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論外魔力の魔法使い  作者: 宮地拓海


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88話 魔技師、改め、コスプレーヤー

「「コスプレーヤーだー!?」」


 俺とエルセが同時に叫ぶ。


「なに!? 魔技師ではないのか!?」

「あの頭部丸出しの不思議な帽子にメガネが、何かのコスプレなのじゃ?」


 不思議な帽子とは真っ赤なサンバイザーのことだ。

 その出で立ちはまさに、キテレツそのもの。……くっそ。前にエルセが言ってたことが実現するとは…………なんだ、知能指数が似通ってるのか!?


「くっ!? なぜオレの職業がバレたんだ……っ!?」


 驚きと悔しさを滲ませて唇を噛みしめるジョーカー。

 いや、分かるわ。


「そうか。前回の討伐は、ジョーカーが魔技師だと思い込んでいたために、コスプレーヤーの能力に翻弄されてしまたっというわけかっ!」


 前回の失敗の理由を知り、グレイスも悔しそうに唇を噛む。


「あの姿……あれは、天才魔技師のコスプレだと、そういうわけかっ!」

「いや、子供向けアニメの主人公だ」


 ある意味では天才かもしれないけどな。ドラえもんばりのアイテムを自作してるんだから。


「アニメを知っているだと…………はっ!? まさか、お前も転移者か!?」


 アニメというキーワードで俺が転生者であると気付いたジョーカー。

 いや、つうか。俺の背中に身を寄せて、必死に顔を隠してるこの女にまず気付けよ。


「エルセ。観念して顔を見せろ」

「い、いえ。今回は、心の準備も出来ていませんので、パスします」


 悪いことをしたという自覚はあるのだろう。

 というか、最近になってようやく芽生えてきたのだろう。


 先生に怒られるのを怖がる小学生のような反応だな。


「いいから、さっさと顔を見せて、さっさと怒られてこい」

「嫌です! わたし、怒られるのと冷やしておいたプリンを盗られるのだけは絶対嫌なんです!」

「ごちゃごちゃ言ってないで、いいから顔を見せろ!」


 俺の背中に張りつくエルセを引き剥がし、ジョーカーの前へ立たせる。


「ん…………あっ! あぁぁーっ!」


 やはりというか、当然というか……

 ジョーカーはエルセを知っているようで、エルセの顔を指さして驚愕の表情を見せる。


「あんたは、女神さまっ!」

「わぁあ! ちょっと! それは、『しぃー!』です、しぃー!」


 んん?

 なんだって?


「……女神?」

「わぁぁあ! 忘れてください! 気の迷い、若気の至りだったんです!」


 どうやら、聞き間違いなどではなく、エルセはジョーカーに『女神様』と呼ばれているらしい。

 ……なんで女神だ?


「実はその……日本で、異世界転生みたいな小説が流行り出した影響で、何人かの転移者がわたしのことを『女神様』と呼ぶようになりまして……」

「否定すりゃいいだろうが」

「しました! 最初は懇切丁寧に否定していました! けれど……」


 拳を握り、薄紅色の唇をきゅっとすぼめる。


「『女神様』って呼ばれるのも、ちょっと悪くないなって……」

「経歴詐称じゃねぇか!?」

「だって、なんか崇めてくれるんですもん!」

「そこに乗っかったら、女神どころかインチキ霊能者と同じじゃねぇか!」

「そう思って、霊視の真似ごととかもしましたさっ!」

「なんで、そう思って『そっちの方』にアクセル踏むんだよ!? 『そっちの方』に行かないようにブレーキ踏んで戻ってこいよ!」

「だって、なんか敬ってくれるんですもん!」

「その結果、『女神様』とか呼ばれるようになっちまったんだろうが!」

「やめてください! 今は反省して、というか目が覚めて『なんであんなことしてたんだろう』って、悶えるほど恥ずかしいんですから! 黒歴史をほじくり返すのはやめてください!」

「じゃかーしぃぞ、てめぇーら! そっちでごちゃごちゃやってねぇで、オレと話をしろよ、女神様っ!?」

「コーシさん! あそこに人の黒歴史をほじくり返す極悪人がいますよっ!」

「いや、あいつが怒るのも致し方なしなんじゃないか……」


 怖い顔で俺たちを睨みつけるジョーカー。

 話し合い……って雰囲気では、残念ながらなさそうだ。


「女神様は、冒険者ギルドの手先になったってわけだな……」


 ぼそりと呟かれた言葉には、落胆にも似た、憎しみが込められている。そんな気がした。


「あ、あのっ、ジョーカーさん! もう、こんなことはやめませんか? ここにいてもいいことなんて何もないですよ。もっと世のためになることを……」

「じゃかーしぃ!」


 拙いながらも懸命に説得を試みたエルセだったが、それはジョーカーの怒号ひとつで吹き飛ばされてしまった。


「冒険者ギルドの犬になり下がったあんたに、もう用はない」


 ジョーカーが、懐に手を入れる。

 ごそごそと、何かを探るような動きを見せる。


「この前も、市場でオレたちの邪魔をしてくれたそうだしな……」


 それはきっと、カチヤの店を襲ったウセロを、俺たちが撃退したことだろう。


「目障りな冒険者ギルドともども、あんたにはここで消えてもらうっ!」


 叫びながら、ジョーカーが懐から腕を抜いた。

 右腕の先に、筒状のアイテムが装着されている。それはまるで、大砲の先端部分のような形状で……


「ててて、てっててー! 空気砲~!」

「それ、別の作品だよ!?」


 藤子不二雄違いだからっ!?

 コスプレするならそこら辺ちゃんとしようぜ!


 まったく、いい加減なんだから……と、思ったら。


「食らいやがれっ!」


 ジョーカーが叫ぶとともに、腕に着けられた空気砲から圧縮された空気の塊が発射された。

 性能は忠実だな!?


「コーしゃま。今の状態で話し合いは難しいのじゃ」

「そうだな……しょうがない。一度取り押さえるぞ!」

「分かったのじゃ」


 そうして、盗賊団『闇の組織』のボス、ジョーカーとの戦闘が始まった。







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