↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雑草の花束  作者: 片喰
177/212

【セッティング・オール】蓮

「あそこです。」

 少し先の扉を彼女_フェルーンさんは指差した。人の少ない、厨房からいちばん離れた場所だった。もしかすると。オレは部屋の方向を確認してから、彼女に向き直った。

「ありがとうございました、フェルーンさん。…憎んで構わない。でも、オレの感謝を受け取ってもらえたなら、オレはすごく、嬉しい。」

「憎んでなどいません。」

 彼女はふと、窓の外へ視線を移した。

「貴方の記事で、王様の死去がみんなに知れ渡りました。やっと、やっとです…。それまでずっと、あんなに愛されていた王様が…みんなに泣いてもらえずに…。それを、貴方が変えた。私は感謝してるの。」

 胸の前で手を組み、狩り隊に気付かれないように小声ながらも、はっきりとした声色で言った。

「行って下さい。そしてこの王宮の、この国の、活路を切り開いて下さい。」

「…ありがとう。最後にもう1個お願いしちゃってもいいですか?ここの人達に、この場所から離れるように伝えて下さい。」

「分かった。どうか無事で。」

「ありがとうございます。あなたも。」

 踵を返し、さっきフェルーンさんが示した部屋へ向かう。それは、SLAY反応武器の作られている部屋である。武器の備蓄も側にあるそうだ。

 好都合。まとめてやってやる。

 足音が響く。心臓まで、がつん、がつん、と響いてうざったい。やめてほしいな〜、心臓バクバクしてるみたいでヤなんだけど。

「あれ、まだ交代時間じゃないよな?」

 SLAY生産場所の見張り役だろう。狩り隊らしい格好のひとりが、こちらをチラと見やった。

「え?あー、時計見間違えたかもしれません。いいですよ、今代わりましょう。」

 がつん、がつん、がつん。気にせず部屋に進み入る。

「えー。俺ここの当番好きなんだよね。ひとりだし、好き勝手できんじゃん?好きなだけ漫画読める。」

 実際、彼の側に漫画が重なっていた。胸の奥に微かながら、生温く重いものが生まれる。

「こんな重要な場所で、よくサボれますね。」

 銀色のタンクが部屋の中央に端座していた。大人3人が両手を広げたほどの巨大さ。まだ新しい装備だからだろう、銀色は妙なくらいにぴかぴかしていた。オレの姿を歪ませながら反射している。

「誰も来ねーよ、こんなとこ。」

「そうですねぇ…。」

 タンクをじっくり見詰めながら、その周りを一周する。武器にSLAYを移すためだろう、蛇口のような部分がある。が、オレが望むような、ガバっと開くタイプの開閉口が無い。 

「…おい、お前何してんだ?」

 彼はゆっくりと椅子から立ち上がった。

「…。」

「おい。」

 彼は疑惑の顔をしつつも武器を手に取らなかった。

 何故か?オレはそれほどまでに、<使者(てき)>らしく見えないのか。

 それで凹んでどうする。利用するくらいの心持ちでいろ。

 ポケットに入れていた目玉くらいの大きさの小石を投げる。それは油断していた彼の脛に上手く体当りした。一瞬顔を歪め、椅子の上の武器の方を振り返る。そこにオレは走り込んで半ば激突するように首に摑みかかった。

「っ!お前、何が目的だ…。」

「話すと長くなるよ。オレの指示に従って下さい。」

 首筋に抜き身のナイフを突きつける。大概、ナイフと録音機とマッチは何処へでも持参する。

「…くそ。ま、俺も命ほど惜しい責務だとは思ってねえし、いいよ。従う。何?」

「ありがとうございます。では、まず、このタンクの開け方知りません?やっぱり何処も開く場所ないのかな。」

「開く場所なんかねぇよ。緊急時はノコギリで開けんだよ。」

 指差されたノコギリは簡易な手動の物だった。電動ではない。オレはちょっと笑んだ。

「銃で撃つなとか言われたことある?」

「あるある。なんで知ってんの。」

 ナイフと逆の手でノコギリを摑む。昔学校で使ったやつと似た物だった。これならオレでもいけるだろう。

「じゃあ2個目。オレが合図したら、狩り隊全員に、今から言うことを叫んで下さい。」

「なんて言うの?」

 オレは力を込めて囁いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。