第35話 旅の終わりと、新たな塔──“異界ゲート”と世界境界点
境界の村を離れ、俺たちは塔の“出口”と呼ばれる場所に立っていた。
見上げれば、そこには空間が裂けたような光の門──まるでSF映画のワープゲートみたいな、異様な存在が浮かんでいる。
「……これが“異界ゲート”?」
俺がつぶやくと、ユグが静かにうなずいた。
「はい。一朗さまが登ってきた“記録の塔”の第一章──いえ、“最初の世界”の物語は、ここで幕を閉じます」
どこか、卒業式めいた空気が漂っている。
「え、じゃあこのゲートの先には……」
「まったく別の異世界が待っています。記録されざる、未知の世界です」
「また……あれ? 転生?」
「いえ、今度は“接続”です。あなた自身が、記録者としてこの世界から“他の世界”へとアクセスする役割を持つのです」
「また難しい肩書ききたな……名刺刷ったほうがいい?」
篠崎さんは、いつものように俺の隣に立っていた。
でも今日は──なんだか、すこし寂しそうな顔をしてる。
「一朗さん、本当に……行くんですね」
「……一緒に来てくれるんだろ?」
「もちろんです。でも……また全然知らない世界って思うと、さすがに不安で」
「大丈夫。不安なことは、全部俺が記録して、対策しとくから」
「ふふ、頼りにしてますよ。……本当に」
そのとき、空間の裂け目が強く輝いた。まるで、俺たちの到着を歓迎するように。
「これが、“世界境界点”か……!」
ゲートの奥には、別の空と大地が広がっていた。空は紫がかっていて、草原の代わりに金属の地面が敷き詰められている。まるで──機械文明の匂いがする世界。
「うわあ……ファンタジーからいきなりSF来たか」
「ジャンル超えてきましたね、一朗さん」
「読者ついてこれるかな?」
ふと、ゲートの手前に“石碑”が立っていることに気づく。
そこには、見覚えのある文字があった。
《高野一朗:記録完了済。次なる世界への移行を許可する》
「……ちゃんと名前、記録されてんじゃん」
俺はふっと笑って、ノートを開いた。
「新しいページ、そろそろ書くときか」
ユグが、少しだけ誇らしげな顔で言った。
「“記録の旅”の第一章、完結ですね。一朗さま。次の世界では……どんな出会いがあるのでしょうか」
「どうせまた問題山積みだろうけど、なんとかなるさ。……俺たちは、記録して、進むだけだからな」
俺と篠崎さん、そしてユグは、光の中へと歩き出した。
そこには、新たな塔。新たな世界。
まだ見ぬ運命と、記録されざる物語が、待っていた。




