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雑草の花束  作者: 片喰
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【突貫計画】飛鳥

 無線から微かな音。コツコツコツ、間があって、コツコツ。リモンドは直ぐ様トランシーバーを手に取って顔の前に持ち上げた。

「何が?」 

 あちらも直ぐ反応した。蓮である。

「計画変更。生産場所の詳しい場所が分かった。これからオレはそこに行く。2人は、30分後に北中央の広間に到着出来るよう、移動してほしい。」

「貴方1人で何を_」

「オレじゃないと。2人、銃しか持ってないでしょ?」

「何を言ってるんです?」

「後ね。革命派の人達は、北東の、鉄格子の付けられた窓のある部屋に居るって。そこで多分全員。みんな無事な筈だ、だって。人質にされると困るから、先に拾ってもらえると助かる。こっちが終わり次第オレも手伝うね〜。」

 ぷつ、と切れる音がし、それっきり蓮の声は聞こえなかった。リモンドが何度呼び掛けても、やはり返事は無かった。2人して溜め息を吐く。

「しょうがないわね。その北東の部屋ってとこに、向かいましょ。」

「ああもう、ほんっと…。」

 低く舌打ちしたが、止められないのを分かっているらしく、リモンドは歩き出した。

 "北東の部屋"という情報だけで見つけるのは難しそうだが、存外スムーズに発見した。狩り隊が2人ほど見張りとして立っていたからだ。

 あたし達は曲がり角に隠れつつ、小声で話し合った。

「廊下側にある窓なのに鉄格子付き…。あの部屋で間違いないですね。」

「鉄格子部分だけ、明らかに後付けっぽそうだしね。…どうする?あたしがここから2人を追っ払う?」

「いえ、私達3人の中で最も戦力が高いのは飛鳥さんです。これから大勢の狩り隊と対峙することになるでしょうから、それまで魔力を温存するべきでしょう。」

「じゃあどうするの?」

 リモンドはすでに靴も靴下も脱ぎ捨てていた。

「…飛鳥さん、気休めですが、爪先立ちでもしていてくださいね。」

「あたし、どうするのって訊いてるんだけど?」

「穏健な手法ですよ。上手くいかなかったら蹴り飛ばすしかないですけど…。」

 かなり不安になることを言い放ちながら、彼はじっと床を見詰めた。薄い傷痕が無数にある、裸足の甲。あたしも釣られて下を見る。

 その瞬間。

 ぐっと、何かが伝わる感触があった。反射的に爪先立ちになる。視界がちかっと爆ぜたが、気の所為かどうかもよく分からなかった。

「…んー…。」

 一方のリモンドは、さっきの変な"何か"を生み出した張本人であるだろうに、角から狩り隊2人を眺めている。呑気なことに、もう靴を履き直していた。

「何やったの?」

「成功したかも。行ってみましょう。」

「はあ!?」

 すっとリモンドは2人の前へ進み出る。彼等は、同業に挨拶するでもなく、危険人物に攻撃するでもなく、寝惚けているような顔でちらとあたし達を覗っただけだった。

「…?」

「結構ですよ。貴方達はおうちへお帰り。ああ、鍵は貰いますよ。こちらの業務に差し支えるので。」

 ああどうも、と言って片方は素直に帰ってしまう。もう片方に至っては、やったーとさえ口にしてスキップして行った。

「リモンド…?本当に何をしたの?」

「んー。…貴女だから言いますが。彼等の警戒心を限りなく0に近い点まで"減らした"のです。少人数でないと使えないやり方ですね。」

  肩を竦めるリモンド。グリーンの髪が一本、帽子から垂れた。

「私は<使者>ではないのですよ。」

「"<使者>ではない"?それに"警戒心"って物体じゃ_待って。そういうこと?」

 はっとしたあたしが彼を見上げると、こだわりなく頷かれた。

「そうです、私は増減の<魔女の()()()>。黙っていて申し訳ありません。が、事情が事情でしたし。」

 ぽかんとしつつも、含みのある言い方が気にかかる。目で問うと、彼は少し顔を顰めた。厄介な事情らしい。

「<申し子>や<愛し子>は、<使者>よりも、<魔女>に見られているんです。…見ると言っても、<夜の呼び手>の報告によって、ですがね。下手に<申し子>だと伝えたら、伝えられた人の監視も強まりかねない。だから、おいそれとは話せないのです。まあ、貴女の場合はそこまで危惧する必要ないでしょう。どうも二大強力魔術の<使者>は、<申し子>と同じくらい観察されているそうですよ。」

「なんでそんなこと知っているの?誰から聞いたの?」

「<魔女の使い魔>が_いえ、これは()の自称でした_増減の魔術を担当している<夜の呼び手>が、お喋りでしてね。色々教えてくれるんです。…そもそも、私が<申し子>になったのだって、彼が無理矢理そうしたんですよ。」

 不満気な声色で続けられた内容に、あたしは心持ち仰け反りながら尋ねた。

「どういうこと?」

「私に増減の魔術を授けると決めたとき、普通なら与えてすぐ帰るところを、彼は私が起きるまでずーっと待っていたらしいんですよ。<夜の呼び手>に気付いたらその子供は<申し子>になる。すなわち気付くまで待てばその子供を<申し子>に()()()。」

「…そんなことして何になるのよ。」

「話し相手が欲しいらしいですよ。そのせいで増減の<申し子>は、歴史上うじゃうじゃいます。」

 <夜の呼び手>ってそんなんなのね。呆れ顔で相槌を打ってから、あたしはふと思いついた。

「<申し子>ってことはポイポイ言っていいことじゃない、さっきリモンドそう言ったでしょう。それなのに歴史上うじゃうじゃ居るって…。」

「ええ。実際は、うじゃうじゃ、では済まないんでしょうね。」

「わあーお。」

 眉根を寄せつつ苦笑いする。リモンドも軽く2、3度頷いた。あたしはついでにもうひとつ尋ねる。  

「蓮にも言ってないの?」

 彼は渋面で、

「私が彼に隠し事が出来るとお思いで?」

 考えるまでもなかった。

「出来るわけないわね。」

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