帝都奪還戦
「皆んな!もうすぐレドナクセラ帝都だ!一気に城を取り返すぞ!」
マルスがレジスタンス改め解放軍の戦闘員と世界樹の森のエルフ達に声をかけた。
帝都だけに兵の配備されている数もそれ相応にいると予想されたが、タイミングが合えばもうそろそろヴァリュームからノーマ達と合流することになる。
次第に帝都を囲う壁が見え始めると、その上にビッシリと待機する兵士達の姿が確認できた。
「これは少々厳しい戦いになりますな」
帝都の門は固く閉ざされ、近づこうにも町ごと囲うヴァリューム程ではないが高い外壁に守られている。
「ここは私達に任せていただきますよ」
全員揃った鎧に身を包み弓を携えた1000人のエルフ達がベジタリアンの指示を待っている。
「確かに、エルフの弓であれば容易く打ち落とせるでしょうな」
「ベジタリアン頼めるか?」
「何を言う。君とは友情を結んだ間柄だろう」
ベジタリアンはエルフ達に向き直り、手をさっと動かす。それに呼応するように言葉を出さなくても一斉に隊列を作った。
「素晴らしい練兵度ですな」
「そうだな。情けないが、うちのとは比べ物にならない」
「突入はどうしましょう?」
「ベジタリアン達が粗方倒したらウィザードの魔法で門の破壊、そして城を目指す」
ベジタリアンを先頭にエルフ達が外壁へと近づいていく。その後ろをマルス達が続いた。
「敵にウィザードはいないのか?」
「いればそろそろ魔法の射程に入る頃合いでしょう」
そんな会話をしているとまだまだ弓の射程には程遠い位置でエルフ達が射撃体勢を取り始めるた。
「まさかこんな位置から届くと言うのか?」
外壁の高い位置にいる兵士からも矢は飛んで来ない。相手の姿は確認出来るが顔立ちまでは判別つかない、そんな距離だ。
「カイン、アベル、お前達ならどうだ?」
「どうもこうも、あとこの半分は距離は詰めないとそもそも矢が届きませんよ」
「私は弓は苦手なので何とも…」
もちろんエルフだからといって通常の射程距離の2倍近くの相手を射抜くことは出来るはずはない。
「精霊よ、風の精霊達よ、我が契約に基づきその義務を果たしたまえ、我らの矢をより遠くへ運ぶ風を吹かせよ!」
ベジタリアンの呼びかけに微風程度だった風が、強く吹き出し帝都に向かって流れ出した。
それを確認すると再びベジタリアンは手を上に上げーーー振り下ろした。
1000人のエルフから一斉に矢が射掛けられ、風に乗った矢はより遠い外壁の上にいる兵の元に向かって飛んでいき、見事な命中精度で射殺していく。
これにはマルス陣営に加わっている霊峰に挑戦していた冒険者達からも感嘆の声が上がった。
帝都防衛の兵達は届くはずはないと油断した結果だった。
だが、ガウシアンの兵達もすぐに盾を構える兵と矢を射る兵に別れ、矢の対策を整えお返しとばかりに矢を射かけてきた。
ただでさえ距離が遠すぎる上に、風の精霊によって逆風となった矢はマルス達には届く事はない。
ガウシアン兵が盾を構えて弓に備えているにも関わらず、ベジタリアンは更に矢を放つよう再度手を振り下ろす。
ベジタリアンの指示に従い放った1000人のエルフ達の矢は、驚くことに盾のわずかな隙間を狙ってガウシアン兵を射抜いていった。
「敵にはしたくない相手だな」
「そうですな」
「外壁の上の兵はベジタリアン達に任せて俺たちは突撃するぞ!」
「は!
全員進軍開始!!」
帝都の入り口になる門に向かい動き出す。隠れ家には馬を置いておけず、用意出来て乗っているのは主要な人物となるマルス、ワイプオール、そしてレドナクセラ帝国旗を掲げているカイン、アベルだけだ。
レイチェルはマルスの前に乗っている。
進軍開始とは言うが、マルスが引き連れる軍勢はせいぜい500人程度しかいない。だがそのうち100人程は霊峰に挑戦していた精鋭の冒険者達で、実力も十分にある。そして混戦になった際、彼等には個々のパーティの判断に全てを任せるとマルスは伝えておいた。
帝都の入り口に近づくと門が口を開けガウシアンの兵士達が一斉に姿を現し隊列を形成していく。その数おおよそ5000人に及び、そこに外壁の上にいる兵士も加われば8000はいるだろうか。
あっという間に隊列が組み上がるところを見ても練兵度の高さが伺え、そしてその先頭に立ち指揮を取っている容姿美しく、そして動作は優雅で権威に満ちている人物が巧みに戦車を操り、近づくマルス達を見据えてくる。
前を行くマルスがその男を見て、即座に該当する人物が1人思い浮かぶーーー
「まさか、ライレーブ⁉︎馬鹿な!あいつはサハラが倒したはずだ」
「ライレーブ⁉︎リリスちゃんとマルスのご両親を殺した…」
マルスと同時にレイチェルも声を上げる。
キャスから聞いた話では、サハラの始原の魔術によって地中深く飲み込まれたはずだった。
「でもまぁそれならそれでいいさ。俺の手で親父達の仇が打てるからな!」
「しかしこの兵力差は厳しすぎますぞ。それに帝都にはまだ兵を残しているでしょう。
せめて、ヴァリュームからの増援が間に合ってくれれば…」
「居ないものは仕方が無い。大丈夫だワイプオール、こっちは霊峰を戦い抜いてきた歴戦の冒険者揃いだ」
そういうマルスをワイプオールは楽観視しすぎだと内心思いながら背後を振り返る。
ガウシアン兵が見事なまでの隊列を組んでいるのに対して、こちらは同じパーティ同士が一塊づつポツンポツンと出来ているだけだ。
レドナクセラ帝国の重鎮であり軍人でもあったワイプオールからして見れば、纏まりが全く無い烏合の衆にしか見えず、この戦いに敗北の文字しか浮かばなかった。
自然均衡の神の代行者が消息不明になり、代行者を信じられなくなっていたワイプオールは魔法の神の代行者キャスを連れてこなかった自分の愚かさを後悔する。
「ブックマーク、随分増えたわね」
「そうだなぁ、前作の方も着実に増えていってるみたいだ」
「う〜前作は私の出番ほとんどないのにぃ」
「私もあまりないですね」
「セッターはそれでもあたしよりセリフ多かったじゃない!」
「いや、まぁ…」
「しかも今作だって前半はあたしの影薄かった…」
「今はだいぶセリフも増えてるし活躍もしてるのだからいいじゃないの。それよりそろそろ終盤に来ちゃったわね」
「あれ?じゃあもうすぐレフィクル死んじゃうの?」
「セーラムそれは言ったらダメだろ」
「あはは、そっかー」
「というわけで、今後とも始原の魔術師を宜しくお願いします」
「うお!セッター美味しいとこ取りやがった!」
「セッターズルい!」
「変なとこでセッターって目立つのよねぇ」
そんな訳?でいい感じに書き進んでいます。予定通り進めば明日も更新できそうです。
「感想書いてくれたらあたしが返事書くからね!」
「セーラムそういう馬鹿な事は言うな望むな」
「あう〜。じゃあ誤字脱字を教えては?」
「確認済みだけでそこそこあるみたいだから遠慮した方がいいと思うぞ」
はい、ある程度誤字脱字に気がついてます。修正面倒でやってないだけです。
すみません。。。




