第40話 恋と論理の最終戦──“感情同期バースト”発動!
「感情波動計測、現在62%。機械兵の活動停止ラインに達していません」
冷たい電子音がホール中に響き渡るなか、俺と篠崎さんは、巨大な機械兵──型番《Z-ER0》と真正面から向き合っていた。
「くっそ、思ってたより硬いなアイツ!」
「兵器だから当たり前です!」
その巨体は蒸気を吐き出しながら、片腕をぶん回して襲ってくる。
「一朗さん! 右から来ます!」
「《記録》──モーション解析開始! ……左足に重心偏り発見!」
俺は床を蹴って前方へ転がり、回避しつつ木剣で機械兵の膝裏を叩く。
「反応なし!? ……やっぱ木の棒じゃ限界か!」
観客席ではルクシアAI市長が静かに見守っていた。
《記録データ感情値、72%。残り28%──サンプルペア、さらなる恋愛高揚が必要です》
「いや無茶言うなよ!!」
そのとき──
「──一朗さん!!」
篠崎さんが叫んだ。その瞳に、涙のような輝きが浮かぶ。
「……私、本気で好きになってきてるの! データじゃなくて、本物の気持ちで!」
「……は?」
その言葉が、俺の心に直接響いた。
同時に、体の内側から熱い何かが噴き出してくる。
「《記録》──感情同期、リンク開始!」
《感情同期率:98%……感情共振現象発生》
ホールが一瞬、光に包まれる。
次の瞬間、俺の背中に金色の羽根のような記録陣が浮かび上がり、周囲の空間が変質していく。
「え、なにこれ!? 記録が……空間ごと上書きしてる!??」
観客たちがざわつく中、俺は記録スキルの最深層に到達した。
──《記録領域拡張・共鳴式モード》──
「機械兵Z-ER0──記録上、恋愛禁止令の施行理由は“理性の喪失”……だが、それは“希望”の喪失だ!」
俺は叫びながら、機械兵の中央コアを記録の剣で貫いた。
カキィィンッ!
金属音とともに、機械兵がその動きを止め、そして崩れ落ちた。
《感情記録完了。恋愛保存プロジェクト、第一フェーズクリア》
静まり返るホールの中、篠崎さんがぽつりと呟いた。
「──これって、デートの続きだったのかな」
「どんなデートだよ」
そう言いながら、俺は彼女の手をぎゅっと握った。
AI市長がやや目を見開く。
《判定:……羨ましい》
「ルクシア、お前今感情持ったろ!? ちょっとバグってるぞ!」
だがそれは、きっと悪いことじゃない。
記録と感情が融合するこの都市で──俺たちの恋と冒険は、まだまだ続くのだから。




