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論外魔力の魔法使い  作者: 宮地拓海


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72話 風の恩恵を受ける

「ブラジャーといえば、ニコが最も必要とするものね」

「しかしのぅ、スティナよ。ワシにはちぃと小さい気がするんじゃが」

「そうね。ほぼフラット。カップ数にすればAないしAA……エルセ以外には着けられないわね」

「ちょぉーっと!? なんですか、その判断基準!? コーシさんだって着けられますよ!」

「誰が着けるか!」

「コーシさんならきっと似合いますって!」

「嬉しくねぇわ!」

「そうね。コーシなら頭に装備することも可能ね」

「可能なもんか!」

「回復アイテムになったりせんかのぅ?」

「ニコ!? お前だけはソッチに行かないでくれ! コッチにいてくれよ!」


 未使用のブラジャーで回復なんかしねぇよ、俺は!


 ………………使用済みのでもしないけどな!


「これは、風の力で自在にカップ数を変化させることが出来るんでし」


 制作者のカチヤが風のブラジャーを手に持ち、念を込めると……ブラジャーのカップ部分が「ぷしゅ~」という音と共に大きく膨らんでいった。


「最大、Hカップまで膨らむでし。さらに言えば、コレを装備すると風の恩恵で『落下遅延』の能力を得られるでし」

「それは素敵ですねっ! いいでしょう! わたしが装備します!」


『それ』がどれを指すのかはまぁ聞かないが、エルセが物凄く食いついた。

 ……こいつ、地味に見栄を張るつもりなんだろうな、きっと。


「落下遅延ですよ、わたしが興味を抱いたのは! くれぐれも言っておきますけども!」


 なんとも説得力の乏しい発言である。


「まぁ、自在にカップを変えられるなら、ニコのコスプレをするのにいちいち別室にこもる必要はなくなるわね」

「はっ!? そ、そうです! そういう使い方も出来るんです! なんて素晴らしい装備なんでしょう!?」


 まぁ、本人が喜んでるから、いいけどな。

 よかったな、もらい手があって。……次はまともなヤツを頼むぞ。


「……すみません、コーシさん。なんだか、奪ったみたいな形になって」

「いや、俺欲しがってないから!」

「『代わりに、今お前が着けているブラジャーをくれ』」

「言ってねぇよ、スティナ!? 耳鼻科と精神科ハシゴしてきたら!? 幻聴聞こえるって精神的に結構きちゃってるらしいからさぁ!」

「コーシさん、サイテーですっ!」

「人の話を聞けぃ!」


 どっちにするかをちょっと悩んだ挙句、エルセにアイアンクローをかましておいた。

 あぁ……なんか久しぶりだなぁ、この感触。


「それじゃあ、次の風のタリスマンを作るでし。コーシさんを視界から外してイメージしてみるでし」

「おい、カチヤ。なに『ブラジャーが出来たのは俺のせい』みたいな雰囲気醸し出してくれてんだ?」


 俺のせいじゃねぇから!


「兄ちゃん、堂々とセクハラして……漢でし」

「にーちゃん見習うべきところは多いでし?」

「オスとして生まれた者たちの鑑でし。……女子的には軽蔑しきりでしけど」

「おい、弟、妹(大)、妹(小)! 勝手なこと抜かすな、特に妹(小)!」


 もうやだ。

 早く次の風のタリスマン作ってくれねぇかな……つか、ヅラとかブラとか、そんなんばっかなのか、風のタリスマン?


「それでは、作るでし!」


 次の風の原石を作業台に置き、カチヤが魔道具を握りしめる。

 また緑の光が溢れ出し、目の前が光に埋め尽くされる。

 先ほどとは違う風が吹き、それで俺は、別の物が出来るんだろうなと直感していた。


「出来たでし!」(ふらっ、ドサッ、頭ゴンッ!)

「カチヤッ!?」


 やはり魔力を使い果たしてカチヤが後ろに倒れ込む。

 受け身とか覚えろよ。後頭部強打してんじゃねぇか……あ~ぁ、頭押さえて悶えちゃってまぁ……


「ほら、カチヤ。魔力だ。あと、痛かったな」


 頭を撫でつつ魔力を流し込む。

 少しコブになってる気がする。

 次からは、後ろにクッションでも置いとけな。


「さぁ、次の風のタリスマンはどんなものかしら?」


 完成した風のタリスマンは眩い光に包まれてハッキリと姿を見ることが出来ない。

 ちょうど、鑑定前のアイテムに黒いもやがかかってハッキリ見えないのと同じような状態だ。

 こいつは鑑定するまでもなく、時間と共にその輪郭をはっきりさせていく。


 そして、三秒ほどの時間をかけて存在を明確にしたそいつは……小さな小瓶だった。


「これは、風の栄養ドリンクでし!」

「まさかの一回使いきりっ!?」


 こういうのって、普通装備なんじゃねぇの!? 身に着けて風の恩恵を受けるんじゃないのか!? なんで飲みきっちゃうの!?

 つかこれ、風のタリスマンじゃなくて、風のタフマンなんじゃねぇのっ!?


「風のユンケルですね、コーシさん」

「なんで何にも掛かってない方の商品名出してくるの?」

「愛飲していたもので!」

「お前、ユンケル愛飲するほど仕事してねぇだろ!?」

「失敬です! それはあまりに失敬ですよ、コーシさん!?」


 適当に捕まえたヤツを異世界へ送り届けるだけの簡単なお仕事のくせに、なにがユンケルか。

 エルセの抗議をさらりと無視して、俺は風の栄養ドリンクを手に取る。


「残りの風のタリスマンを見た後で、これは誰が飲むかを考えよう」

「そうね」

「それがいいのじゃ」


 全員の賛同を得て、そのように決まる。



 その後、もう二つ立て続けに生産された風のタリスマンは、風の指輪と風のアンクレットという女性向けの装飾品であったため……結局俺が風の栄養ドリンクを飲むこととなったのだった。…………味は、まぁ、悪くなかったよ。






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