表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
論外魔力の魔法使い  作者: 宮地拓海


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

78/120

77話 ギルド長へのお届け物

 コンコンと、ギルド長室のドアがノックされ、受付の褐色美女アイザさんが入室してくる。

 俺たちを見て一瞬目を見張ったが、静かに目礼をし、歩を進める。


 しかし、その進んだ先にいるのはギルド長グレイス……の、コスプレをしたマゥルだ。


 アイザさんがあからさまに動きを止めた。

 まぁ、そうなるよな。


 だが……


「ギルド長。頼まれていた資料をお持ちしました」


 ギルド長!?


「どういうことだ? アイザさんにはマゥルがグレイスに見えてるのか?」

「いや、実はの……」


 苦い顔をして、ニコがこそっと教えてくれる。


「マゥルがグレイスの代役を務めることはままあることなのじゃ。ギルド職員も、もう扱いに慣れておるのじゃ」

「ギルド全体で黙認してるのか?」

「マゥルの必死さに、みな心を打たれたんじゃろうのぅ」


 いやぁ……それはどうだろう。


 しかし指摘すると泣くし……まぁ、泣かせないようにしようとしてるってのは、心打たれたと捉えても、間違いではない……のか?


「グレイスが所用でここを離れなければいけない時や、グレイスが動いていると悟られてはいけない時もあるからの。カムフラージュなのじゃ」

「全然出来てないが?」

「『ギルド長がここにいる』ということが重要での。ギルド職員がみなその認識で職務を続けていると、外からは意外と悟られんもんなんじゃよ」


 まぁ、こうやって面会しなきゃバレない……のか?


 ギルド全体がマゥルを『ギルド長』だとして扱えば、もしかしたら上手く騙せるのかもしれないな。

 そもそも、ギルド長室に来られる人間など限られているわけだし。


「ギルド長だぉ」

「はい。存じております」

「ホントだぉ? 疑っちゃヤだぉ?」

「疑っておりません」

「ホントにホントぉ?」


 ……あれで本当にいいのだろうか?

 身代わりになるヤツ、他にいなかったのか?


「ご依頼のあった資料を集めました。確認をお願いします」

「資料? 頼んでないぉ?」

「おい、ニコ。アイザさんがこの無理のある設定に乗ってくれてるのに、マゥルの方が設定ガン無視してるぞ」

「マゥルは、ほんのちょっと奔放な娘なのじゃよ」


 だから、お前の「ほんのちょっと」は大らか過ぎるんだよ。


「その資料、ワタシが代わりに確認しよう」


 部屋の奥から、頭からすっぽりとマントを被った人物が姿を現す。

 あんなところにドアがあったのか……隠し部屋だな。


 そうして登場した謎の人物は、どう見てもグレイスだった。

 ……が、きっとこれにも触れちゃいけないんだろうな。

 あからさまに声としゃべり方と仕草がグレイスであっても。ギルド長室の奥にある隠し部屋から出てきたとしても。きっとあのマント娘をグレイスだと言ってはいけないのだろう。

 それは、今のマゥルがグレイスではないと否定することになるからな。


「あ、グレイスお姉ちゃんだぉ」

「お前がバラすんかい!?」


 自分が言うのはいいのかよ!?


「おぉ、ギルド長よ。今日も可愛いな」

「えへへ~。お姉ちゃんが褒められて、マゥル嬉しいぉ」


 褒めたのもお姉ちゃんだけどな。


「おい、グレイス」

「なんだぉ?」

「そっちじゃない方のグレイス」

「ふふん。さすがワタシのコーシだ。よくぞ見破った」


 分かるわ!

 で、誰がお前のか。


「ワタシの不在を狙ってここを攻め落とそうと考える不届き者がおらぬではないのでな」

「そんなヤツがいるなら、マゥルに代役を任せるのは危険なんじゃないのか?」

「ふむ。義理の妹を心配してくれるのだな」

「違う」

「心配ではないのか!?」

「義理の妹じゃないんだ!」


 こいつはサラッと事実を捻じ曲げやがる。一個一個きちんと否定していかねば。


「その資料なんなんですか?」


 アイザさんの持つ資料に興味を示したエルセがすすすと近付いていく。


「……エルセ様にはちょっと難しい資料かと」

「はぅっ!? 当たり前のように小バカにされてますね、わたし!?」


 アイザさんは俺たちのステータスを知ってるからな。

 まぁ、しょうがない。


「エルセ様にも分かりやすい言葉で言いますと…………『ちょーすごーい資料』です」

「コーシさん! アイザさんがわたしを徹底的にバカにしてきます!」



 まぁ、致し方ない。


「具体的に申しますと、『闇の組織』のアジトに潜入したギルド職員からの情報を元に作成した見取り図です。トラップがそこかしこに仕掛けられているために、時間をかけて制作したのです」


 盗賊団のアジトなら、それくらいの罠は当たり前か……


「そしてこちらが、セオコーシ様のプライベート情報をまとめ上げたものです」

「うん。そっちの資料は今すぐ焼却処分してくれるかな」

「了解いたしました」

「了解するでない、アイザ! そっちがメイン、そっちがメインなのだぞ、ワタシには!」

「アイザさん。このギルド長もついでに焼却処分出来ませんかね?」

「検討しておきます」

「するでない!」


 そんなやりとりの隣で……


「はぅ……マゥルは今ギルド長だから……マゥル、焼却処分されちゃうぉ!? 怖いぉ~!」


 と、関係ないところにまで騒動が飛び火していた。


 ……なんですんなり出発出来ないのかなぁ、俺たちの冒険って。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ