第4章 第41話 塔の果て、大陸へ──ドラゴンの咆哮
それは、AI都市での事件の直後だった。
蒸気と機械仕掛けに満ちた都市で、俺たちは感情否定派との戦いを制し、《異界ゲート》の存在を知った。
「この先に、“塔の外”があるらしいの」
案内人ユグがそう告げたとき、俺も篠崎さんも唖然としていた。
だが、ゲートは実在した。都市の中心、かつて使われていた旧都市制御中枢。その最深部に、“塔の最上層へつながる光の階段”が出現していたのだ。
……そして今、俺たちはその《転界ゲート》と呼ばれる光の門をくぐった。
その瞬間、視界がひっくり返った。
文字通り“別世界”に投げ出された俺たちは、空中に放り出されて──
「……うわっ! 空が、空が!?」
篠崎さんの声が、震えている。いや無理もない。
目の前に広がっていたのは、雲を突き抜けるほどの黒い竜。
翼を広げたその姿は、まるで空そのものを裂くかのようで。
「た、高野さん……もしかして、ドラゴンって……」
「……ああ、あれ絶対ラスボス枠だな」
俺たちが到達した新天地は、“ヴェリディア大陸”と呼ばれる世界。
草原と山岳、城と魔法塔が入り混じる中世ファンタジー風の世界観──だが、この大陸には明確な“戦争の気配”が漂っていた。
見渡す限りの地平に、砦や兵士、そして──空には複数のドラゴンたちが旋回している。
「……なんか、剣と魔法だけじゃなくて、戦争までフル装備っぽいですね」
「そんでもって、空飛ぶ核兵器が何体もいるの怖すぎるんだが」
俺たちはひとまず近くの街へと避難することにした。
すると、その街の門前で──いきなり、爆音とともに空から竜が舞い降りてきた!
竜の背には一人の人物。銀の鎧に身を包み、青いマントを翻す少女──
「皆、退避せよ! この竜は……暴走個体です!」
「うぉい!? いきなりドラゴン暴れてるんですけど!?」
その少女は俺たちの前に飛び降り、竜を引きつけるように指示を出す。
「あなたたち、民か!? その場から離れて!」
「いや、たぶん転生者です!」
「……は!? なんですって!?」
竜の炎が街門を焼き払い、周囲の兵士が次々に倒れていく中、俺は篠崎さんと共に前に出る。
「高野さん、《記録》の出番です!」
「よし、やってやろうじゃん!」
俺はドラゴンの飛行パターン、攻撃動作、目の動きまでを高速記録。
「パターン発見──滑空後に翼の角度が右に傾くタイミングが隙あり!」
俺たちはタイミングを合わせ、竜の背に飛び乗った。
そのまま、暴れる竜の首筋に篠崎さんの《ホーリーマジック》が炸裂する!
「ホーリー・バースト!!」
光が炸裂し、竜は苦悶の咆哮を上げてその場に倒れ込んだ。
「や、やった……のか……?」
少女騎士が駆け寄ってきて、目を見開いた。
「まさか、素手であの飛竜を……あなたたち、何者なの?」
俺は息を整えつつ、軽く手を上げた。
「ただの派遣社員です。いや、元だけど」
「えっ……えっ……?」
その場に集まる兵士たちと、混乱する少女騎士。
──こうして、俺たちは《戦う三国》が支配する大陸ヴェリディアへと、否応なく巻き込まれることになったのだった。




