【八重】八重
不運が重なることがある。不運が重なる人が居る。自分はどっちなのか考えた時期もあったが、まあ、そんなことで悩むくらいなら幸運な人間なのだと思い込むべきだ。
最愛の姉が<魔女の使者>になったあの日、狼狽する彼女を見て腹を決めた。彼女が彼女として生きれるように、不運はうちが全てを吹っ飛ばしていくこと。魔術で吹き飛ばせられないなら、うちはそれ以上の化け物になってやる。
我が店の人気商品が爆音を発した。
「おっ、お前は、なんでこんなことするんだ!?その大量の武器、<魔女の使者>じゃないんじゃ…。」
相手が喋っている間に弾倉を入れ替える。空の方を相手と自分の間よりやや右に投げる。武器頼りなうちは、突撃されるのがいちばん怖い。せめて進路を絞りたかった。
「<使者>かどうかって今重要?」
狩り隊ご愛用のちゃっちい回転式拳銃の口が、こちらに向いている。いける。昔狩り隊の銃は調べたことがある。リモンドが実物を持ってきてくれたのだ。だから大凡のことは分かる。
うち特製のこれは、威力は負けるかもだけど速さは絶対勝てる。何よりあちらの弾数は高が知れている。
「アンタにとってうちは敵で、うちにとってアンタは敵。…それだけだ。」
「なんて無慈悲なことを言うんだ…。私の娘と同い年くらいで…。」
撃つか?いや今撃っても当たらない。うちはレーリッシュとは違う。隙を作んなきゃ…。
「でも、とても」
はっとする。相手はうちではなくうちの背後に目をやっていた。
「正しいよ!」
ひゅん、と耳元で音がして_
「バーリアっ!」
足元のシールドの片側を踏んで立ち上げる。
「チッ。ひるむな突っ込め!」
シールド越しにこちらへ駆けて来る足音。メッチャ速い。でもうちは振り返らなかった。
「はあ?」
そのまま最初の相手へ弾丸を撃ちまくる。その隙にうちの真後ろへ到達した奴は、
「あっ?」
ずどんっと地へ沈んだ。
「自分の背後にねずみ返し付きの落とし穴。武器屋のトレンドも知らないなんて、狩り隊も落ちぶれたね。」
穴の底から呻きが這って来た。
「あ、あくまめ…。」
うちは笑って返した。
「ありがとう。」
うちの手からずだんっと重低音が轟いた。




