【第2パート】シェルファ
「は。」
言葉の出ない私の声を、訊き返したと思っただろう、光羅謝は繰り返した。
『SLAY生産場所を、爆破させました。』
その形式張った話し方は、やや上擦った声色を隠すためのように聞こえた。
「…本当か?」
『本当だよ。僕がやった。』
ラオメの声はやはり、平生から感情の起伏が薄めの光羅謝以上に、力が籠っていた。覇気に満ちた鮮やかな声。
「じゃあ、この戦いは…終わったのか…?」
語尾が掠れた。
だって、父の仇は_複製の<申し子>は、まだ見えてすらいない。殴ってない。罵倒してない。
殺し返してない…。
『終わりな訳ないよ。』
私の思考を止めたのは、八重の発言だった。
『<悪魔殺し>を潰したところで狩り隊はなくならない。ただ狩り隊を"攻略"しやすくなったってだけ。現に今うち町ん中に居るけど、狩り隊に会う回数は減ったけど、ヤベー隊員の割合が増えた印象。』
『彼女の言う通りです。確かに武器の消滅で戦いを諦める人々も居るでしょう。でもそれは全員ではないのです。単に諦めない人だけでない。自暴自棄になる人も捨て身の人も出てくる。』
飛鳥が、ならば自分も早く合流しようと言った。確かに、二大強力魔術の持ち主は重要だ。光羅謝達は一旦帰ってからまた体勢を整えるらしい。リモンドは、元狩り隊チームの使い方を思いついたら伝えるように頼んでいた。こちらは手当てが必要ならすぐ連絡をよこすように話す。そのまま通話が終わろうというとき、蓮の低い声が響いた。
『卑俗で弱い人間って、ピンチのときほど強くなるものだよ。お伽話じゃあなくてね、ただ単にオレみたいなのは崖っぷちに立って漸く、戦うしかないって気付くからだよ。』
そう呟く彼の声には諦念と嫌悪が透けていた。が、すぐにいつも通りの声で、
『オレもやれることをやるよ。みんな、気を付けて。』
ほぼ同時に、銃声が響いた。レーリッシュが直ぐ様銃を構える。幼い頃からの訓練が、まだ体から抜けていないらしかった。
「音から1人。この通りをぶっ壊されちゃあ敵わん。」
『レリ1人で大丈夫〜?うちも行ったげよっか。』
「ほざけ。…いや、君達の女神様が1人でお留守番するのは大変かな。一緒にお留守番してくれるかい?」
「おい八重、ねずみ返し付きの落とし穴の作り方を教えてくれないか。」
レーリッシュは口の端を緩め、通話を切った。スマホを投げてよこされる。
「行ってくる。」
「死ぬなよ。」
たっと駆け出した風だけが返事だった。




