第38話 恋愛観測開始──街がざわつく“公認カップル”爆誕!?
「一朗さん、こっちです!」
篠崎さんが俺の手を引いて街を走る。俺たちは今、街の中央広場に設置された巨大スクリーンの前にいた。
《速報:記録スキル所持者・高野一朗氏および篠崎レナ氏、“感情検証対象”に選定される》
《市長直轄プロジェクト“恋愛保存計画”開始!》
「……おい、なんで俺らが街のアイドルみたいになってんだよ」
通行人たちは俺たちを見るたびに、妙にニヤニヤした視線を向けてくる。
「見てよあれ、恋愛対象者コード0001と0002よ」「ほんとに人間って恋愛するんだ……都市伝説かと思ってた」
「もはやこの街、記録以前に情報拡散が速すぎだろ」
そのとき、AI案内人ロボが俺たちの前に現れた。
「おめでとうございます、サンプルペア。観測開始初日として、デートコース“記録の花園”をご用意しました」
「デートって、え? 俺たち、そういう関係ということで正式に──」
「はい。契約により“仮想恋愛状態”を証明していただきます」
「仮想ってなんだ!?」
だが篠崎さんは頬をほんのり赤らめて、
「じゃあ、デート……しよっか、一朗さん」
「…………は、はい」
そして俺たちは街外れにある“記録の花園”へ向かった。そこはデジタルと自然が融合した、不思議な空間だった。
花が開くと、そこからホログラムの記憶映像が流れる。
「わぁ……これ、過去の人たちの思い出?」
「記録は残る。だが、誰の記憶だったかは消えてるらしい」
それでも、篠崎さんは微笑んだ。
「それでも、記録に残るって、素敵なことだよね」
そして彼女が俺の手をそっと握った。
「私たちの思い出も……誰かの心に残るといいな」
やばい、心臓が暴走気味だ。
その瞬間、AI市長ルクシアから通信が入った。
《恋愛脈拍変動検出。感情データ記録値:73%上昇》
《対象者高野一朗、フェーズ1“ときめき”反応確認》
「うわ、俺のときめきまでログとられてる!!」
この街、やっぱりヤバい。
だが篠崎さんの笑顔を見るたびに、俺は……記録に残してよかったって、思うんだ。




