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第23話 異世界から来たもう一人──塔に潜む監視者と、記録されざる存在

「……え、なんで俺がもう一人いんの?」


 選別の塔・第四階層に入った俺の口から、思わず本音がこぼれた。


 そこにいたのは──やっぱり“俺”。いや、見た目は似てるけど、なんだこの妙なテンションとポーズ。妙にキメ顔だし、やたらポーズ取ってるし。


「どーもー! 異世界転生五週目、フリー転職型・自己演出特化ビルドの“タカノ・クロスファイア”です!」


「……誰?」


 俺は素で訊いた。隣の篠崎さんも困惑してる。

 彼女の口元がひくひくしてるのを見ると、もう限界かもしれない。


「いや、誰って……俺だよ俺! 一朗くんが、もしも“なろう系テンプレ全部盛り”で成長した未来の姿!」


「うわぁ……いるよな、こういう量産型チート転生者……!」


 クロスファイアを名乗る“俺似の男”は、マントをひるがえして叫ぶ。


「この世界はさ、いろんな“転生データ”を記録してるわけ。で、俺はそこから脱線して“管理者”になったわけよ」


「え、転生者が管理者側に?」


「そうそう。ぶっちゃけ、君の《記録》スキル、うちのシステムでもバグ扱いなんだわ」


「バグて!」


 俺は叫んだ。


「でも正直、興味あるんだよねー。君、ほんとに何の補正もない地味ビルドだったのに、記録スキルだけでここまで来た。正直、俺的には“推せる”」


 クロスファイアが親指を立てた。……うん、うざい。


 すると突然、空間にズズズッと振動が走り、四方の壁から“転生者ログ”がスクロールし始めた。そこには、俺たちの会社のメンバーの名前がずらり。


 そして──最後に、一つの空白データが表示された。


「……この未記録者、誰?」


「それが問題。『異世界に転生した記録はあるのに、その後の行動がすべて空白』。データ改竄されたか、あるいは……この塔の最深部に干渉してるかもね」


 篠崎さんが真剣な顔で俺に振り向く。


「つまり、“記録されてない転生者”が、何か仕掛けてるってこと?」


「そ。君らが最深部に行くには、そいつと向き合わないとね。……あと、ちょっとしたアドバイス」


「アドバイス?」


「塔の第七階層あたり、普通にホラーだから、心してな?」


「やめて! そういうの一番嫌い!」


 クロスファイアが「じゃ、検討を祈る!」と爆笑しながら消えていくのを見届けた後、俺は力なく崩れ落ちた。


「……異世界転生って、こんなにノリで進行する世界だったっけ?」


「一朗さん、大丈夫ですか? さっきから目が死んでますけど」


「心がバグっただけです……」


 だが、それでも俺は立ち上がる。記録者として、この世界の真実を見届けるために。


「さ、行こう。“記録されざる存在”を、俺たちで上書きしにいくぞ」


「……はいっ、一朗さん!」


 次なる階層は、転生の裏側。

 だが俺たちは、たとえバグであっても、自分の道を刻んでいく。



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