朗さんの声、ちゃんと聞こえましたから」


 そう言って、葵が俺の腕にそっと手を添える。そのぬくもりが、今こうして生きていることを確かにしてくれる。


 広場の向こうでは、子どもがかけまわってる。おばちゃんが屋台で煮物を売ってて、クラヴィスが端末片手に相変わらずむずかしい顔で計測中。


「記録の断片補填は進行中。黒羽核の影響は完全消去。うん、統計的にも奇跡的な修復率……」


「クラヴィス、朝からそれ? ほら、コーヒー飲め、コーヒー」


「カフェイン摂取は計画的にだ。あとその粉、コーヒーじゃなくて大麦焦がしたやつだろ」


 俺のジョークにも即答かよ……ほんと頼りになるけど、たまには笑ってくれ。


 そこへユグが駆け込んできた。なんか、いつも走ってるな、あの子。


「おいおいおい! あんたら、のんびりしてる場合じゃねぇよ!」


「朝から元気だな、おはよう」


「おはようじゃねぇ! 王都から記録庁のエラいさんたちが来てんだって! しかも“直々に召集”だとよ!」


 ……はい、朝の平和タイム終了のお知らせ。


「記録庁って……また面倒な感じの連中来たなぁ」


「仕方ないだろ。お前、世界ひとつ救ったんだから」

 クラヴィスが言いながら、ちらりと俺を見てくる。


「いやいや、俺が救ったっていうか、みんなで……ってか、俺は最後ちょっと叫んだだけじゃ……」


「その“ちょっと叫んだ”が決め手でした」

 葵が真顔で言ってくる。照れるからやめろ。


「まぁ、呼ばれたからには行くしかないか」


「ええ、一緒に行きましょう。一朗さん」


 そう言って、彼女が手を握ってくる。

 俺もその手をぎゅっと握り返す。


「さて、俺たちの物語、次は“報告と釈明編”かな」


「もしくは、“伝説の始まり編”かもしれませんよ」


「どっちにしても胃に悪そうだな……」


 笑いながら、俺たちは王都への道を歩き出す。


 空は高く、雲ひとつなかった。

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