【シェルファ】レーリッシュ
撃った、と同時にもう次の敵の捜索に入っている。
飛鳥と背を合わせたとき、これほど本格的に撃ったのは久方ぶりだったと気付いた。随分遅れた気付きだった。それもそのはず、体は動くし銃の精度も全盛期と遜色ない。構え方走り方息の仕方、そして1人踏破した後も続く緊張感。多人数を相手取るジル国軍の動き方や考え方だった。
「ふう…。」
脅しで握って見せることはあれど、この引き金を引く機会は、もう無いと思っていた。
これが終わったら、平和になればいいのに。
餓鬼じみたことを心中でぼやき、店に戻ろうとしたそのときだった。
やはり暫く戦場から離れて、昔のままの訳が無いのだ。俺は弱っていた。いや、こんな言い方をすると蓮の自称する"弱い"と同じみたいだ。違う。俺は、甘かったのだ。
サイレンサーで濁った銃声が、色んな店が混じり合う愛しい通りに、鳴いた。
「うっ!?」
上手い部類では無いのか、銃弾は当たらなかった。俺は振り向かずに跳んできた方に銃口を向ける。
銃声。複数のものだった。
ガンッと足に衝撃。しかもさっき撃った方は手応えなし。俺は腹を決めて振り返った。
5個の銃口が俺を見ていた。
「…暇かよ、お前等。」
「俺達の仲間を撃って、無事で済むと思うなよ。」
大人数の相手は不得意じゃない。慣れている方だ。
足がこんなんじゃなければ。
女医に"治し"てもらいに行けば彼女を巻き添えにする。しかし機動力が減ったデカい男なんて的に近い。次々と着弾していき焦りが強まる。銃口の位置が定まらない。両腕やられたか。
無理だ。
『やっぱりおチビを呼ぶべきだったな?』
突然、軽口が跳んできた。おちゃらけた聞き覚えのある声にびくっとしたが、しかしその声はポケットからするのだった。
「え?」
その瞬間。
傷が塞がる。
すぐに俺は気が付いた。
「あいつッ…!」
治癒の<使者>。強化条件、聞くこと。
電話を繋いでおいたのだ。スマホが壊れないかは賭けだが、俺が少しでも声を上げれば遠かろうと"直せる"。
「とんだ女神だな!」
『くたばったらお爺さんに呪われるんだったか?』
ぱっと駆け出していちばん近くの奴の顎を蹴り上げる。同時に愛銃が鳴いた。悲鳴。手を伸ばして別の奴を摑み、こちらに向いた銃口に投げつける。また手の中で爆音。
「そうだな、俺は変わった。」
こいつ等の隣で。
それは、いいことだ。




