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論外魔力の魔法使い  作者: 宮地拓海


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73話 闇の組織

 風のタリスマンを手に入れた俺たちは……というか、俺は手に入れたんだがなんなんだかよく分かんない状態なわけだが……冒険者ギルドへやって来ていた。

 ウセロの言っていた『闇の組織』なる連中と、そこのボス『ジョーカー』ってヤツの情報がないかを聞きに来たのだ。


「アイザさん。こんにちは」


 冒険者ギルドの受付にいる、褐色美女に声をかける。


「おや、セオ・コーシ様。本日はどのような御用件でしょうか?」


 無表情ながらも丁寧な口調で応対してくれる。


「実は、情報が欲しいんですが……」

「3サイズは秘密です」

「あ、ちょっと待ってください。諸悪の根源っぽいウチの仲間を一回シメてきますから」


 振り返ると、スティナがそっと視線を逸らしやがった。

 こいつは、一体どこまで俺の間違った噂を流布して回ってんだ……引きこもり体質のくせに、こういうところでだけアクティブさを発揮しやがって。


「『闇の組織』というものと、『ジョーカー』。こいつらの情報が欲しいんですけど」

「あぁ。盗賊団『闇の組織』のことですね」

「え、名前なの、『闇の組織』!?」


 自分たちで勝手にそう名乗ってるだけなのかよ!?

 表札とかあったら、『闇の組織』って書かれてるってことか? 自称するもんじゃないだろう、それ。


「株式会社『コンツェルン』みたいな感じですかね?」

「スーパー『デパート』とかな」

「スナック『ビーナス』とかですか?」

「いや、それは違うだろう!?」

「でもですね、入ってみたらビーナスどころかビーストみたいなのがわんさかいまして……」

「お前は、なんでスナックなんぞに行ったんだよ?」

「接待です」

「苦労してんだな、天界の営業も!?」


 エルセの知られざる一面だ。社会人なんだねぇ、エルセも。


 とにかく、『闇の組織』は、この世界の裏社会に精通している巨大な組織というわけでははなく、数十人が集まって勝手に自称しているだけの、チーム名みたいなものらしい。

 ボスのジョーカーってヤツ、結構寒いネーミングセンスの持ち主らしいな。


「ジョーカーに関しては、ギルド長にお聞きになるのがよろしいかと思われます」

「グレイスに?」

「はい。ギルド長は、『闇の組織』撲滅を画策し暗躍しておられますので」


 画策し暗躍とか言われると、グレイスの方が悪事を企んでいるように聞こえるな。


「ですので、セオ・コーシ様。こちらを胸につけて、ギルド長室へお向かいください」


 と、アイザさんが俺の胸に細長い紙をぺたりと張りつけた。

 そこに書かれていたのは……


『グレイス・予約済み』


「誰が予約済みかっ!?」


 丸めて床に叩きつけてやった。

 くしゃくしゃぽいーだ!


「まったく、グレイスには困ったものじゃのぅ」


 と、困り笑顔を浮かべたまま、ニコが俺の体に『ニコ・予約済み』の紙を貼りつける。

 ってこら、ニコ。


「まったくね」


 と、スティナが『スティナ様のしもべ』という紙を貼りつけ――


「本当ですね」


 と、エルセが『充電器』という紙を貼りつけた。

 ので、エルセにアイアンクロー。


「な、なんでわたしだけっ!? 差別イクナイですっ!」


 誰が充電器だ、誰が。


「グレイスのせいでおかしな遊びが流行ってしまったじゃねぇか。クレームものだな」

「『責任を取って嫁に行く』とか言い出すのじゃ、きっと」


 うわぁ……容易に想像出来る。


「よしみんな。今の一件はスルーで」


 触らないのが一番だ。


 スルーを決め込み、俺たちは冒険者ギルド二階の再奥、ギルド長室へと向かう。

 そして、重厚なドアを開けると……


「おぉ!? コーシではないか!」


 ウェディングドレスを着たグレイスがいた。

 ……ので、閉めた。


「俺は何も見ていない」

「あぁっ、コーシさんが現実逃避真っ只中です!?」


 ……何やってんだ、あいつは?


 ドアノブが「ガチャ」っと音を立てたので、全体重を乗せて阻止しようとしたのだが……あっさりとドアは開けられ、中からドレス姿のグレイスが顔を出した。


「ちょうどいいところに来たな。少し手伝ってはくれまいか?」

「断る!」

「なに、大したことじゃない。ほんのちょっと、新郎になってくれるだけでいいんだ」

「そう思ったから断るっつってんだよ!」


 何がほんのちょっとか!?

 そのほんのちょっとで人生の終着点に到達しちまうわ!


「違うのだ! これは敵の目を欺くための変装なのだ!」

「敵?」

「うむ。実は、この付近で暗躍している『闇の組織』という盗賊団がおってな」


 なんてタイムリーな話題なんだ!?


「ヤツらのアジトにこっそり忍び込んでやろうと思っていたところなんだ」

「こっそり感ゼロだけどな!?」

「ヤツらもまさか、花嫁が襲撃してくるとは思うまい!」

「なぜ身を潜める方向に意識が向かないんだ、お前は!?」

「ワタシはこそこそしたのが嫌いだ!」

「でも、だからって……」

「正々堂々、騙し打ちだ!」

「正々堂々の意味はき違えてるよ!?」


 その時、スティナがゆらりと動く。


「いい作戦だと思うわよ、私は」

「そうか! 分かってくれるか、スティナよ」

「まさか、グレイスが花嫁衣装を着るなんて、誰も想像出来ないでしょうしね」

「よし、そのケンカ買った! 表に出ろ!」

「やめろ、ややこしい!」


 スティナは、余計なことを言わないと死んじゃう病なのか?

 あのよくしゃべる口をまつり縫いしてやろうか……


「とにかく、じゃ」


 ニコがぽんっと手を打って、俺たちの注目を集める。


「グレイスが『闇の組織』討伐に動いているなら好都合なのじゃ。一緒に退治してしまうのじゃ☆」


 可愛らしい笑顔でさらっと盗賊団撲滅を宣言する。

 う~ん……やっぱり、ニコって大物なんだな。説得力が違うわ。

 やると言ったら本当にやるんだろうなって思わせる迫力がある。


 そんなわけで、俺たちとグレイスの共同戦線が組まれることになった。



 でもその前に……

 とりあえず、ドレスは脱げ、な?






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