第42話 第七王女セラとの遭遇──竜騎士の契約
あの騒動のあと、俺たちは街の兵舎に案内された。
……もちろん、勝手にドラゴンに乗って倒した俺たちは、ある意味で“超危険人物”扱い。
とはいえ、街の指揮官たちも我々の実力を認めざるを得ず、しばらくの間だけ滞在を許されることになった。
で、翌朝──
「ようこそ、お越しくださいました。私は第七王女、セラ=レヴィリアと申します」
銀髪の少女騎士が、今度はちゃんとしたドレス姿で現れた。
……昨日、ドラゴンと戦ってたの、この子だったのか!?
「き、昨日の暴れ竜ライドの人じゃ……!」
「えぇ。あれは訓練用の個体だったのですが、魔力の暴走で制御を失ってしまって……お二人の力がなければ、街ごと危なかったかもしれません」
セラ王女は深々と頭を下げる。……やたら礼儀正しい。
篠崎さんがささやくように俺に言った。
「高野さん、まさか王女様が直々に挨拶に来るなんて……これ、国絡みの案件ですよ」
「なんか、俺たち“公式ルート”入りしちゃった感あるな……」
するとセラ王女は、もう一歩こちらへ進み、まっすぐに俺を見つめる。
「高野様。お願いがございます」
……でた。この世界、すぐお願いしてくる。
「一時的で結構です。私の“竜騎士契約者”になっていただけませんか?」
「……へ?」
完全に聞き間違いかと思った。
「竜騎士って……俺、ドラゴンの操縦免許とか持ってないけど?」
「いえ、高野様の《記録》スキルでなら、竜とのシンクロが可能かと。私の騎竜が、あなたに非常に好意的な反応を示しておりまして」
──え、あの暴れてた黒竜、懐いてるの!?
たしかに《記録》を通じて行動パターンは読み取ったが……懐かれてる自覚はまるでない。
「どうしましょう、高野さん……」
「俺、ついにドラゴンライダーになるの? そんなテンプレある? 派遣社員→聖女→農業→AI都市→今度は竜騎士?」
「ジャンル迷子ですね、もう」
頭を抱える俺たちに、セラは真剣な表情で続けた。
「戦争が迫っています。三国のうち、隣国のゼルガルドが“神竜復活”を掲げ、竜を軍事転用し始めたのです。こちらも対抗する戦力が必要になります」
「おいおい、なんか国際問題に巻き込まれてるぞ俺たち」
だが、セラの真摯な目を見て、俺はため息をついた。
「……わかったよ。一時的って言うなら、契約してみる。どうせ、この先もろくでもない展開しか来ない気もするしな」
「一郎さん、またそうやって……」
篠崎さんが呆れながらも、微笑んだ。
こうして俺は、ヴェリディア王国第七王女と《竜騎士契約》を結ぶことになった。
契約の儀式では、竜の額に手を置き、名前を呼ぶだけ……だったはずが──
「グルァアアアアアッ!!」
「ちょっ!? 噛まれた!? 噛まれてない!? どっち!?」
「……これは“絆の印”です。がぶっと軽く噛まれるのが儀式の一環でして……」
「ドSかこの竜!? 絶対素でやっただろお前!!」
篠崎さんが、くすくすと笑っている。
「……でも、一朗さん。よく似合ってますよ、竜騎士」
なんかちょっと、照れた。




